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聖武天皇の白いスズメ。

北海道内で白いスズメが目撃されたらしい。
夕方のニュースでやっていた。

映像とともにテレビで流れていて、自宅にいた私は、お茶を片手にほげほげとテレビを眺める。

目の前では妻が今日の大谷くんのハイライトをTwitterで追いかけている。


スズメは普通、茶色っぽい色だから白いスズメってのは珍しい。ごくまれに現れる色素のないアルビノタイプのスズメだったんだろう。


ニュースを続けて見ていると、そのスズメについての感想ターンになり「これは珍しいですねぇ」と言うローカル番組のコメンテーター。

ローカルな専門家の教授も「これはよく撮影できましたねぇ」と言っている。



白いスズメ。



ローカルの女性アナウンサーがにこやかに言う。


「白いスズメというのは、大変縁起がよいらしく、あの聖武天皇にも献上されたという記録が残っているんです」

ニコニコ



コメンテーターも専門家も「へぇ〜」とこれまたニコニコしている。「縁起がいいですねぇ」と言って、夕方のローカルニュースは次のコーナーにいくのだった。



(スズメを聖武天皇に献上?)

わなわな


そのニュースを見た私は、飲みかけのお茶が入ったコップをテーブルに叩きつけて言った。


(ゴンッ)



「スズメ、どうやって捕まえたんだ?」



スズメ〜!



だって、私、スズメを捕まえたことないぞ?

そもそもスズメを捕まえようとしたことがないからかもしれないけれど、あいつらすばしっこいから、捕まえようとしてもムリだろ。

はぐれメタルよりむずいと思う。


妻は言う。



「スズメは素早そうだもんねぇ」

「だよね。聖武天皇って、めちゃ昔じゃん。現代の技術があったら、なんか捕まえられそうだけど、むかしの人はどうやって捕まえたんだろう」

「がんばったんじゃない?」

「がんばらないとスズメはムリだよなぁ。
 あれ? でもちょっと待って?」

「なに?」

「いくら白くて珍しいっていっても、
 スズメはスズメだよね」

「スズメだね」

「いまの陛下には絶対献上しないじゃん」

「スズメだからね」

「聖武天皇、なんて言ったんだろう?」

「んーーーーーーーー」

「……」




「喜んだんじゃない?」



……


だろうなぁ。


〈あとがき〉
聖武天皇が生きた時代にしろ、なんにしろ、古代、中世、近世ってとにかく娯楽がなかったんだろうなぁ、と思います。代わりに自然を愛でる心だったり、うつろいゆく景色を楽しむ心のゆとりみたいなものがあったのかもなぁ、なんて。今日も最後までありがとうございました。

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