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短編小説

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#ミステリ

11人の方程式

11人の方程式

 カーマインは幼い頃から、星を見るのが好きだった。
 色とりどりの星々の瞬きを見ているだけで、何時間でも過ごすことができた。
 空を巡る双子の衛星の追いかけっこは、朝まで眺めることができた。

 やがて成長し、科学の本を読み漁る年齢になると、カーマインは思った。
 いつかあそこへ行ってみたい、と。

 気が付くとカーマインは、それより遥か先へ行く日々を送っていた。

***

 壮年と呼ばれる年齢

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時計はどこだ

時計はどこだ

 何気ない日常が壊れるのは、いつだって突然だ。それは良い場合もあるし、悪い場合もある。ぼくの日常は、あのラビー君が転校してきたことで、大きく変わったんだ。

 よく晴れた初夏の朝だった。クラス担任のクジャク先生が、新しいクラスメイトを連れてきた。
「さ、自己紹介をお願い」
 先生にうながされると、彼はぼく達と同い年とは思えない大人びた声で自己紹介した。
「初めまして、帝都から来たウサギのラビーです

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誰がケーキを食べたのか

誰がケーキを食べたのか

 楽しみにしていたのに。

 冷蔵庫の扉を開けた私は、そのまま硬直していた。入れてあったはずの私のケーキが、何者かに食べられ、なくなっていた。

 いったい誰が食べたのか。そんなもの、妹に決まっている。うちの家族で、一度に二個も食べるような食欲があるのは、私を除けば妹しかいない。

 いやいや、いかんいかん。私は頭を振った。

 私はパズルとミステリを愛する文学少女だ。そんな状況証拠だけで妹を犯人

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