kimagure / yoriko

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マガジン

  • 【詩・短歌】ひとつになれない心たち

    気ままに、詩や短歌を載せていきます。

  • 読書好きが本や文筆活動やその周辺について考える

    本が好きで、読んだり書いたり本を作ったりしている趣味人が本・読書・文筆活動やその周辺のことについて考えることをつれづれなるままに綴っていきます。

最近の記事

岸田奈美さんの著作と出会って、自分の病気を受け入れられる気がした。

神経過敏症、と言われてきたけど本当の診断名は統合失調症でした。 主治医の先生から直接聞いた記憶が全くなかったのですが、 家族や周囲の人に聞いてみたところ、私は確かにその病名を知っていたそうです。最近になってそのことを知りました。 その病名をずっと受け入れたくなくて、 記憶から無意識に消去していたのかもしれないと今になって思います。 自分自身の症状の中に、統合失調症の特性に当てはまるものがいくつもあって、ああ、そういうことかと腑に落ちることも多かった。 今は、はっきり本当の病

    • 【詩】やがて還ってゆくもの

      すべての感覚が研ぎ澄まされてゆく。 誰のものかも判然としないいくつもの声たちが容赦なく突き刺さってくる。 痛くて、どうしようもなく痛くて、その感覚はどんどん麻痺してゆく。 悲しい言葉を口にしたくない。 けれど、口にせずにはいられない。 私にはもう、この場所にいる意味を見いだせない。 予感を胸に秘めていれば、不思議と私は立っていられた。 散りゆくさだめとわかっていれば、 そして、その去り際を自分で決められるのなら、 少しは気持ちも楽になった。 とどまるのも散っていくのも隣り合

      • 【詩】心もとない場所でただひっそりと

        暗く深い色に染まった空を見上げる。 何光年も離れたところから輝きを放つ星たちが、 また、日々満ち欠けを繰り返す月が、そこにはある。 光はほんのかすかなたよりないもので、夜はそのどうしようもなく心もとない何かからできている。 心もとないのに、それは心地よい切なさでもある。 少なくとも夜の闇の中でひっそりと息をひそめる間だけは、 私は他のすべての人と同じ存在であると思えた。 つらくはない。絶望でもない。 私はただ何者でもない薄い存在であると言うこと。 それを自覚しているのだから、

        • 書店員を経験して思うこと(1)

          書店で働くきっかけ4年ほど書店で働いた。 接客販売の仕事をする傍ら趣味で小説を書き同人誌を作る活動を続けていた私は、無論「本」が好きだったわけだが、仕事の対象として「書店で接客をする」という選択肢に今までたどり着いたことがなかった。 そんな私が書店で働きたいと思った大きなきっかけは ある作家さんが定期的に開催していた本に関わる仕事をする人たちを対象とする交流会に参加してみたいと思ったことだった。 その交流会のことを知ったのは、ある書店で開催された大規模なサイン会。 そのサイン

        岸田奈美さんの著作と出会って、自分の病気を受け入れられる気がした。

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        • 【詩・短歌】ひとつになれない心たち
          8本
        • 読書好きが本や文筆活動やその周辺について考える
          1本

        記事

          【短歌】日常を切り取る

          ●泣いている でもすぐ笑う ほがらかに くるくる変わる 幼子愛し ●空見上げ ポツリと当たる 一粒の 雨のしずくに くすりと笑う ●笑み増えて このまま続けと 願うのは 皆の笑顔が 絶えぬこの日々 ●もう少し あともう少し 我慢して もうすぐだから 次の停車場 ●遊びたい 友達みんなと 遊びたい それすらかなわぬ マスクはずして ●鳥が飛ぶ 猫が寝そべる 犬近く 花咲き乱れ カメラをのぞく

          【短歌】日常を切り取る

          短歌、または詩のようなもの

          ●悲しみの 雨降りしきる 日暮れ時 ふと振り返る かすかな光 ●しあわせに なってほしいと 願いしも 叶わぬ夢と 知る切なさよ ●朝が来て やがて旅立つ 時が来る せめて今だけ ぬくもりください 悲しいとき、苦しいときに 寄り添ってくれる誰かがいるというのは とても奇跡的なことである それを当たり前だと思わないこと 誰かに寄り添うということは 自分の中の大切な何かを削る行為でもあるだろう そうまでしてひたすら、寄り添い励まし、そばにいてくれることは 当たり前ではないのだ

          短歌、または詩のようなもの

          【詩】すべてはその言葉によって

          言葉は武器になる。 ただ一言で誰かの心をズタズタに切り裂いてしまう。 言葉は怖い。 その危険性をわたしたちは忘れてはいけない。 でも、でもね。 だけど、言葉は。 何気ないたった一言。 ただそれだけで、誰かの人生を救うこともできる。 言葉ひとつで、なんにでもなれる。 だから、その言葉ひとつで やさしい世界はきっと広がる。 みんなが笑って、しあわせが広がっていく、 そのための、確かな道しるべになる。 だから、わたしたちは 言葉を紡ぐことをあきらめちゃいけない。

          【詩】すべてはその言葉によって

          【詩】眠れぬ夜もやがて明ける

          朝が来てしまう。 また、眠れないまま、朝が。 眠れない夜を過ごす日は決まって心に膜が貼る。 何もかもが遠い。 自分のことすらわからなくなる。 わたしは何を考えているんだろう。 何が悲しくて 何がそんなにつらくて いつまでも泣いているのか。 明けない夜はないというけど 眠れない夜は、できるだけ長く続いてほしい 眠れないまま朝をむかえるのは嫌だ。 せめて、ほんの少しでも夢の中へ旅立ちたい だから、どうかもう少し もう少しだけ、夜のままで。 だけどやっぱり、朝は、もうすぐ

          【詩】眠れぬ夜もやがて明ける

          【詩】言えなかったさようなら

          『言えなかったさようなら』 学校の屋上に一人たたずんでいる。 日の暮れた、夜のはじまり。 目の前に立ち並ぶビルの群れからぽつぽつと光があふれていた。 あの光の中には、無数の人生が横たわっているはずだ。 見も知らぬたくさんの、顔も名前も知らない人たちの。 そんな世界の中に、私は今たった一人で立っている。 下の方を見ていたら、一瞬ふらっと体が揺れた。 慌てて柵によりかかる。 がシャンと音を立て、柵は私を支えてくれた。 なんで、どうして。この期に及んで。 私はおかしくて笑って

          【詩】言えなかったさようなら

          【詩】永遠の乖離

          『永遠の乖離』 「あの人、ちょっとおかしいのかな」 街中で見かけた人を、無意識にそうやって区別しようとする私。 自分が『そう』だから、なんとなく気づくことも多い。 これは『差別』なんだろうか。 あのひとは「フツウ」、でもあのひとは、「ちょっとオカシイ」。 そんな風に心の中で周りの人を勝手に区別することは。 でもきっと、私も誰かにそうやって 「区別」という名の「差別」ってやつを、されてるんだと思う。 被害妄想。自意識過剰。 「考えすぎだよ」「そんなことないって

          【詩】永遠の乖離