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バイオマス発電がカーボンニュートラル?

今日、息子が小学校から持ち帰った「エコチル」という子供向けの環境新聞にこんな記事がありました。

エコチル東京版5月号

「再生可能エネルギーを知ろう!」という特集記事の中でバイオマス発電を紹介しています。

〈長所〉
植物が光合成で吸収するCO2の量と、燃やしたときに排出されるCO2の量が同じなので、地球温暖化に影響を与えない。
〈短所〉
燃料を集めたり、運んだりするのにお金がかかる。

エコチル東京版5月号

バイオマス発電がカーボンニュートラルなのは、お爺さんが山へ芝刈りに行っていた桃太郎の時代までです。現代では伐採・輸送・加工・製品化・また輸送・廃棄の工程が加わるのでカーボン収支は必ずマイナスになりカーボンニュートラルのわけがありません。

長所の「地球温暖化に影響を与えない」は間違いですし、短所にはコストだけでなく「CO2が出る」と書かないとフェアではありません。

さらには、長所の「安定して発電できる」もミスリードです。
松田智さんの試算によれば、同じ面積当たりの発電効率は、バイオマス:太陽光=1:170です。

1m2 当りに得られる電力は0.945 kWh/m2/年 程度になる。片や、実用されている太陽電池のエネルギー生産密度は、約160 kWh/m2/年 程度である。両者の比は約170倍にも上る。

太陽光は雨天・曇天・夜間は発電しません。日本の一年間の天気は晴天と雨天・曇天が半々(1/2)であり、一日の中で太陽光が稼働するのは日中の6時間(24時間の1/4)です。従って、稼働率をざっくり掛け算すると、×1/2(50%)×1/4(25%)=1/8(12.5%)。
つまり最大能力の1/8しか発揮できません。

この太陽光の、1/170の発電効率しかないのがバイオマス発電ということになります。安定しているとしても地面スレスレの超低空飛行と言えます。

筆者はバイオマス発電を否定したいのではありません。エネルギーは多様なほどよいのであらゆる技術開発は進めるべきだと思います。ただし、このような偏った書き方には疑問があります。企業が自社の製品やサービスをこんな偏った表現で宣伝したらグリーンウォッシュや虚偽広告と非難されるはずです。

なお、たまたま本日読みましたこちらyoshさんのnoteもとても興味深いです。参考までに引用します。

森林バイオエネルギーがいかに大量の温室効果ガスを排出し、数十年にわたり温暖化を加速させるかを説明している。 実際、木質バイオマスを燃やすと、単位エネルギーあたり、化石燃料よりも多くのCO2が排出される。その排出量を木の再成長で相殺するには何十年もかかる。さらに、木の再生に頼ることは、伐採による自然林へのダメージ、つまり、森林の炭素吸収能力や生物多様性への影響を無視することになる。
この論文は、「欧州連合の再生可能エネルギー指令が、単語の燃焼による正味のCO2排出をゼロと想定していること」を批判している。EUのバイオエネルギーは、再生可能エネルギーの約60%を占めている。著者らは、「各国が森林バイオエネルギーへの補助金を廃止し、森林バイオエネルギーからの脱却を図るべきだ」と主張している。
(中略)
論文によれば、2015年に燃焼された森林バイオマスは、330~380トンのCO2を排出した。これは、「バイオエネルギーが代替した化石燃料が排出したであろう量よりも約100トン多い」と研究者は推定している。これは、木材の燃焼が化石燃料よりも39%(355/255=1.39)多くのCO2を放出していることを意味する。

バイオマスについては、エネルギー密度が低い、資源として調達するのが難しいしコストが掛る、資源地から消費地までの運搬にコストが掛り、その途中でCO2を排出するなど、色々な指摘もなされています。LCA(ライフサイクル・アセスメント)の立場で、システム領域を広くとると、境界での取り合いの課題もあって、なかなか経済的なものではないと思われます。

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