【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
36. 令嬢、破産する ③
ストラスがエマに声を掛けた。
「負けちゃったな…… んまあ、博打の出る目は運しだいって言うからな、エマいちいち気にする事じゃあないだろう? 」
「違いますわ! 」
「え? 違うのか、エマ」
「ええ、ええ、ええ、そうでしょうとも! 今この瞬間、半の出る確率は二百五十パーセントに爆上がりしたのでございますわ! 」
「に、二百五十パーセント……」
ゴクリ
ストラスだけでなく近くに座って博打を楽しんでいた男たちが一斉に喉を鳴らすのであった。
一人の男、商人風の男性がエマに聞いた。
「な、なあお嬢さん、次に半に張れば確実に近い確率で勝てる、アンタはそう言い切るんだよな? それは、えっと本当に? 」
エマは答えた。
「ええ、確率的には間違いないのですわ!信じるか信じないかはあなた次第でしてよ! 」
近くに座っていた面々が一斉にざわっとなり、続けて声が響き始めるのである。
「半だっ! 」
「俺も半! オッドに張るぞ! 」
「半に全額! 悔いはない! 」
「半! 」 「半」 「半だ」 「半っ! 南無さん」
「半に全部! 」 「半」 「半でっ! 」
皆がエマの賢さを理解してくれている様だった、エマは残ったチップ全ての横に虎の子の金貨二枚を並べて言うのであった。
「オッド! 私の全てを掛けましてよ! 」
ディーラーの兄ちゃんが言う。
「丁半出揃いました、勝負! …………ピンゾロの丁、イーブンです! 」
…………
エマの周囲から音が消えた。
すってしまったのであろう、睨み付けながら賭場を後にする人々の攻撃するような悪意の視線を受けながら、一文無しになった筈のエマが呟いたのである。
「……うん、これで半のエナジーは三百パーセント…… 今度こそ! 」
ギルド併設の宿ではマリアがエントランスのソファーに座ったり立ち上がったりを繰り返し、落ち着かない様子で不安な表情を浮かべていた。
落ち着くからとマチルダが淹れてくれたお茶も、手が付けられないままですっかり冷めきってしまっている。
ギルドから続く階段を駆け上がって来たデビットが彼女に声を掛ける。
「どうだ、マリア! お嬢様はお帰りになったか! 」
マリアが首を振って答えた。
「いいえ、まだ…… デビット…… そう聞くという事は、手掛かりは無いのですね」
デビットが頷く姿を見てソファーに座り込み顔を手で覆うマリア。
泣いているのだろうか、小刻みに震えるマリアの肩に手を置くデビット自身の籠手もカチャカチャと音を立てて震えていた。
二人に向けてイーサンの嬉しそうな声が響いた。
「デビット、マリア! お嬢様がお帰りになったぞ! 」
「「え! 」」
慌てて振り向いた二人が目にした光景は、満面の笑顔を浮かべたイーサンの後ろで肩を落として縮こまるエマと、気まずそうな顔で隣に立っている大男『剛腕』のストラスの姿であった。
すぐさま立ち上がってエマの元へ駆け寄り、強引に両手を掴んでマリアは言った。
「お嬢様、ご無事で良かったです! マリアはお嬢様が悪いヤツに攫われてしまったのでは無いかと…… グスッ! 万が一お嬢様の身に何かあったら、私、このルンザを血の海に変えていたかもしれませんわ! 良かったです、グスッ! 」
マリアの勢いと握力の強さに気圧されつつ、エマは返事をする。
「マリアの言う通り攫われましたの、でも、もう大丈夫ですわ」
エマの言葉を聞いたマリアは、鋭い目つきで隣に立っていたストラスを睨み付けた。
「攫われた…… ストラス、貴方……」 ボキボキボキッ
マリアが両拳の関節を激しく鳴らしながら詰め寄る。
睨まれ凄まれたストラスは慌てて答える。
「ち、違う違う! 俺じゃねえぞ! 俺が会った時にはエマは一人で街の中を歩いていたんだ! そういやその時にも攫われたとか何とか言っていたな? エマ、どういう事なんだ? 」
エマが肩を落としたままボソボソと話し始める。
「馬たちを厩舎に預けた後攫われたのですわ、その後話を聞いて、仲間になって、魔石を売って、冒険者になる予定なのだけれど取り敢えず下働きをする事にして、あ、ああ、イーサンとマリアにその事でお願いしたい事があるのですけれど…… それでステハム様と会ったのです」
イーサンが真顔で言った。
「ふむ、分かりませんね、エマ様、取り敢えずそこのテーブルに掛けてゆっくりと聞かせてくださいませんか? 」
「え、ええ……」
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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