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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~

13. 令嬢、冒険者になる ⑥(挿絵あり)

  六枚の銀貨を払ってしまい、スカンピンになったデビットがギルドの受付嬢であるアンナにてのひらを向けて笑う。

 アンナは不思議そうな顔で聞いた。

「あの…… この手は何でしょうか? 剣士さん、いいえ、守護者さんでしたっけか? 」

 デビットは兜の天蓋てんがいを上にずらして笑いながら言った。

「ほら! あれだよ! 何だっけかな…… そうそう、お釣りだったかな? 硬貨が増える奴! あれを待っているのだが? 」

 アンナが怪訝けげんな顔を浮かべて言う。

「え、だってちょうど銀貨六枚でしょう? お釣りは無いじゃありませんか! 」

 誕生したばかりのノブレスオブリージュの面々の顔にハテナが浮かんだ。
 アメリアが代表して聞いた。

「お釣りはありませんの? そうすると私たちはお金が無くなってしまうのですけど…… それって普通の事でしたのかしら? 」

 アンナがキョトンとしながら言った、さも当然の様に。

「そりゃ使えばお金は無くなりますよ! だから、皆さん毎日頑張って依頼をこなしているんじゃないですかぁ! 」

「むむむっ」

 唸ったエマであったが、ここでちゃんと確認を入れて置く事を忘れる程愚かでは無い。
 故にちゃんと聞くのであった。

「なるほど、貴方の仰る意味は大体ですが理解したという事にしましょうか! では、我々四人がお金ですか? 硬貨、金貨や銀貨を入手する方法は? 一体どうすれば良いのでしょうか? ご教授くださいませ! えっと? 」

「アタシはアンナです」

「アンナ師匠! 是が非でもご教授を! 」

 エマの宣言に合わせて、ザッっと頭を下げるノブレスオブリージュの面々に目を白黒させながらも答えるアンナであった。

「し、師匠なんて呼んで頂く様な者ではありませんが…… えっと、お金はクエストをクリアすればその報酬として手に入れられます、個別クエストでなくても常設依頼の薬草採取や低級モンスター、
ゴブリンやフォレストウルフの討伐部位、右耳をお持ち頂いても入手できますよ!

後は…… 今現在お持ちの装備品や装飾品をお売りになって手に入れる方法もございますよ? 隣が買い取り専用のカウンターになっておりますので、何か不要なアイテムをお持ちでしたらこちらでお売りくださいませぇ」

 エマは自分の身に着けた小物や装備を見回していたが、やがて美しい朱色の髪をまとめた髪飾りに手をやり、スルリと抜き取ってアンナに見せながら聞いたのである。

「この様な質素な髪飾りであっても、お売りする事は出来るのでしょうか? 」

 アンナは髪飾りに視線を落とすと大きな声で答えたのであった。

「ええ、アメリアお嬢様! いいえ、今のはノーカンで、エマ様、これは十分なお値段で買い取られると思います! 地味に生活すれば軽く一年位は食べていけるんじゃないですかね? 宜しければ是非当ギルドで売却をお願いいたしますぅ! 」

「まあ、では早速! 」

「ええ、ええ! ほらミランダっ! 早くアメリア、おっと、エマ様の髪飾りを鑑定しなさいよぉ! 」

「うん」

 アンナの声に振り返った女性職員、ミランダと呼ばれた、眼鏡をかけ算盤を大切そうに抱えた小柄な少女が頷いて、隣のカウンターに座り鑑定を始める。

ミランダみてみん

 アンナの興奮しすぎた声が響く中、エマが売却しようとした髪飾りは、ルンザの街の買取価格新記録、金貨二十八枚で買い取って貰えたのであった。

 お金の補充が出来て安心するかと思ったアンナの予想は裏切られた。
 燃えに燃えていたノブレスオブリージュの面々は煩い位に質問を浴びせたのであった。

 曰くいわく

 Q・ 冒険者が泊まる宿はどんなものか?
 A・ 個々に違うが、まあ、お得なのはギルド併設の宿屋です

 Q・ 装備や消耗品を購入するのにお薦めのお店は?
 A・ 値段も品質も安定しているギルド併設の道具屋や武器防具屋がお薦めです

 Q・ 昨日食べたパブリシャスの料理が濃い味でヤケに美味しかったのだが、お薦めの食堂は?
 A・ 味、ボリューム、栄養価、三拍子揃っているのはギルド併設の食堂です、一択、一択です!

 こんなやり取りを経て、まんまとギルド併設の宿屋にチェックインを果たしたノブレスオブリージュの面々は通された個室で揃って驚きの声を上げたのであった。

「「「「この部屋、お風呂無いんだけどぉ! 」」」」
 
 洗面器にお湯を入れてバタバタ走り回る三人と、それを優しく見守るエマ、アメリア・バーミリオン侯爵令嬢の微笑みでこの日も無事暮れて行く。

 この先どの様に冒険者として活動していくことが出来るのだろうか?
 やれやれ、と、お湯を沸かし続けていた宿の女将、マチルダは肩を竦めるすくめるのであった。 

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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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※この作品は『小説家になろう』様にて、先行投稿しています。宜しければこちらからご覧いただけます^^↓

公爵令嬢冒険表紙01-3m


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