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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~

32. 令嬢、攫われる ⑤

 エマは不思議そうな表情を浮かべ首を傾げて考える。

────私が倒した? それも魔法で? 攻撃魔法のたぐいが一切使えない私が? 分かりませんわ…… レイブさんも随分お年を召されている様だし、耄碌もうろくされているのかしら? お可哀想に…… ん? あれれ、しかして

「……『反射リフレクション』かしら? それに『浄化クリンリネス』……」

 エマの呟きを耳にしたレイブは感心しきりと言った様子で返した。

「ほう、失われし古代魔法『反射』それに『浄化』か、そんな物凄い魔法をどうやって身に着けたんじゃ? 」

 エマは正直に答えた。

「はい、親切な精霊のカーリーさんに教えて頂きましたんですの! てっきり夢だとばかり思っていたのですが現実だったようですわ! 」

「あの馬鹿っ、名乗ったのか……」ボソッ!

「何か仰いましたでしょうか? レイブさん? 」

 魔法石買取所のジジイ、レイブはいつに無くワザとらしい笑顔を浮かべ慌てて返した。

「いやいや、何でもないぞ、それよりほらエマよ、全部で金貨八枚になったぞ! 良かったのう」

 金貨三百十枚が必要なエマはガックリと肩を落として呟いてしまった。

「八枚、ですの…… とほほ」

「なんじゃ、これでも少し色を付けてやっているのじゃぞ」

 レイブの声にも表情を曇らせたままでエマは絞り出すような質問を返したのである。

「レイブさん、実は急遽お金が必要なのですわ! 今提示して頂いた額の四十倍ほど…… もし宜しければ教えて頂きたいのです、私に出来るお金集め、そんな手段が果たしてあるのでしょうか? 」

 爺レイブは間を置かずに答えてくれたのであった。

「なんじゃ、そんな事で悩んでおったのか、ふむ、そうじゃのう~、まあ、エマは才能溢れる若者じゃが、この金貨の四十倍、三百枚を超える金貨を手に入れる方法など思いもつかないじゃろうな、
そりゃそうじゃわい、そんなのベテラン冒険者、それこそプラチナクラスにでもならなければ無理じゃろうて…… とは言え、金集めに限らんが、どんな事にもやり様はあるもんじゃ」

「え? ございますの? 」

「勿論じゃよ、人間と言うヤツは追い詰められたり困難にぶつかったりすると、兎角視野が狭くなってしまうのじゃな、金が無ければ金を集めよう、集められなければ借りよう、借りられなければ盗むしかないか、てな感じに狭く狭く考え続けてしまうんじゃよ、盗みを働く元気があるなら最初からコツコツ働けば良いんじゃよ、そもそも金なんて物は集める事は難しいが貯めるのと使うのは簡単な物じゃからのう」

「? どう言う事でして? 分かりませんわ」

 レイブはエマの後ろに立つジャック達三人を指さして聞く。

「大方そいつらに関わりある事じゃろう? そのなりは農奴かのう? 」

 問われたエマは僅かわずか躊躇いためらいのそぶりを見せたが、覚悟を決めた様な表情で答えるのであった。

「そうなのです、実はこの方達、農奴出身の者が百人いるのですわ、冒険者になる為にこの町にいらっしゃったのですけれど、特例期間が終わってしまったらしくて困っているんですの、私、皆さんを冒険者にして差し上げると、約束を致したのですわ、でも、お金が無くて……」

 レイブは老人の見た目とは打って変わった若々しい声で答えた。
 何やら眼光もギラギラしているし、失った筈の左腕の辺りにもオーラを漲らせみなぎらせている様だ。

 ニヤリとした笑いを浮かべながらエマに向けて言葉を発したのである。

「ほら、そこに捕らわれている、冒険者になる為には一人当たり金貨三枚、銀貨一枚が必要なんだよな? では、それを払えば自分の力で生きて行ける冒険者になれるのか? エマよ…… 農奴だったこいつらに冒険者として生きて行けるだけの実力が果たしてあるのだろうか? 戦闘力、交渉力、魔法の才は? 依頼書を読めるのか、はたまた文字が書けるのか? どうだ? 百人まとめて一緒くたに冒険者にしてあげる? 随分な言い様では無いか? なあ、エマ、お前…… ノブレス・オブリージュの意味? 本当に分かっているのかな? なあ、どう、分かっていると思う? どう、どう? 」
 
「っ! 」

 エマは衝撃を受けていた。

 百人の農奴たちは当たり前の事だが一人一人個別の人間である。
 当然だが、親も違えば、育って来た環境もてんでバラバラ、能力も性格も思い出も今現在曝されている状況に対する気持ちもそれぞれ違って当たり前であろう。

 お金を集めて冒険者登録させてあげればいいのでしょう?
 そんな風に思っていた自分の思い上がりを激しく恥じた。
 
 文字を読めない者が依頼書を理解できるのか?
 戦うすべを知らない者が魔物の前に立ってしまったら?
 悪い商人の護衛任務でタダ働きさせられたとしたら……?

 エマは叫んだ!

「ダメですわ! 今、冒険者になってはいけないのです! これ、絶対! ですのよ! 」

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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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※この作品は『小説家になろう』様にて、先行して投稿している作品です。宜しければこちらからご覧いただけます^^↓

公爵令嬢冒険表紙01-3m


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