なかひろし

I☆YOKOHAMA ショートショートnote杯をきっかけに投稿始めました。

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マガジン

  • シロクマ文芸部参加作品

    シロクマ文芸部に参加させていただいた作品です。

  • 毎週ショートショートnote参加作品

    毎週ショートショートnoteの企画に参加させていただいた作品です。

  • ショートショートnote杯 10+1作品

    ショートショートnote杯完走しました。投稿した作品です。

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星のオムライス

たくさんの星が、まるで灯りのように見える街の片隅に、男が妻と小さなレストランを開いていました。 ある日の夜、男は空を見上げてます。 灯りのように見える星をひとつひとつ結んでみると、オムライスの形になりました。 オムライスは妻の大好物です。 男はオムライスをメニューに加えようと思い、次の朝から何日も試行錯誤をして、新しいオムライスを完成させました。  オムライスを食べたお客さんは驚きます。 「こんなにおいしいオムライスは食べたことがない」 オムライスは評判になり、お客さんが

    • shoot for the stars #シロクマ文芸部

      「流れ星だ!」 見上げた空に、ひとすじの光が流れていった。 ケンとコウはバッテリー。 ケンがピッチャーで、コウがキャッチャー。 野球が大好きなふたりは、今日も学校帰りに河原で練習をしていた。 「ケン、もうやめようよ。手が痛いし、暗くなってきた」 コウがまわりを見ながら言うと、まだまだ投げたりないケンは、空に向かって、思いっきりボールを投げた。 ◇ 驚いたのは、空を気持ちよく飛んでいたツバメだ。 やってきたボールを見て、慌てふためいたが、身をかわしてなんとかよける。 羽

      • morning moon #シロクマ文芸部

        今朝の月。 見上げた空に浮かんでいた。 月曜日の朝、眠い目をこすりながら、マイは駅に向かう道を歩いていた。 とぼとぼと歩くマイを、サラリーマンが、制服姿の学生が、早足で抜かしていく。 みんなもそんなに忙しいのだろうか? マイは今日やらなくてはいけない仕事を思い出した。 一つ、二つ、三つ……。 無数にある仕事に愕然とし、思わず立ち止まってしまう。 学生たちがそんなマイを訝しげに見ながら、追い抜いていく。 マイはその視線から逃げるように、空を見上げた。 空に浮かんでいたのは

        • βlue(ブルー) 第3話

          ◀ そこにケンタが憧れ続けた、高校三年のアサミがいた。 驚きからケンタが声を出せずにいると、アサミが首を少し傾げた。 「……おはよ…」 ケンタはやっとのことで声を絞り出した。アサミの死の真相を探るというのが、この舞台での目的だ。しっかり演じなくてはいけない。 「今日も寒いね。手袋してても手が冷たくなっちゃった」 「うん……ホントに寒いね……」 「ケンタ、後でちょっと話したいことがあるんだけど……」 アサミが少し俯きながら言う。そんな仕草もあのときのアサミとそっくりだ。 「そ

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        星のオムライス

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        • シロクマ文芸部参加作品
          13本
        • 毎週ショートショートnote参加作品
          21本
        • ショートショートnote杯 10+1作品
          11本

        記事

          βlue(ブルー) 第2話

          ▷ 北風が吹き荒れる十二月の寒い日。 ケンタは、ユウキの会社が入っている高層ビルを再び見上げていた。 ▶ 「俺もβlueで蘇ったからな」 「どういうことだ!?」 ユウキの言葉に、最初に反応したのはコウだった。ケンタは驚きで声もあげられない。 ユウキがβlueで蘇った……それは、ユウキが現実の世界では死んでしまったということだろうか。 「あとで立花が説明してくれる。またここで会おう」 ユウキのその言葉が合図かのように、目の前が真っ暗になった。 ▷ 「ケンタ」 振り向く

          βlue(ブルー) 第2話

          βlue(ブルー) 第1話 

          第1話 青いカードに、青い字で「βlue」。 裏返すと、短い文章が書かれている。 「アサミを蘇らせ、真相を突き止める」 カードを手にした人物は、それを読むと、ビリビリと引き裂いた……。 ◁ 恐ろしく寒い日だった。 八代ケンタはその日のことを思い出すたび、身体の芯が凍るような寒さが蘇る。 もう十年前のことだ。 高校三年の十二月。皆が大学受験や就職を控える中、クリスマスは遠い国のイベントのように感じていたとき、事件は起こった。 夜の学校は静まりかえっていた。 寒さで、

          βlue(ブルー) 第1話 

          期限が迫っていますが、以前書いた「βlue(ブルー)」という作品を、少し修正して、創作大賞に応募いたします。 “スキ”をつけていただいた皆様、ありがとうございました。

          期限が迫っていますが、以前書いた「βlue(ブルー)」という作品を、少し修正して、創作大賞に応募いたします。 “スキ”をつけていただいた皆様、ありがとうございました。

          夏祭り #シロクマ文芸部

          ラムネの音がした。 瓶の中のビー玉がころがる「カラン」という音。 この音を聞くと、コウヘイの記憶は、まだ小さかったあの日に遡る。 ◇ 初夏の日差しが少しゆるやかになった夕暮れ時。 母に連れられて、近所の神社のお祭りに出向いた。 たくさんの人でごった返している神社の参道を、母の手をしっかり握りながら、コウヘイは歩く。 比較的大きな神社で、参道には多くの屋台が並んでいた。 「何か飲む?」 母に聞かれ、コウヘイは大きく頷く。 飲みたいものがあった。 神社を歩いている中で、あち

          夏祭り #シロクマ文芸部

          図書の時間 #シロクマ文芸部

          白い靴、汚したくないなぁ…。 中学生のアキは降り出した雨を、教室の窓越しに恨めしそうに見る。 下駄箱にある、買ったばかりの白いスニーカーを思いながら、アキはため息をついた。 校内のどこかで時間をつぶそうかなぁ…。 図書室に足を向けたのは、単なる気まぐれだった。 「あ…」 図書室に入るとカウンターから声がして、アキはそちらに顔を向けた。 カウンターの奥にいたのは、同じクラスだが全然目立たない子だ。 名前は確か…。 「…こんちは。図書委員なんだね……山下さん」 名字は思い出

          図書の時間 #シロクマ文芸部

          flower shower #シロクマ文芸部

          花吹雪が舞い、顔の上に落ちてきた。 散り際の桜の木がある川べりで、一人寝転んでいたケンは、突然降ってきたたくさんの花びらに驚き、思わず起き上がった。 ケンの視線の先には、カオルの笑顔が見えた。 真新しい制服に包まれ、手には桜の花がついている。 「……何だよ」 ケンは顔についた花びらを払った。 「ぼんやりしてたから、桜のシャワーで目を覚まさせてあげようと思って」 カオルはケンの中学時代の同級生。 学級委員で成績も優秀だったカオルは、今年の春から、進学校として有名な高校に通っ

          flower shower #シロクマ文芸部

          月に願いを #シロクマ文芸部

          「朧月〜風を待つ身の〜淋しさよ〜」 突然立ち上がり、俳句を詠み出したケンの顔を見ながら、私は呆気にとられていた。 今日は私の誕生日。 ケンが予約した素敵なレストランでディナーを楽しんでいた。 メイン料理を食べ終わり、次はデザートかな、いやもしかしたらサプライズでプロポーズかも、なんて思っていたところで、ケンが立ち上がり、朗々と俳句を詠んだのだ。 「いったい何なの?」 私は気を取り直し、ケンのジャケットを引っ張って、椅子に座らせた。 周りの客が、こちらを見てひそひそ話してい

          月に願いを #シロクマ文芸部

          chocolat test #シロクマ文芸部

          「チョコレート?」 金庫の前で俺は途方にくれていた。 タワーマンションの一室。 羽振りのよさそうな住人の留守を見計らって、俺は部屋の中に入り、程なく金庫を見つけた。 泥棒を生業として十年以上が経つ。 セキュリティに守られたマンションも、金庫に守られたお宝も、俺にとっては簡単に入れるし、簡単に盗み出せる。 ただ……金庫の中に入っているのが、チョコレートだとは、夢にも思っていなかった。 俺はチョコレートを手に取ってみた。 金庫の中に入っているぐらいだから、よほど高価なチョコレ

          chocolat test #シロクマ文芸部

          snow dream #シロクマ文芸部

          雪化粧で病院の中庭は覆われていた。 「まだ降ってるわね」 病室の窓を開け、外を見ていたママがそう言って振り向いたが、私を見て顔が曇った。 「……どうしたの? リコ」 私は黙って首を振った。 明日は手術の日。 産まれたときから病弱で、入退院を繰り返している私に、付き添っているのはいつもママだった。 私にパパはいない。 パパは空からリコのことを見てくれてる、なんてママは言ってるけど、手術のときぐらい来てくれてもいいのに、と私は思う。 「寒いから窓閉めて」 私はそうママに言い、

          snow dream #シロクマ文芸部

          海を見ながら #シロクマ文芸部

          最後の日、僕はギターを手に浜辺を歩いている。 毎年最後の日、つまり大晦日は、高校のバンド仲間の四人で、海を見ながら過ごすのが恒例となっていた。 リーダーでボーカルのコウ。 ドラムスでムードメーカーのユキ。 キーボードで……僕の憧れだったマイ。 年越しまでバカ話をしたり、昔の思い出に浸ったりして時を忘れて過ごしたものだ。 でも今年は……。 ◇ 僕は海を見ながら、三人と電話で話したことを思い出していた。 コウは不機嫌そうだった。 「大晦日? 仕事が忙しくてそれどころじゃな

          海を見ながら #シロクマ文芸部

          ダニー•ゴー

          「thank you」 錆びついた机の上に、釘で書かれたような文字を、私はぼんやりと眺めている。 ダニーがいなくなった。 別れの挨拶もなく、突然どこかへ行ってしまった。 相変わらずタバコ臭い部屋の中で、私は一人、取り残されている。 何が「ありがとう」だ。 欲しいのは、そんな言葉じゃない。 「寒いじゃねぇか、ジェニー」 ダニーの部屋に来るときはいつも、私はまず窓を開けた。 部屋の中にタバコの匂いが充満していて、空気を入れ替えたかったからだ。 真冬でも窓を開ける私に、ダニ

          ダニー•ゴー

          ハッピーバースデー #シロクマ文芸部

          誕生日だからって何かが変わるわけじゃない。 ただ一つ年を積み重ねるだけ。大学受験を控えた今は特に、浮かれている場合ではない。 そんなことを考えながら登校した僕は、教室に入った。 案の定、誰からも祝福の言葉はない。 そもそもクラスメイトの誕生日なんて知らないんだろう。 席につき、いつものようにカバンから教科書を出し、机の中に入れようとした。 しかし、なぜかうまく入らない。何かが奥につかえているようだ。 机の中に手を伸ばして取り出してみると、きれいにラッピングされた細長い箱が

          ハッピーバースデー #シロクマ文芸部