ハッピーバースデー #シロクマ文芸部
誕生日だからって何かが変わるわけじゃない。
ただ一つ年を積み重ねるだけ。大学受験を控えた今は特に、浮かれている場合ではない。
そんなことを考えながら登校した僕は、教室に入った。
案の定、誰からも祝福の言葉はない。
そもそもクラスメイトの誕生日なんて知らないんだろう。
席につき、いつものようにカバンから教科書を出し、机の中に入れようとした。
しかし、なぜかうまく入らない。何かが奥につかえているようだ。
机の中に手を伸ばして取り出してみると、きれいにラッピングされた細長い箱が現れた。
そして箱には小さなカードが挟まれていた。
誕生日プレゼント?
心臓がドキドキしてくるのを感じながら、僕はそのカードを手にとった。メッセージが書いてある。
おめでとう! よかったら使ってね。
僕はラッピングを丁寧に外し、箱を開けてみた。
中からは、高級感のある青色のボールペンが出てきた。
そしてボールペンには、「N」の文字が刻まれている。
僕のイニシャルだ。
さらにドキドキしてくるのを感じながら、僕はそのボールペンを見つめ続けた。
「ナミ、おはよう。……なに探してんの?」
「…おはよう、ユキ。机の中に忘れ物しちゃって……あ、昨日席替えしたんだ。まずい、前の席に入れっぱなしだ」
「ナミの前の席に座ってるのは……中村だ。……なんかボールペン見つめながらニヤニヤしてるけど…」
「……遅かったか」
「何なのあれ?」
「大学が推薦で決まったお祝いに、お父さんがくれたんだけど……」
小牧幸助さんの企画に参加させていただきました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?