見出し画像

#146_呼吸する自分という幻想を手離して、呼吸にのみかろうじて支えられた細い糸のような自我と静かに向き合います。

人類屈指の深度まで素潜りをするジャック・マイヨールはヨガを行じます。

身体がなるべくほんの少しずつ酸素を消費するために、不要な動き、不要な緊張を限りなくゼロにして、最大限の弛緩を追及します。気合を入れたりしたらあっという間に貴重な酸素が底をついてしまいます。

脳がなるべくほんの少しずつ酸素を消費するために、彼は圧倒的な安心と静寂に包まれている必要があります。たとえ小さくても不安は脳や身体の緊張の原因になり、水面にたどり着くまでに酸素がなくなってしまうと大変だからです。

ヨガを行じるわれわれが追及するものは、評価の対象となる身体のパフォーマンスではなく、圧倒的な安心の底に静かに姿を現わす気づきです。

身体と外界の動きが鎮まって、一瞬の未来への畏れも不安が消えて、呼吸が残ります。呼吸はもはや「する」ものではなくそこに「ある」もの。

呼吸する自分という幻想を手離して、呼吸にのみかろうじて支えられた細い糸のような自我と静かに向き合います。

その自我は、なにを根拠に存在するのか?
なにを目的に生成されたのか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?