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貯金10万だけで独立した僕が、会社をやめる前に知っておきたかったこと

新卒で入社したベンチャー企業を、1年半でやめました。

当時の貯金は10万円のみ。家賃7万円の部屋で、東京ひとり暮らし。

会社をやめる時点で、自分の生活費をまかなえるだけのお仕事も決まっていなかったです。

ただ「まあなんとかなるだろ」と思い、個人事業主のライター・編集者として独立しました。

そして半年後のいま、また会社員になりました。

社会人2年目だった24歳のペーペーが、勢いで独立するとどうなるのか。半年後、なんで会社員になったのか。

「フリーランスの生活ってどういう感じなんだろ」「ぶっちゃけどれくらい稼げるのかな」と気になっている人の参考になればうれしいです。

貯金10万円はさすがにキツかった

ということで「勢いでフリーランスなってみた結果、気づいたこと」を3つ書いていきたいと思います。

1つ目は「貯金は大切」です。

……当たり前すぎるかもしれませんが。

独立するときの鉄則として「半年分の生活費は貯金しておきましょう」みたいな話があるのですが、それを思いっきり無視したらやっぱり大変でした。

最初に困ったのは「パソコンがなくて仕事ができないこと」。

会社員のときは、支給してもらったパソコンを使っていました。

個人のパソコンは、いちおう大学2年生のときに7万円で買った中古のMacがあったのですが、エンターキーのカバーがとれて使いものにならない状態。

新しい中古のMacを買おうかなと思って、ザッとECサイトを見たのですが、Macって中古でも10万円くらいします。

さすがにいきなり全財産を使い果たすわけにはいかないので、ひとまず2千円の外付けキーボードでしのぐことにしました。

冷蔵庫と電子レンジをなくした

仕事の環境を整えたあとは「固定費のカット」に取り組みました。

具体的には「冷蔵庫」と「電子レンジ」を撤去。

これらは購入ではなくレンタルで利用していたので、その「レンタル費用」と「使うときの電気代」を浮かせることが目的です。

「冷やす」と「温める」という機能は、近所の100円ローソンに外注しました。

いまぼくの家にある調理用途の家電は、電気ポットくらいです。

人生初の借金

しかしどれだけ普段の支出をおさえても、貯金が10万円だとちょっとしたイレギュラーな支出があったときに、すぐお金が足りなくなります。

一度、お金の計算をしているときに「あれ、今月お金足りなくね?」と気付きました。

少し考えた結果、人生初の借金

連絡したのは、母親。無利息で貸してもらえたので、ありがたかったです。(期日通りにお返ししました)

独立するときは、やっぱり少なくとも半年分くらいの貯金はしておいたほうが安心だと思います。

「また仕事お願いするね」を真にうけすぎない

フリーランスになって気づいたことの2つ目は「また仕事お願いするね」を真にうけすぎないこと。

ぼくがフリーランスであることを伝えると、いろんな方たちが「またお仕事お願いするね」と言ってくださりました。

最初のころは、その言葉を120%真に受けて「ありがとうございます!!!」とすぐにスケジュールを空けて待っていました。

ただ実際のところ、そこからすぐ具体的な案件に発展するのは、感覚的に3割くらい。

じゃああとの7割の「またお仕事お願いするね」が単なるリップサービスなのかというと違います。

そのなかには「そういえば前にお願いしたいと言ってた話なんですけど」と、2~3ヶ月後くらいに連絡してくださる方もたくさんいるからです。

要するに「タイミング」の問題であることは多いので「またお仕事お願いするね」と声をかけてくださる方が、多いに越したことはありません。

ぼくは「そのしかるべきタイミング」ですぐに顔を思い浮かべてもらうために、SNSなどで定期的に仕事や近況の投稿をすることを意識していました。

そうすれば「あ、インタビュー記事を作るなら藤本くんがいるじゃん!」と思い出してもらいやすくなります。

「なにかの1位」にならなくてもいい

フリーランスになって気づいたことの3つ目は「他の人と比べて絶対に負けないポイント」みたいなことは、考えすぎなくてもいいということ。

ビジネスの世界では、生存戦略のひとつとして「まずは分野をしぼって、なにかの1位になることが大切」みたいな話があります。

実際、ぼくも独立するときに「"ライター"や"編集者"だけじゃ弱いから、業界とかジャンルとかを絞ったほうがいいよ」とアドバイスをいただくこともありました。

ただ個人的な感覚としては、ちゃんとピカイチの実力があるうえでなにかの1位になるに越したことはないですが、そうではないのに無理に尖ったキャッチコピーをつけて目立とうとする必要はないと思います。

無理やり尖ろうとすると「マニアックすぎて市場が小さい分野の1位になる」か「抽象的すぎてうさん臭い感じになる」のどちらかになってしまう可能性があるからです。

たとえば、ぼくは独立してから自分のことを話すときに「ビジネス分野のインタビュー記事を中心にやってます」くらいの絞り方しかしていませんでした。

これを無理に尖らせようとすると「創業10年以内のB2B企業の経営者へのインタビュー記事特化型ライター」とか「灼熱の編集者 ~誰よりも熱いインタビュー記事をお届けします~」みたいな感じになってしまうんです。

「お仕事を相談してもらいやすくするため」に尖ったはずなのに、無理な尖らせ方をすると結果的にお仕事から遠のきます。

ぼくがお仕事をご相談いただけていた理由

ぼくは「ビジネス分野のインタビュー記事を中心にやっています」くらいの絞り方で、新規の案件のご相談を月に2~3件はいただくことができていました。

だけどぶっちゃけ、世の中にはぼくよりも「いいビジネス分野のインタビュー記事を書く人」は数百人、数千人といると思います。

ではなぜ、ぼくはお仕事をご相談いただくことができていたのか。

それは「スキル」だけが、お客さんにとっての価値ではないからだと思っています。

たとえば、あるお客さんが「発信を強化したいな」と思ったときに「ぼくの顔がパッと浮かぶこと」もひとつの価値です。

なぜなら、そうやってパッと頭に浮かぶことで、そのお客さんの「ネットで良さげな新しい人を検索して、これまでの実績を調べて、連絡して挨拶して」というコストをカットしているから。

そして、実際にぼくに連絡をくださったときに「ぼくのスケジュールが空いていて、案件を受けられること」も立派な価値。

もっと言えば「いつもご機嫌でコミュニケーションが取りやすいこと」も十分に大きな価値だと思います。

これはお仕事をご一緒させてもらうにあたって「スキルがいらない」という話では全くないですし、むしろいちばん優先される要素です。

だけど同時に「スキルだけでは決まらない」というのも、またひとつの事実なのかなと学びました。

フリーランスを実感した、真っ昼間のQBハウス

「貯金が10万円しかない」という大失策をおかした状態で始まったフリーランス生活でしたが、マジでいろんな人に助けていただきながら、どうにか生き延びていました。

独立した直後、知り合いの経営者さんから連絡がきて「独立おめでとう!ちょうど自分の半生を文章にまとめたいと思っていたから、ぼくのことインタビューしてよ!お金は好きな金額で請求して」と言っていただいたり、

退職した古巣の会社が、ぼくの最終出勤日の翌日に「ふじもんへのお仕事相談」というメッセンジャーのグループを作ってくれて、実際にお仕事を発注してくれたり。。。

ここには書ききれないくらい、たくさんの方々に助けていただきました。

月ごとの売上は、途中で1回だけ18万円の月があったのですが、それ以外は30万~50万円くらいの間を推移して、会社員のころよりいただけるお金も多かったです。

それにやっぱり、フリーランスは自由。

とある火曜日の14時くらいに、渋谷駅前のQBハウスで髪を切ってもらい店を出たとき「平日の真っ昼間から髪を切るなんて、おれ、フリーランスになったんだなあ」と実感しました。

「お金」や「自由」の度合いに関して、特に不満はなかったです。むしろもっと苦しむ想定をしていたので、うまくいきすぎたくらい。

しかし独立から半年たったこの7月から、ぼくは会社員として働くことにしました。

ここからは「なぜフリーランスをやめたのか」「なぜいまの会社を選んだのか」について、お話ししていきたいと思います。

「生き延びているだけ」という空虚感

フリーランスをやめた理由は、一言で言うと「物足りなかったから」です。

どうにか生計を立てていくことはできていました。

でも逆に言えば、それ以上でもそれ以下でもないという空虚感。

そもそもぼくが会社をやめた理由は「コンテンツ作りの腕を磨いて、めちゃくちゃ面白いコンテンツを作りたかったから」でした。

独立してから、日々スリルは味わえていましたが「コンテンツ作りの腕が磨かれている」という感覚は、ちょっとうすかった。

「このままだったら俺の人生は、フリーランスや数人の小さなチームで生き延びることはできても、世の中になにも残さないまま終わっちゃうんじゃないか」という不安

先ほど「お仕事をいただくにあたって、スキル以外の要素も価値になります」というお話をしました。

だけどぼくは「生き延びたい」のではなく「めちゃくちゃ面白いコンテンツを作りたい」から、やっぱりスキルを磨きたかたった。

独立して3、4ヶ月が経ったころから「どうすればもっと腕を磨けるかな」と次の一手を考える日々が始まりました。

日本一の編集者集団

そんななか、独立した直後から業務委託としてお仕事をご一緒していたWORDSの竹村さんから、正社員のお声がけをいただきました。

WORDSはnoteやTwitter、書籍などを通じて経営者さんの発信をサポートする会社なのですが、ここは「集まっている編集者のレベルの高さ」と「コンテンツ作りに没頭できる環境」として日本一だと思っています。

代表の竹村さんは、ダイヤモンドなどの出版社で働いていた編集者。『メモの魔力』や『佐藤可士和の打ち合わせ』など、たくさんのベストセラー書籍の編集・執筆を担当しています。

アドバイザーとして参画いただいている柿内さんもすごい編集者です。『嫌われる勇気』や『漫画 君たちはどう生きるか』など多数の編集実績があります。

社員1号のとよふくさんは、ぼくが同世代ではじめて「ぼくよりいろんなことを考えながらコンテンツを作っている・・・!!!」と感じた編集者です。毎日めちゃくちゃ勉強させてもらってます。

「このままフリーランスとして過ごすよりも、WORDSに飛び込んだほうがめちゃくちゃ面白いコンテンツを作れるようになる!」

そう思い、入社させていただくことにしました。

フリーランスになってよかったこと

この半年間を振り返り「独立してよかったこと」について、2つ書いておこうと思います。

1つ目はやっぱり「売上と利益を出すことの大変さ」を経験できたこと。

会社員だったころ、社員数人のベンチャー企業の社長さんと話していたら「もうお金がギリギリだよ(笑)。100円のボールペンを買うかどうかも悩んじゃう」とおっしゃっていたんです。

当時のぼくは「マジですか!」と言いつつ、心のなかは正直「でもさすがにそれはちょっと盛りすぎじゃないですか、社長!」みたいなことも思っていました。

だけどいまならその社長の気持ちが、ちょっとだけわかります。

悩んでいたのは「100円を払えるかどうか」じゃなくて「このボールペンを買うことで、100円以上の価値を出せるか」でした。

費用対効果の合わないものには1円も払いたくないし、逆に回収できると思ったら10万円のものでも即決で払う。

「どこをケチって、どこで大胆に攻めるか」の感覚は、独立したことで意識するようになりました。

「フリーランスになる」という転職活動

独立してよかったことの2つ目は「じっくりと転職活動ができたこと」です。

ぼくの場合は、元々もう一回会社員になる予定はなかったので「結果的に」という形ではありますが、これを最初から見据えて独立するのもアリだなと思いました。

もちろん「正社員として働きながら、転職候補先で副業する」ってやり方もいいと思います。ただそれだと正社員の仕事が忙しくてなかなか副業先に時間を割けなかったり、副業できる会社が1社とか、多くても2社くらいが限界だと思います。

1回フリーになってしまえば同時に3~5社、職業や割く時間によっては10社くらいとお仕事させてもらうこともできるかもしれません。

そして別にまた会社員にならなくても、そのままフリーランスを続けたり法人化したりしてもいいわけです。

いろんな選択肢をじっくりお試しできるという意味でも、ある程度の貯金と信頼がたまった段階で「ひとまず独立しちゃう」というのは、意外とアリなんじゃないかなと思いました。

少なくとも、居酒屋で会社の愚痴を吐く日々を過ごすくらいだったら、1回独立して「お仕事をいただけることの大変さとありがたさ」を体感する方がよっぽど今後の仕事に役立つ気がします。

会社員になることへの葛藤

最後に「再び会社員になることの葛藤」について、少し個人的なお話をさせてください。

独立するとき「もう会社員はいいかな」と思ってました。

大好きな会社を辞めることが、めちゃくちゃつらかったからです。

古巣の会社の最終出勤日、全社員70人の前で10分くらいお話しする時間をもらったのですが、後半は泣きすぎて自分でも何を言ったかあんまり覚えていません。

泣きすぎて、鼻水がとまるのにポケットティッシュを3つくらい使ったと思います。

そしてその古巣の会社では、社長と「一緒に会社を大きくしていこう!」と約束したのに、会社が成長するなかで、ぼくはそれにまったく貢献できませんでした。

古巣の社長との入社当時の約束

ぼく自身の力不足のせいで会社への恩返しがまったくできていないなか、最終的には「コンテンツ作りの腕を磨きたい」という自分自身のワガママをおさえきれずに、会社を辞めてしまった。

だから今回、竹村さんから正社員のお誘いをいただいたとき「なにかの歯車がズレて、もしまた会社を辞めることになったらイヤだな」という怖さがありました

でも、あるかどうかわからない「大好きな人たちのもとを離れる未来」にビビるより、いま目の前に「また新しく大好きになれそうな人たちや事業」があるのなら、そのチャンスを全力でつかみにいこうと思いました。

そしてうちの会社は、ぼく以外に社員が1人しかいないまだまだ小さな会社です。

だから今回の入社は、前回は成し遂げられなかった「一緒に会社を大きくしていく」の個人的なリベンジマッチでもあります。

独立したとき「絶対に手に入れてやる」と思っていた最新のMacが、半年後まさか「会社からの支給」という形で手元にあるとは思っていませんでした。

「最新Macのタイピングのしやすさ」と「キャリアの正解のなさ」を指で感じつつ、このMacからめちゃくちゃ面白いコンテンツを生み出していきます。


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