漂流者は何を食べていたか、を読んだ。

漂流(遭難を含む)のルポルタージュは数多く存在するが、何を食べて生き延びていたのか、この点にフォーカスを充てたユニークな内容。

遭難経験がないので、当然のことながら想像の域は超えないが、照りつける太陽に苦しみ、忍び寄るサメに怯え、見渡す四方を海に囲まれ、絶望に追いやられる。そんな境遇でも食料を得て生き延びようとするガッツが物凄い。

漂流者はだいたい3日目で力尽きることが多いらしいが、上述の通りに「生き延びてやる」という気迫のみならず「その場にあるもので、なんとかする」という、乗り切る力と工夫するアイデアが非常に重要らしい。

閑話休題、漂流者が何を食べていたかについて。

本著で引き合いに出されている冒険記を読んだことがあるが、生還者の食料は特段意識もしておらず、非常に新鮮な切り口。漂流とある通りに、海上遭難に限定されており、自ずと得られる食材は魚介類になる。

海上の漂流物、つまり遭難者が乗っているイカダや救命ボートには短時間で船底にフジツボなどが生成され、それを啄みにシイラやウミガメが近づいてくるらしい。それを釣ったり、時には手掴みで獲り、食料としていく。

あの優しそうなウミガメを捌くのは想像するだけでもウエーっとなってしまうが、緊急事態なので贅沢も言っていられない。貴重なタンパク源となるらしく、かなりの高い確率でウミガメの捕食は話題に出てくる。

それとシイラという魚もウミガメ同様に高い頻度で登場する。「あつまれ動物の森」で釣り上げたことがあるが、体長60-80cmのそこそこの大きさのお魚である、興味があって検索したら美味しそうに料理している動画を発見。

うーむ、見慣れない風体に少し引いてしまうが、とにかく美味しそう。魚ではないが、我らの角幡唯介さんの作品に頻出する麝香牛も食べてみたい。ちなみに「北極 料理 」と検索したらラーメン中本がヒットしたことがある。

スクリーンショット 2021-09-05 14.53.55

急に真面目な話題に切り替えるが、飽食の時代において食べ物を残すことが罪深い行為でもなんでもなくなったことに、著者の椎名さんは、そっと警鐘を鳴らしてくれているのではないか、と思った次第。

あとがきにもあったが、「テーブルのコップの水1杯を飲むのもためらうことがあった」という気持ちも理解できる。ただ、何事も不自由なく暮らせる快適な毎日、いつものように忘却の彼方に追いやられることは否めない。

世界ふしぎ発見を鑑賞しているようなライトな感じで非常に読みやすい。北極でどのような動物が獲れるのかと、どのように食するか。後半にアッパリアスの話題もあり身を乗り出してしまう。椎名さんが植村直己さんと六本木の焼肉屋で酒食をともにした際、植村さんは「生のままのほうが断然うまい」といって焼かずにどんどん食べて唖然としたというエピソードは大爆笑 *出羽の書評から抜粋
1793年に仙台から出港した和船が遭難し黒潮に流されてシベリアの地に漂着。十数年も異国の地で生活し、時の皇帝の計らい(実は日露交易の交渉材料として)で帰国。日本への帰国を諦めロシアでの生活を選択した者もいれば、悲願の帰国を果たす者も。ロシアの使節団は大西洋をぐるっと周り、ハワイを経由して日本(長崎)へ。半年以上も聴取の為に拘留された船員はようやく地元に帰り着く。海の藻屑として消え去ったと思われてた家族の突然の帰宅に、さぞ驚き感動したことだろう。*出羽の書評から抜粋

ちなみに、漂流といえば絶対に忘れてならないのが我らの角幡唯介さんの名著、「漂流」だろう。極夜行も素晴らしいが、こちらも大推薦したい。

つまりは彼の作品を全て読んでもらいたい。現場からは以上です。

この記事が参加している募集

読書好きが高じて書くことも好きになりました。Instagramのアカウントは、kentaro7826 です。引き続きよろしくお願い申し上げます。