【働くひとの Life Story - 嬉しかったり悔しかったり - #2 】美容師の枠を超えていきたい(佐々木 優さん / 岩手・美容師)
連載シリーズ「働くひとの Life Story - 嬉しかったり、悔しかったり- 」の第2弾は、盛岡市の美容師・佐々木優(すぐる)さんです。
佐々木さん(以降「すぐるさん」とお呼びさせていただきます)と初めてお会いしたのは、今年1月25日。盛岡に大寒波が到来していて、雪をかき分けながら待ち合わせ場所に向かったのをよく覚えています。コメダ珈琲店(盛岡みたけ店)で待ち合わせして、僕が構想していたSEARCHLIGHT PROJECTについてお話しさせていただきました。お互いにとって何かnext actionにつながればいいなぁとは思っていたものの、なんと、そのまま2時間近くおしゃべりしてしまったんです。すぐるさん、長時間の雑談にお付き合いいただき、ありがとうございました。
すぐるさんの第一印象は「コミュニケーションお化け」でした。こちらの話をよく聞いてくれましたし、僕の問いかけにも自分の言葉で説明してくれて、とても心地よくやり取りさせていただいたんですね。初対面の僕にも、ご自身のことを「さらけ出して」伝えていただきましたし、お聞きしていくと、地元の商工会青年部にも参加されているとか。美容師という枠を軽々と飛び越えて、生まれ持った「ナチュラル・リーダーシップ」でいろんなコミュニティに飛び込んでいくすぐるさん。生い立ちからお話をお伺いしたいとお願いしたところ、笑いあり、涙ありのエピソードをお聞かせいただきました。少し長いですが、最後までお読みいただけると嬉しく思います。
地元が大好きなんです。
ー すぐるさん、今回はインタビューにご協力いただき、ありがとうございます。
すぐるさん:はい、こちらこそよろしくお願いします。第1弾ゲストのかいさんのようにネタがあるか分かりませんが笑
ー いやー、きっとたくさんのネタをお持ちなんだろうなぁと思っています。最初に、今年1月にコメダ珈琲でお話しさせていただいた時のことを振り返ってみたいんですが、よろしいですか。
すぐるさん:はい、もちろんです。めっちゃ懐かしいですねー。
ー そうですよね。あの時、僕が考えていたSEARCHLIGHT PROJECTや「教育」に、すぐるさんが大きな関心を寄せていただいたのが印象的だったんです。これは、どんな理由や背景があるんでしょうか。
すぐるさん:そうですね、「教育」とは少し違うんですが、僕自身、もともと、地元「軽米町」の街おこしに興味があったんですね。地元が大好きなんですよ。
ー おお、「地元を大好き」と言い切れるのは、かっこいいです。
すぐるさん:ありがとうございます。僕は、中学卒業と同時に地元を離れてしまったんですが、今思うと、軽米町で幼少期を過ごせたのはすごくありがたかったなぁと思うんです。なんか、何もない雰囲気が好きなんです。
ー それは、僕もよくわかる感覚です。高校卒業後、大学進学で上京したんですが、離れてみて、地元の良さが身に沁みることって、たくさんありますもんね。
すぐるさん:ほんとですよねぇ。例えがちょっと極端かもしれませんが、都会だと祭りに参加したいと思って、お金を払って参加する場合もあるじゃないですか。田舎だと、逆にお金をもらって参加するケースもあって、すごく恵まれた環境だと思うんですよね。
ー おお、面白い視点ですね。
すぐるさん:盛岡で美容師として働き始めてから、時々地元に戻ってみると、自分が幼少期に過ごしていた時期よりも、盛り上がりに欠けている気がするんです。でも、大好きな地元が元気でいて欲しいなぁとは思いつつも、いきなり帰ってもやれることが限られるだろうなぁと思ったんですね。そこで、まずは、自分が今住んでいる地域の街おこしのようなことに取り組んでみようと思って、周りの方に相談してみました。そうしたら、いろんな方をご紹介いただけて。ある方からは、活発に活動している商工会青年部があるので、そこのイベントに参加してみることから始めたらとアドバイスを頂けて、いろんな業種の経営者ともお話しする機会が出てきたんですよ。
ー 何だか急にすごい展開です。僕の偏見もあるんだと思うんですが、美容師の方って、商工会に参加されているイメージが全くなくて、とても新鮮です。
すぐるさん:そうかもですね。僕は、小さな頃から、いろんな集まり、今で言うと「コミュニティ」と言う表現になるんですかね、そう言うのによく顔を出していたんです。
ー そうなんですね。それでは、すぐるさんがどんな小学生だったのか、そのあたりからお話をお聞かせいただけますか。
悪ふざけばっかりしていた小学生でした。
ー ざっくりとした質問になってしまうんですが、すぐるさんって、どんな小学生だったんでしょう。
すぐるさん:そうですねぇ、「好奇心旺盛」な子供と言えば聞こえはいいんですが、ふざけてばっかりでした笑 友達とバカなことをやったり、イタズラしたり、そんなことして遊んでいましたね。
ー 失礼かも知れませんが、何だかとっても想像できます 笑
すぐるさん:笑。勉強はほんと苦手で、苦手というか興味がなかったという感じなんですが、国語とかはお経が唱えられている感じだったんです。
ー お経! なんと素直な、、、体育とかは得意そうですが。
すぐるさん:運動や体を動かすことは、とっても好きでした。仲のよかった4つ上の幼馴染が剣道をやっていたので、小1で剣道を始めたんです。
ー 小1からですか。僕の地元のスポ少は、小3から入る形だったので、小1からと聞くとちょっと驚きです。ちなみに、剣道以外で迷ったスポーツはなかったんですか。
すぐるさん:巨人の試合のTV中継はよく見ていましたし、周りではサッカーも人気がありましたが、剣道以外の選択肢は頭になかったです。幼馴染がやっていたので「自然と」剣道を始めた感じでしたね。ちなみに、小学校卒業までに、水泳やミニバスもやってたんです。水泳は、親が風邪を引かなくなるからという理由で薦められて、ミニバスは小6の時に新しく始まったもので、何だか面白そうだなと思って。
ー 冒頭でおっしゃっていたように、小学生の頃からいくつかのコミュニティに属されていたんですね。
すぐるさん:小さな頃から今でも、とにかく1人が嫌なんですよ 笑
ー 笑
すぐるさん:とにかく、やったことがないものをやってみたいという欲求が強かったかも知れません。あと、多くの人が参加する場で、ワイワイ盛り上がるのが好きな性格なんですよ。だから、特定の誰かと2人だけで遊ぶというのは、小さな頃からなかったですね。
ー 小学生の頃から、それぞれのコミュニティで、すぐるさんがどんな関わりをしていけばいいのかなど無意識に考えていたと思うんですが、そうしたものが今に繋がっているような気がします。
すぐるさん:どうなんですかね。ただ、いろんなコミュニティにいるという状態が常にあったので、今では、ずっと同じコミュニティにいるだけだと、自分の成長がないことを無意識に感じる、ということは思っているかも知れません。
ー まさに今、リスキリングの重要性が叫ばれていますよね。複数のコミュニティに属することを推奨されている方もいらっしゃって、すぐるさんと同じような視点だなぁと思いました。ちなみに、小1から始めた剣道の腕前はどんな感じだったのでしょうか。
すぐるさん:小5から中3まで、団体戦で毎年全国大会に出場していましたね。
ー ええええええ!今、さくっと、あっさりおっしゃいましたけど、そんなに強かったんですか!
すぐるさん:いえいえ、決して、僕が強かった訳ではないんですよ。ちょうど1つ上と1つ下の代に、とっても運動神経がいい兄弟がいて、その人達のお陰で全国まで行けたと思っています。他のメンバーが強いので、団体戦で僕が勝てなくても、全国ベスト32くらいまで行けてて、何だか不思議な感覚でした。
中学までは、部活が全然キツくなかったんですよ。
ー いやいやー、そうおしゃっても、すぐるさんも相当強かったと想像できます。中学生になると、体格や筋肉量も変わってくるので、小学生時代とはまた違ってくると思うんですが、どうでしたか。
すぐるさん:それが、中学までは部活が全然キツくなかったんです。
ー すぐるさん、お化けなのは、コミュニケーションだけじゃないんですね。。。
すぐるさん:いやー、何なんですかね。体力的には全然キツくなかったんですよね。中学時代、週末の部活は朝8時から始まったんですが、5時に起きて釣りに行ってました。
ー すごい、二度寝とかではなく、釣りに。
すぐるさん:はい、そこから部活があって、また釣りに行くみたいな、そんな流れで。田舎なんで、釣竿を草むらとかに隠しておくんですよ笑 めっちゃ汗だくになるんで、釣りに飽きたらそのまま川に飛び込んでましたね。
ー 30年前くらいの漫画の主人公みたいです。
すぐるさん:笑 他にも、市街地で友人とロケット花火で対決したり、癇癪玉をぶちまけたりと、ほんと勝手気ままにやってました笑
ー あまり触れない方がいい方向に向かっているかも知れないので、話を剣道に戻すと。
すぐるさん:そうでした、部活の話でした!
ー 先程お伺いしましたが、中学でも剣道で全国大会に出場されていらっしゃるんですよね。
すぐるさん:そうですね。相変わらず、自分が強くてチームを引っ張ったという形ではないんですけどね。
ー そうでしたか。中学でも、ご自身が勝てなくても団体戦で勝利していったんですね。試合に負けた時って「悔しい」といった感情が湧き起こってきたんですか。
すぐるさん:うーん、そうですね。小学生の頃の練習で厳しく指導されたので、その時に反骨心みたいなものは身についたのかも知れないです。ただ、試合に負けて悔しいという気持ちはなかったですね。全国まで行けて、それで満足していたんだと思います。
ー 小5から全国に出場されていて、絶対日本一になりたい!という感じでもなかったんですね。
すぐるさん:もちろん、試合で戦う時は勝ちたいですよ。僕が中3の時、自分の代は全国に行けないんじゃないかとささやかれていたんですね。こういう噂って、耳に入ってくるじゃないですか。そんな時、1つ上の先輩が「県で優勝しなかったらダサいよね」と話していたのを覚えていて、「ダサいと思われたくない」という一心で試合に臨んでいましたね。
ー すぐるさんのお話をお聞きしていると、ちょっとでも興味があるものに飛びついて、目の前の「今」に全集中するといった姿勢が多いですよね。
すぐるさん:目の前のことしか眼中にないだけかもです笑 そう言えば、中学時代も剣道以外のスポーツの集まりにもいろいろ顔を出していましたね。
ー 待っていました「お化け」エピソード!
すぐるさん:火曜から金曜にかけて、毎晩、地元の社会人の方が集まって、バスケやバレー、フットサルなどをやっていたんですね。この集まりに毎日混ぜてもらっていました。種目によって、違う友達を誘って参加していましたね。
ー ほぼ毎日!どういったモチベーションで、社会人の集まりに参加されていたんですか。
すぐるさん:チームスポーツって、点が決まった時に、みんなではしゃぐじゃないですか。あの感覚がめっちゃ好きなんです。
ー 僕も、小中高とサッカーやっていたので、その感覚はとてもよくわかります。
すぐるさん:あと、今思い返せば、早く大人になりたかったのかも知れません。大人のコミュニティに入ると、大人を知れるじゃないですか。大人が楽しんでいることの方が、何だか楽しそうだなという感覚はずっとあったんですよね。
ー 大人への「憧れ」のようなものがあったんですかね。中学生になると、自宅と学校以外での大人との接点が少なくなる印象なのですが、すぐるさんは、こうしたいくつかのコミュニティに属して、大人と話すことにも慣れていったんでしょうね。
すぐるさん:それは、あるかも知れませんね。
ー ところで、高校はどうやって選んだんですか。全国大会の常連ともなると、県外の剣道強豪校に行きたい気持ちも生まれたりしたんじゃないですか。
すぐるさん:恥ずかしながら、全国でどの高校の剣道部が強いのかって、全然知らなかったんです。興味がなかったんですよ。高校でも剣道したいなぁとは思っていました。親からも「高校までは剣道頑張ったら」と言われていましたし。
ー 興味がなかった。。。
すぐるさん:県内では、花巻南高校の剣道部が強いというのは、何となく知っていて。中学時代に、県選抜で一緒だった同級生から「花巻南に行かない?」と誘われたんですね。親に相談したところ「受けてみたら?」という返事だったので、試験を受けてみようかなと。正直、受験勉強を全くせずにテストに臨みましたね。
ー 受かる自信があったということですか。
すぐるさん:まぁ、何とかなるんじゃないかと思っていたんでしょうね。実際に試験問題を目の前にすると、かなりやばいと思いましたけど 笑
ー 合格しているところが、さすがです。中学時代、勉強の方はいかがでしたか。
すぐるさん:ほとんど寝ていたかも知れないです 笑 5教科では、唯一数学が好きだったんですよ。当時の数学の先生が、とってもいい方で。
ー 同じですね、僕も一番数学が好きでした。
すぐるさん:数学の授業で、前回の授業でよくわからない問題があったんです。次の授業で「先生、教えてください」と手を挙げて、机と椅子を教壇の横に持って行ってですね。授業が進行している合間に、先生に質問させてもらうという作戦を実行してました。
ー すごい作戦。。。数学の先生、寛容で器用でいらっしゃって、素敵な対応ですね。
すぐるさん:今思うと、めっちゃありがたいですよね。
剣道を嫌いになった高校時代。でも、ちょっとは成長できたかもしれません。
ー 卒業アルバムの顔写真、、高校時代は中学時代とだいぶ印象が違いますね。
すぐるさん:中学時代は、田舎者って感じで、高校は悪ガキって感じですね笑
ー 眉毛とかもいじりたくなりますもんねー。
すぐるさん:おっしゃる通りです 笑
ー 高校は地元を離れて、花巻で下宿しながら通学していらっしゃったんですよね。
すぐるさん:そうですね。最初は、高校の寮に入っていて、そこから知り合いの方の家に下宿させてもらっていました。
ー 高校時代の剣道の成績はどうだったんですか。
すぐるさん:高校時代は一度も全国に行けていないんです。
ー おお、そうでしたか。中学までとは何か勝手が違ったんでしょうか。
すぐるさん:ストレートに表現すると、高校時代に剣道が嫌いになってしまったんです。僕自身の被害妄想もあるのかも知れないんですが、試合中の審判の判定に納得がいかないケースがとても多かったんです。
ー 剣道の審判は、一瞬の動きを目で追って判定しているのでとても難易度が高いイメージがあります。
すぐるさん:確かに難しいと思います。でも、高校時代は、これじゃ、勝てる奴が勝てないじゃないかと思う場面が多くて。
ー おお、そんな印象だったんですね。
すぐるさん:高3の高校総体県予選の準決勝、大将を務めていた自分の勝敗次第で、決勝進出が決まる場面があったんです。
ー まさに、手に汗握る場面。
すぐるさん:僕自身は、完全に勝てると思って試合が進んでいたんです。そうした中、軽く当たった小手が一本と判定されて負けたんですね。もう、試合を壊された感覚で、知り合いの先生が慰めに来てくれても無視してしまうほど、自分の感情を抑えることができませんでした。
ー そうした出来事があったんですね。
すぐるさん:そうなんです。試合が終わって撫然としていたら、一緒に試合に出場していた1年生の後輩が、めっちゃ泣いていたんです。「俺のせいで負けてしまった」と言って。その時、僕が後輩に「その悔しさをバネにして、来年、再来年は勝てよ」と言葉を掛けたらしいんです。
ー 掛けた「らしい」?
すぐるさん:自分では全く覚えていないんですよ。この様子を、僕の母親が聞いていたらしいんです。
ー お母さん、Good Jobです。映画の一場面になるようなエピソード。
すぐるさん:後日、下宿先の方だったと思うんですけど、「あなたのお母さんが、ああした声掛けをできるようになったのを目にして、息子の成長を感じると言っていたよ」と伝えてくれたんです。その時「人を励ます言葉を掛けられる人間になれた」と自分で思えたのが、とても嬉しかったですね。
ー ご自身は、そのシーンを覚えていないのに 笑
すぐるさん:はい、全く記憶にないです 笑
ー ちなみに、高校時代も、剣道以外のスポーツをされていらっしゃったんですか。
すぐるさん:部活を引退してからですけど、花巻の社会人がやっていたフットサルチームに参加させていただきました。
ー 変わらないところもあって安心しました 笑
美容師を目指したのは、ほんと不純な動機なんです。
ー お聞きしていると、高校時代の剣道は「不完全燃焼」のような印象を受けるんですが、大学などに進学して剣道を続けようとは思わなかったんですか。
すぐるさん:大学進学という選択肢はなかったですね。実は、高校2年時に、ちょっと悪さをしてしまって、一度停学になっているんです。勉強も全くやっていませんでしたし、推薦も可能性が低いだろうなぁと思っていました。
ー ここでは、詳細に触れることが難しいんですが、高校時代にいろいろあったんですね。
すぐるさん:振り返ると、全てがいい経験になっていると思いますけどね。
ー そう受け止めていらっしゃるのは、素敵なことだと思います。美容専門学校に進学するのは、いつ頃考えたんですか。
すぐるさん:高3の夏くらいですかね。正直に言うと、当時好意を抱いていた先輩が東京の美容専門学校に進んだので、僕も美容師を目指そうかなと思ったのが発端なんですね。きっかけを話すと、どうしようもないですよね。
ー いえいえ、進路進学先を決めるのって、難しいですよね。僕も、大学選びは、
学部以外は偏差値と知名度しか考えていなかったと思います。
すぐるさん:へぇ、そうなんですか。美容専門学校を選んだのは、母親が美容師ということもあって、その影響は少なからずあったのかも知れません。
ー 何かしらの影響は受けてそうです。お母さんに進学希望先を伝えた時は、どんな反応だったんでしょう。
すぐるさん:「何で?」、「無理だよ」と言われましたね。小さな頃から、母親からは「飽き性なんだから、美容師は向いてないと思うからやめておけ」と言われていたんですよ。
ー お母さんなりの心配をされていらっしゃったんでしょうね。
すぐるさん:自分の中では腹を決めていたので、「行きたい」という気持ちを何度も母親に伝えて、何とか納得してもらった感じですね。昔から、自分がこうしたいと決めたら、それを貫くタイプなんです。これは、今も変わっていないですね。
中高時代の自分に、「もっと尖れ」と言ってやりたい。
ー すぐるさん、もし、中高時代の自分に一言声を掛けられるとすれば、どんな言葉を掛けたいですか。
すぐるさん:(しばし、黙考)
ー 唐突な質問ですいません。
すぐるさん:いえいえ。うーん、思いついたのが「もっと尖れ」ですね。
ー おお。随分尖ってらっしゃったと思うんですが笑、どんな意図があるんでしょうか。
すぐるさん:何を言われても聞かないタイプだったんですね。今もそうかもですけど 笑 「もっと尖れ」と言われたら、もしかすると、もっと自分で考えたのかなぁと。違う表現だと「もっと、自分の好きなようにやれ」ですかね。
ー ありがとうございます。「尖れ」というワード、予想外で面白かったです。
美容師に向いていないかもという感覚を大事にしていきたい。
ー ちょっと時が流れてからの話になってしまうんですが、美容師になられてからのお話をお聞かせいただけますか。盛岡の美容専門学校を卒業された後、就職先はどのように決めたんですか。
すぐるさん:盛岡で就職しようと思って、当時、業界最大手の会社に入ろうと考えました。母親がOGで、その会社のことについては何となく耳にしていたのと、かっこいいスタイリストさんもいらっしゃったので。
ー おー、お母さんもお勤めになっていた会社に入社されるんですね。何か運命を感じます。入社後、初めて美容院に配属されたとき、どんな感じだったんでしょうか。
すぐるさん:とにかく、先輩に「これをやって」と言われたことをやるしかなかったんです。シャンプーや掃除など、右も左も何も分からない状態で、ただガムシャラに働いていましたね。
ー 新人の美容師さんは、最初の数年はお客様の髪をカットすることはできなくて、下働きをして、美容院の営業終了後にカットの練習をする、いわば修行期間があると聞いたことがあります。毎日、指示されたことだけをやるのも辛くなってくると思うんですが、何か目標になるようなものがあったんですか。
すぐるさん:そうですね。新人を対象とした、社内のシャンプーコンテストとカット技術を競うコンテストがあって、まずは、そこで優勝することを目指したんです。
ー 決めたことは貫くタイプのすぐるさんにとって、こうした目標があるのはプラスに働いたのかも知れませんね。
すぐるさん:ほんと、そうですね。そして、2つとも優勝できたんですよ!
ー さすが、有言実行人!きっと自信にもつながったことでしょうね。ちなみに、すぐるさんにとって、美容師という職業は天職のように感じていらっしゃるんですか。
すぐるさん:それは、ないですね。専門学校時代も今も、自分が美容師に向いていないんじゃないか思う時は、たくさんあります。でも、こうした不安を覚えたりしないと、美容師として成長しないと思っているんですね。成長しようとしない美容師に、自分の髪を切ってもらいたいと思わないじゃないですか。今では、自分が成長するために必要な活力やエネルギーの源泉だと捉えています。
ー お話しをお聞きしていて、すぐるさんから「成長」や「早く大人になりたかった」といった表現が出てきました。ちょっとだけまとめてみると「成長欲求」と「チーム」が、すぐるさんのキーワードのような気がしてきました。
忘れられないお手紙と卒業文集
ー 美容師をされていて、日々、いろいろなお客様とお話しされていらっしゃると
思います。忘れられないエピソードをご紹介いただけないでしょうか。
すぐるさん:忘れられないエピソードですか。ちょっと待ってくださいね。
ー 度々、唐突な質問でごめんなさい。
すぐるさん:大丈夫です。今、お2人のお客様が頭に思い浮かんだので、ご紹介させてください。お1人目は、年配の女性の方で、僕がアシスタント時代にシャンプーを担当させてもらっていたんです。そのお客様が転勤されるということで、最終日にお手紙をいただいたんです。
ー お客様からのお手紙!めっちゃ嬉しいですよね。
すぐるさん:それはそれは、喜び爆発です。お手紙には「あなたのシャンプーは超一流。ただ、時に集中力がないので、天狗にならずに頑張りなさい。」と書かれてあったんです。
ー 一見、手厳しいご意見だと思うんですが、すぐるさんのシャンプーされている様子をよく観察されていらっしゃったんですね。
すぐるさん:僕も「自分をこんなに見てくれていらっしゃったんだ」と思い、とても胸が熱くなったんです。今は、お会いすることもないんですが、このお手紙は一生の宝物です。
ー 何だかとても羨ましいエピソードです。
すぐるさん:2人目は、小学生の女の子なんですけど、その子はヘアドネーションするかどうか迷っていたんですね。
ー インターネットかTVでヘアドネーションについて知ったんですかね。
すぐるさん:親御さんと相談して、ヘアドネーションすると決めて美容院に到着したらしいんです。ただ、心の中はものすごく不安で一杯だったと、後で分かりました。僕は「自分で考えてアクションすることは、素敵なことだね」と声を掛けただけなんですが、その子にとってはとても嬉しかったらしくて。
ー 第三者の何気ない一言に救われることって、ありますもんね。
すぐるさん:何と、卒業文集に僕のことを書いてくれたんですよ!
ー 時々、集中力ないぞって 笑?
すぐるさん:それは、末恐ろしいです笑「美容師からの一言で、不安だったものがスッとなくなった。美容師は人に感動を与えられる仕事だと思ったので、自分も美容師を目指したい」と書いてくれていて。
ー こちらも泣いてしまうくらいの最高のエピソードですね。特に「自分も美容師になりたい」と書いてくれたのは、すごいなぁ。
すぐるさん:はい、めちゃめちゃ嬉しかったですね。
お付き合いしていた方からの一言が、ぐさっと刺さったんです。
ー 美容師になってからのお話をお聞きすると、順調にキャリアを歩まれている印象です。
すぐるさん:いやー、ここまで本当にいろんなことがありました。美容師を辞めようと思うタイミングもありましたね。あと、2店舗目で店長を任せられるようになったんですけど、一時、どんどん同僚が辞めてしまう時期があったんです。
ー そういった時期もあったんですね。1人でも辞められると、とっても大変なイメージがありますけど、複数となると、ちょっと想像しただけでも。。。
すぐるさん:その時、僕自身、同僚の意見や声に耳を傾けていたと思ったんですけど、結局は自分の考えを押し付けていただけだなぁと思ったんです。
ー なかなか自分1人では気づけない部分もありそうです。誰かから何か言われたんですか。
すぐるさん:きっかけは、当時お付き合いしていたパートナーからの一言でした。
ー その一言、差し支えなければ、お聞きしてもよろしいでしょうか。
すぐるさん:はい。僕が仕事上でうまくいかないことが多くて、パートナーに相談したことがあったんです。そうしたら「あなたが優しさだと思っているものは、優しさじゃない」と、ビシッと言われたんです。
ー 立ち直れない程の豪速球が来ましたね。
すぐるさん:ぐさっと胸に刺さりましたよ。かなり、落ち込みますよねぇ。でも、そうした言葉を伝えてもらうことって、そんなにないじゃないですか。この一言のおかげで、自分の全てを見つめ直すきっかけになったんです。
ー すぐるさんは、物事をいろんな角度から見つめることが得意なんでしょうね。
すぐるさん:自分の中身を全部ひっくり返して見直そうと思いましたね。相手のことを聞いていると思っていたけど、何か見返りを求めていたんじゃないか、とか。でも、giveばかりするって何だか怖いな、とか。自分を客観視して、まずは相手が何を求めているのか、何を必要としているのか、「聞く」ではなく「聴く」ことをやらなきゃいけないと思ったんです。
ー ものすごい内省をされたんですね。すぐるさん、貴重なお話やお気持ちをさらけ出していただいてありがとうございます。
目指すのは「みんなで楽しくワイワイできるか」だけ。
ーすぐるさん、これから、美容師として、また美容師以外でも、いろんな活動に取り組まれると思うんですが、何かやってみようとするときに大事にしている信念のようなものはあるんですか。
すぐるさん:「みんなで楽しくワイワイできるか」、この1つだけですね。
ー 今、即答でしたね。
すぐるさん:小さな頃から変わらず大切にしていることです。ここがブレるんだったら、やりたいくないですね。ずっと子供のままでいたいんだと思います笑
ー ずっと子供のままでいて欲しいですー。
すぐるさん:僕は「人から嫌われたくない」と、心のどこかで思っている節があって、「知り合えてよかった」と思われたいんです。そうした観点では、人の悪口は言わないようにしています。誰かの悪口を言っているところに身を置かないようにして、ポジティブな話や、行動する前のワクワクする話ができる場に行くようにしています。あと、細かなところでは「嘘をつかない」ですかね。楽しくないじゃないですか、嘘をつくと。こうして言葉にすると、小さな頃に親から教わったことを羅列しているだけなんですが、こうしたことを自然と心掛けているような気がします。
ー とても勉強になります。悪口を言っている人の周りには、悪口を言う人が集まってくるって言いますもんねぇ。きっと、小さな積み重ねが、その人の人となりを形成していくんだなぁと、改めて思いました。
人が好きなんです。
すぐるさん:結局は「人が好き」なんだと思います。今まで、何かやりたいと思って相談すると、誰か助けていただける方々がいらっしゃったんですね。本当に恵まれているなぁと思います。そうした経験を多く積ませてもらっているので、まずは、その人のことを好きになろうと思う姿勢は身に付いているのかも知れません。
ー 「まずは、その人のことを好きになろう」、とても素敵な表現です。すぐるさんって、自分と周りの人を比較したりしないんですか。
すぐるさん:僕って、あんまりプライドとかないんですよ。過去の自分も、本当に気にしないんですね。他者との比較は、自分が成長したいという時にしか、比較してこなかったんです。もちろん、無意識に比較している時もあるとは思うんですけどね。むしろ、自分が必要だと直感で感じたものを大事にしている感覚が強いですかね。
ー すぐるさんの「比較」の定義、面白いです。
すぐるさん:あとは「失敗」という言葉を、自分の辞書から消してやっていくことを大事にしています。何かにチャレンジしてできなかったとして、それって、次にできるようになるための「気付き」を得ていると捉えると「失敗」と言う概念も必要ないんですよね。この考えに気づいた時、他責もしなくなるようにになったんですよ。
ー すぐるさん語録が止まらないですね。
すぐるさん:すいません、ついつい 笑
ー いえいえ、すぐるさんが紡ぎ出す「言葉」が、僕はとても好きです。こうしてお話を伺っていると、僕の中では、すぐるさんは「コミュニケーションお化け」に加えて「ハチドリ」の印象を持ちました。いろんな場所に、水と栄養を運ぶハチドリ。いつまでも子供のように、そして、美容師の枠をすっと飛び越えて、いろんなコミュニティでご活躍ください。今回は、本当にありがとうございました。とても楽しかったです。
すぐるさん:こちらこそ、ありがとうございました。僕も楽しかったです。
(おしまい)
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