大木賢

富山と名古屋で写真を撮っています。

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  • #写真 記事まとめ

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    写真や撮影テクニック、写真に関する記事をまとめていきます。

最近の記事

自治体メタバースが成功しない理由

前回の記事では、富山県にある井波という小さな町で「バーチャル井波」という独自の仮想空間をつくるプロジェクトを紹介した。告知なしで公開から2日で米国、英国など国内外から1,000人以上が訪れた。この仮想空間を通して彫刻作品を知り、早くも彫刻師に仕事の発注を検討する人がいるなど、これからの情報発信・交流ツールとして期待している。 同様に、全国でバーチャル渋谷やバーチャル大阪など、自治体や企業、教育機関が主体となった仮想空間が続々と登場している。今後、補助金などを活用しながら、い

    • その写真、CGでもいいですか?

       家具大手IKEAのカタログでは、75%以上もCGが使われているそうです。そのことを知ったマネージャーが「こんなCGなんて使うな」と言ったものが実は写真で、反対にこれは良い写真だと言ったものがCGだった、という話もあります。その真偽はさておき、多くの消費者が写真かCGかなんて意識していないことでしょう。  フォトグラファーという肩書を持ちながら、写真に執着していない自分。お客さんが伝えたいことを伝えるお手伝い、というのが本当の仕事なのですが、たまたま大好きな写真というメディ

      • 写真の境界線

        「真実」を「写す」と書いて「写真」。19世紀初頭に発明された写真は、あらゆる場面で証拠として使われてきました。証拠写真や証明写真など、そこに写っているものの真偽を疑うことはごく稀です。それほど「写真は真実を写している」と考えられているのですが、証明写真ボックスに入ってみると「美肌補正」などというオプションが当たり前のように備わっています。例えば肌のシミやニキビなど、本来はそこにあるはずのものを存在しないものとして写してしまっても、不思議なことに証明写真として機能します。 通

        • 職人文化がのこる町

          企業と個人のお付合い、いわゆるBtoBやBtoCではなく、個人による個人のための仕事CtoCが注目されるようになってきました。もはや言うまでもなく、工場で大量につくられた製品に飽きて、自分らしいものを求めるようとする消費者が増えているのです。たとえば気に入った革職人の鞄を買って、その職人に修理も頼む。値段は高いけれど、信頼できる作家に頼めば自分にあったものができるので満足する。アフターケアも万全です。このように個人と個人が密接な関係をもっている例は少なくありません。とはいえ、

        自治体メタバースが成功しない理由

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          写真の読みかた part.2

          前回のノート「写真を読む part.1」では、写真が具体的かつ曖昧なメディアであるがゆえに、付随する文字情報によって見方が変わってしまうことを紹介しました。では、文字がいっさいない場合、写真だけを見て撮影者の意図を理解することはできるのでしょうか。パート2でも、まずは撮影者の視点から写真の構造を読み解いていきます。 写真には自分が映る ときどき「写真診断」なるものを披露することがあります。初対面のAという男が撮った写真を見て、Aがどういう人物であるかを当てるゲームです。たと

          写真の読みかた part.2

          写真の読みかた part.1

          ぼくは字を書くのがとても苦手で、このあいだ口座振替の申し込みをしたところ「文字が読めないので、もう一度書き直して提出してください」という連絡をもらってしまいました。ですが、手紙を書くときちんとお返事をもらえるくらいには、文字らしい形を保っています。きっと読むほうは大変だと思うのですが、最後まで読んでもらえるのは嬉しいものです。 手紙を受け取ったら、まずはなにが書いてあるのかを読み取ろうとします。手にとったときにこれは綺麗な字だなとか、あるいはずいぶんと汚い字だなと思うことは

          写真の読みかた part.1

          フィルムカメラをつかわない理由

          ぼくは、フィルムカメラが大好きです。幼稚園のころに写ルンですで遊び、小学生のころにはミノルタの一眼レフカメラを手にし、いまもコニカC35というレンジファインダーのカメラを持っています。男心をくすぐるメカと、ノスタルジックな色合い。そして何より、ネガや印画紙に実体となって写真が表れるので、唯一無二のものを手にしている気分になるのです。 けれども、フィルムカメラはつかいません。昨今のフィルムカメラブームにより、時代に逆行してフィルムで撮影する媒体も増えました。もはや絶滅危惧種と

          フィルムカメラをつかわない理由

          こども写真館からの解放―なんでもないような日常がいい

          ニューボーンフォトという言葉を耳にすることが増えました。日本語に直せば、新生児写真ということになりまして、生後間もないお子さんの写真をプロに頼んで撮影してもらうのが流行っているとか、いないとか。僕はその専門家ではありませんが、親戚からの依頼で撮影させていただく機会がありました。そのとき「スタジオで綺麗な写真を」というご依頼をいただいたのですが、あえてご実家での日常風景を撮影することにしたのです。 その後、大勢の方が共感のメッセージを送ってくださり、またご自身のお子さんに対す

          こども写真館からの解放―なんでもないような日常がいい

          「ホタルイカの身投げ」を撮って後悔している話

          深夜の海岸線が青白く光る―毎年、春になると富山湾で「ホタルイカの身投げ」という現象が見られます。ホタルイカはふだん深海に生息している生物ですが、3月~5月頃にかけて水面近くまでやってきて、産卵します。その後また海深くへと戻るのですが、月明りのない新月の夜、方向を見失ったイカが誤って浜に近づき、波につかまって浜に打ち上げられるというのです。自らの意思に反して死を遂げるのに「身投げ」と呼ばれるのですから、ホタルイカとしてはやるせない気持ちでいっぱいでしょう。 さて、これまでの話

          「ホタルイカの身投げ」を撮って後悔している話

          北陸を撮る理由

          ぼくが生まれたのは、1994年の初夏のこと。それからずっと富山で育ち、14歳にして初めてアメリカへ渡りました。そこで見るものはすべてが新鮮で、自分がそれまで見ていた世界がどれだけ狭いものだったのかを思い知らされたのでした。それがきっかけで外国の事をもっと知りたいと、大学へ入ると国際学を専攻し、海外を渡り歩き、スペインにも一年間の留学をして、メディアとコミュニケーションについて学びました。そのおかげで、外国のものごとについては他人よりも詳しく話せるようになりました。しかし、一方

          北陸を撮る理由