大学院進学の専攻選びについて③

前の投稿では、大学進学の専攻選びについて、いくつのポイントをシェアさせていただきました。
・学部が文系なら大学院は必ず文系、理系なら当然理系という先入観に拘らないようにしよう
・研究科の一般的な分類というより、先生たちが実際にやっている研究をみよう
・自分の性格・才能・興味を軸にして、社会ニーズとキャリアの発展性をあわせて専攻を選ぼう

今回は、社会ニーズとキャリア発展性について、仕事で担当している香港科技大学の留学を例にしてさらに説明させていただきます。

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上記は香港科技大学のHPにある情報ですが(画像をクリック)、よかったら右の欄に注目してください。
「Research Focus」→重点研究分野
近年多くのTOPクラスの大学は、最初から工学・理学・医学・社会学・文学などの伝統的な学術の分類を羅列するより、今私たちが直面する問題にターゲットした研究分野をリストアップしています。なぜこういう風になっているのか、理由が主に二つがあります。
一つは、人類が直面する問題はとても複雑で、工学または医学という単一分類の知識だけで解決することができない点です。工学、医学、社会学などの様々な知恵を結集して取り組む必要があります。いわゆる異分野融合・学際的です。そのため、研究も問題に取り組む技術やアプローチで分類されるようになっています。大学院は主に研究を行う場所で、そこでの学びも研究を中心に生み出されているので、大学院進学の専攻選びは、研究分野を中心に考えるほうがおすすめです。実際に同じ工学研究科に所属しても、工学系だけでなく理学や医学、さらに社会学を含めた総合的な研究をしている先生が多いです。一方社会学研究科に在籍し工学系の研究に取り組む先生もいます。したがって、大学院進学のために専攻を選ぶとき、昔みたいに最初から工学、理学、医学、社会学という感じではなく、新材料の開発、データ処理、自動化・ロボット、人工知能、行政などの分野において、さらに自分なりの専攻を見つければ、いいと思います。
もう一つの理由は、社会や環境問題にターゲットした研究がよりわかりやすく、研究予算の獲得がしやすい点にあります。皆さんの知っているように、大学の研究費の多くが国民の税金からです。そのため、大学の研究は国民の生活に関わる様々な問題に取り組む必要があります。言い換えれば、社会から資源を集めて研究するので、その研究成果で社会へ還元しなければなりません。工学や医学のような非常に大きな枠だけだと、どういう研究がなされて如何に社会に役立つかがわかりにくいです。情報データ処理の面、物づくりの材料開発の面、行政の面などの分類ならよりわかりやすく、社会から集まった資源をそういう面の研究に活用していることも、イメージしやすいです。大学にとってはも、重点分野を示すことでより研究費を集めやすくなります。

「Emerging Areas」にも注目を
最近とくに研究活動が活発になっている大学は、「Emerging Areas」を設けています。Emerging Areasというのは、近年重要視されつつある研究分野のことを指します。人類の社会や地球の環境が将来どうなるかが見据えされて、これから注力すべきだと思われる分野です。大学はそれらの分野に関わる研究者たちを集めて総合的な研究がしやすい体制を作っています。重点分野と同じく、学際的に取り組むことが特徴です。Emerging Areasは近い将来の社会ニーズの反映でもあるので、次のために学ぶには注目しましょう。

分野とキャリアの発展性について
Research FocusもEmerging Areasも、キャリアの発展性に密接に関わります。ネットではよく就職希望ランキングがあって、そこにほとんど大手企業が並んでいるが、就職を見据えた進学といえば、一つか二つの特定した企業に入るために学ぶことではありません。したがって、企業ランキングは一つの参考としながら、分野をもっと注目して、そこから細かく分けたテーマを見るほうがおすすめです。
例えば、ビッグデータ処理という分野を見てみましょう。近年非常に注目されている分野の一つで、スマホや様々なデータ収集ができるデバイスの普及に伴って、集められるデータがどんどんBigとなってきており、大学では関連の研究も大いに進められています。

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ビックデータ処理は私たちの生活に密接に関わり、今はもう欠かせない存在になっています。そのため、多くの民間企業も、研究面から実用面、物づくりからサービス提供まで、幅広く様々な形で取り組んでいます。就職を考えると、チャンスがたくさんあるはずです。では、もしビッグデータ処理関連の仕事につきたいと思ったら、どのように進学を考えればいいか、以前学生とともに香港科技大学留学を検討したときの経験をシェアします。
●実際に働く経験のない学生にとっては、業界や企業を調査して就職マーケットを把握することがなかなか難しいです。とくに専門業界では多数の専門用語が用いられているので、まだ十分専門になっていない限り、的確なキーワードで検索することも困難です。そのため、最初は大学のResearch Focusを入り口として探すことにしました。データ処理関連の分野Data Scienceに入ってみれば、下記のような細分化が見られます(下記の画像をクリック)。

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●データ処理に関わる大学の重点分野は、人工知能、健康維持、スマートシティ、コンピュータ画像処理、SNS、データ処理のための数学があります。各分野の説明を読むと、専門用語がみつかります。例えば、人工知能においてIntelligent Robotic System、Natural Language Processing、Data Mining、Machine Learningなどがあります。自分が支援した学生の場合、画像に興味があるので、もっと探していくと、Data Visualizationがあります。これらのキーワードは実はとても重要で、先生を探すときはもちろん、データ処理に関わる専門職を検索するときも、大事なキーワードになります。
●Data Visualizationをキーワードとしてさらに探していくと、ネット上のデータを集めて可視化させる研究に詳しい先生がみつかりました。学生はその先生に連絡し、詳しく問い合わせたところ、自分が興味のある具体的なテーマも見つかりました。
●今後はBig Data処理、Data可視化、自分が興味のあるテーマをキーワードに仕事探してみると、関連の内容をやっている企業、そういう領域で仕事している方々の情報、または関連の仕事の経験をシェアしているブログが発見しました。これらを参考にすれば、より仕事のイメージや発展性が理解しやすくなりました。

以上、大学院進学の専攻選びについて、香港科技大学を一例としてあげました。大学院進学は、高校から大学へ進むときとはだいぶ異なって、工学・理学・医学・社会学などを非常に大きな枠で選ぶのではなく、より具体的に社会ニーズやキャリアを見据えながら、自分の興味と能力を軸にした専攻選びとなります。

大学院進学、とくに海外へ留学を検討中の皆さんに、この記事が良い参考になれば、幸いに思います。

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