振り返り:クラフトビールの定期便サービスを約1年運営してクローズすることにしました
あなたの好みに合わせたクラフトビールの定期便Homebrというサービスを約1年運営してクローズすることにしました。その振り返りをします。
サマリー
副業として会社の同僚とサービスの立ち上げをした
クラフトビールの定期便サービスを約1年運営していたもののうまくいかなかった
ユーザーヒアリング、LP検証、事前登録者を募るなど基本的なニーズ検証はやっていたものの、それでも甘かった。
事前登録と実際に購入には大きなハードルがあるので認識すべき&検証すべき
顧客像とニーズ、ソリューションそれぞれのストーリーを描いたときに納得感があるか?を徹底的に確かめることが重要
どういうサービスだったか?
Homebrというクラフトビールの定期便サービスを運営していました。
サービスの特徴は1分でできるクイズに答えるだけで、その人の好みのビールが毎月届き、評価を入れるとより良いビールが届くというものでした。
それぞれのユーザーに対してデータサイエンスを用いてビールを選定し届けるというサービスです。
メンバーは私と同僚の元データサイエンティスト兼エンジニアの方の二人でやりました。
インタビュー記事はこちらです。
以下1分で説明しているサービス紹介動画
なぜうまく行かなかったのか?
サブスクビジネスの前提
まず、前提として、サブスクリプションビジネスにおいて重要な指標は、LTV(顧客生涯価値)と顧客獲得コストです。
LTV>新規顧客獲得コスト となればビジネスとして黒字の状態になります。
さらに、LTVは新規ユーザー獲得と解約率(チャーンレート)で計算でき
LTV=1ユーザーあたりの売上÷解約率 という数式です。(無限等比級数の和の公式より)
例えば、1ユーザーあたりの売上が1000円だった場合、解約率が5%ならLTVは1000÷0.05=20000円となります。
解約率が10%と悪ければ、1000÷0.1=10000円とLTVが低くなります。
今回のビジネスでうまくいかなかった点
今回のビジネスにおいては、新規顧客獲得コストが非常に高かったためうまくいきませんでした。(逆に解約率はそこまで悪くなかった)
新規顧客獲得コスト=顧客を集めるのにかけた金額÷新規顧客数
で計算できます。
新規顧客数はさらに、訪問数×CVRで計算できますが、このうちCVRが圧倒的に低く、色々試すものの改善することができませんでした。
なぜCVRが低かったか?
一番の原因は、ソリューションと顧客像が合っていなかったから≒顧客とニーズヒアリングや市場調査などが甘かったからです。
今回のソリューションは、「クラフトビールに興味はあるけど、どうやって選べばよいかわからないという人に対して、適切にレコメンドして定期配送してあげる。」というものでした。
僕ら自身もこのような課題を抱えていたため、良いのではないかと判断していました。
ところがどっこい、もうちょっと市場の深堀りをしてみると以下のような矛盾が明らかになります。
そもそもクラフトビールという商材は、ビール市場の1%しか占めていないような非常にニッチ≒オタクな飲み物です。
そんなクラフトビールを飲むユーザーは基本的にビールに精通する人なので、自分の好みは知っているし、ビールについても詳しいです。そういったユーザーは自分で選ぶこと自体が楽しみの一つだそうです。(これは市場調査すればわかることだった)
ですので、今クラフトビール関連のサービスで人気なのは、goodbeer.jpという一本からクラフトビールを選べるというECサイト型のものが人気となっています。
こういう背景があるので、そもそもレコメンド(選ぶのではなく選ばれる)というソリューションはニーズとかけ離れていました。
更に、サブスクというソリューションも適切ではなかった可能性があります。
サブスク市場の調査によると、サブスクで人気なものはサプリなどがあるそうです。サプリは確実に定期的に購入する必要があり、選ぶ手間などはなく、いちいち発注するほうが手間ですよね?
このように選ぶ手間が面倒なものはサブスクと相性が良いのでしょう。更に、サブスクであれば価格が安くなるというようなメリットが提示されていることも重要です。
このようにちょっと市場調査すればわかるかもしれなかったつまづきポイントを事前に潰すことができなかったのが大きな失敗要因だと考えられます。
想定外だったこと。法律の壁・事前登録≒顧客ではないこと・在庫管理
立ち上げの流れは以下です。
自分たちが課題と感じているものから検証するアイディアをピックアップ
ユーザーヒアリング@Lancers
LP検証(ここで複数の訴求軸を検証)
見込み顧客獲得(Line@とメルアド)
サービス準備&酒類免許取得
Campfireでのクラウドファンディング
ローンチと有料顧客獲得
配送や在庫管理など
この中で想定外だったことは
5.サービス準備&酒類免許取得
7.ローンチと有料顧客獲得
8.配送や在庫管理
の3つです。
まず1つ目「サービス準備&酒類免許取得」ですが、安易に酒好きだから酒やろうと考えましたが、法律の壁があることを知りませんでしたw
酒を扱うためには、酒類販売免許というものが必要になり、その免許を取るために、税務署に色々書類を用意して提出する必要があります。
その中でも特にやっかいだったのは、販売所の設置の部分で、僕らは副業でやっているため、法人を立てておらず、現状住んでいる賃貸のマンションでは許可がおりずという感じで、場所の確保が大変でした。この免許獲得だけで数ヶ月要しましたOrz
次に二つ目「ローンチと有料顧客獲得」は、事前にニーズ検証をユーザーヒアリングやLP上での事前登録者募集などしていたものの、購入はしてくれなかったという点です。
正直これが一番の想定外でした!!!
ニーズ検証において、事前登録は役に立ちません。
実際に購入させるまでが検証。そのうえで、CPA<LTVとなるかが大事です。
とにもかくにも早い段階でこの点を検証しておきましょう。
最後に3つ目は、在庫管理です。
僕らはインターネットサービスは経験していましたが、いわゆる在庫管理などはしなくて良いサービスでした。つまりド素人でした。
想定どおりといえば想定どおりでしたが、僕らが当初考えていた方法での在庫管理はうまくいかず本当に試行錯誤をしつつやっと回せるようになったという感じでした。
具体的には、僕らのサービスは一人ひとりに適切なビールを選定して送るというものだった中で、なるべく在庫をためたくなかったので、出荷量≒入荷量を保とうとした結果、膨大なビールのリストの中からどのビールを入荷するかを選定してから注文していました。
その際、商品リストにあるもののメーカーの在庫がない。などが起きると、またどういう組み合わせが良いかを再選定しなければいけないというようなことが起き、回らないという自体が起きていきました。
最終的には、出荷量≒入荷量を保つという制約を取っ払うことによって問題は解決できましたが、それまで結構大変でした。。。
業界知識がちゃんとあるところに挑戦するのが良いと思います(特に副業なら)
今回ピボット先として単発購入のECみたいなものも検討しましたが、より在庫管理が複雑になるのと、ビールは賞味期限もあり在庫が残ると負債になっていく、競合に勝てる見込みがないという理由のため、リスクが高いためトライしませんでした。(バラエティセットという形で、単発購入×レコメンドは試しましたが、購入されませんでした)
逆にうまくいったこと、良かったこと
うまくいったこと良かったことは以下です。
チームで共同で考えたソリューションだったため、当事者意識が生まれた(前回の反省踏まえ)
売上は発生したし、顧客が一定ついた
一部はWordpressやTypeformなどの外部ツール、一部は実装と分けたことでスピード感が増したのと、開発工数を縮小できた
解約率は低かった
レコメンドシステムやビール選定のロジックは手動と比べて1000倍くらい早く選べるような仕組みが作れた(This is data science)
物流についての知識と酒やビールに関する知識がついた。クラフトビアテイスターという資格も取得しました笑
サービス全体を回したので、顧客対応などについても経験できた
福利代行サービスなどの新しいマーケティングチャネルも経験できた
次チャレンジするならどうするか?
今回の反映および前回の反省↓
を踏まえて、事前に確かめておくべきポイントを考えると以下になります。
課題が先でソリューションは後 課題から考えよ
チームでの納得感が醸成されているか?誰か一人の意思だけで進んでいないか?(コアメンバーがいる場合)
ターゲットとする市場はどういった属性のユーザーがいるのか?彼らはどういうモチベーションで購入しているのか?(デモグラよりも心理面によりフォーカス)
ターゲットとする市場はどれくらいの規模で、伸びているのか?伸びているとすればなぜか?
その市場で伸びている・人気のサービスはなにか?なぜ人気か?
ソリューション(サブスクなど)の特徴として挙げられるものは何で、どういう条件下だと適合していると言えるか?
全体のストーリーは一貫していて論理的整合が取れているか?(ここおかしくない?って点がないか)
本当に購入してくれるか?購入してくれたらLTV>CPAとなるか?
法的リスクや壁はないか?
自分たちが業界知識があるか?(マストではないけどあると強いと思うし、副業でパワーかけられないなら尚更事前知識がある方が良い)
まとめと今後の挑戦
全体を通して見てみると失敗ばかりではあったものの、それによって得たものは多かったかなと思います。
一度失敗したことであれば次は同じ失敗は踏まないぞ!と思います。
何よりもまず、本当にこれを求める顧客はいるのか?ニーズはあるのか?が大事だと改めて感じました。
今回ぶっちゃけ結構な額も損したけど(前回のも含めると100万円以上)長い人生の中で余剰資金の中でやる実験としてはむしろリーゾナブルなのではないでしょうか。
ということで、今回と前回の反省を生かして再度挑戦しようと思っています!次はがんばるぞー!
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