新個出 間世(竹田 健二)

一日一作くらい(予定)詩を書くおっさん

新個出 間世(竹田 健二)

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こぼれ

夜空からこぼれ落ちて 手のひらにやってきたちいさな光もやがて 手のひらからこぼれ落ちて夜空へもどる

こんななまあたたかくて見えない牢獄の中でも しどろもどろになって笑いあい ちょちょぎれる涙の海で水遊びでもできたら

ビー玉

ビー玉いっこ手のひらで弄び ビー玉もういっこ手のひらに拾いあげ きれいにきしんだ響きを大人になった自分へおくる

そんなものは見たくないからといって 鏡をまとわせ隠したところで 結果見えるようになったのは愚かな自分

かわる

変わることは変われぬ誰かを追い抜き 置いてかれた声を背中でしか受け止めなくなること わたしはそう思う人とすれ違いながら代わりになろう

あした

朝はあしたとも読めるという実感を手放し まぶたの裏の残像のカーボンコピーを 無理やりにこすってトイレに行くのだ

ストーリーテラー

さあ必要な形容詞は持ったかい まあ足りないなら現地調達でいい ああ必要は発明の母というからなくたっていいさ

歌・詞・詩

歌をきけばつねにすでにといったふうに そこには疑いもなく詩が生まれていて ことばなど無視して素知らぬ顔で事は進むのだ

redo

国家だとか誇りだとか 力だとかに縛られるくらいならば おれはあなたに縛られたほうがいい

(詩)おやすみのかたまり

寝息のかなでる子守唄の やさしい矛盾をひきうけて 夜は虹色のうすい膜をひろげ ふくれあがり息をする ほら眠る子の頬をなでて ほら泣く人の涙をぬぐい 木立の象のように街…

(詩)立冬

冷たくけむる空気を 見えない編み棒で編むように 朝っぱらからギターは響く その振動が減衰する果てに 届くべき鼓膜がないとしても 孤独と退屈とは異なる 教えてくれた人…

(詩)うがつ

目の前の壁を数ミリずつうがちながら ときおり憎むべきそれに寄りかかりながら 人生というものは一定のリズムをきざんで しかし残念ながら遅々として進まない 情けなくて涙…

(詩)サイクル

ひびきあう いつかのサイクル いつとも知らずに 突然起きては 心うちならす うちうちに ひびきあう だれかのサイクル きりきりまいして 偶然の一致が ありえないくらい あ…

(詩)おちこみ しみこみ

わすれかけた言葉が おちこみ しみこみ いつかひょっこり 顔を出し ひねくれた希望が おちこみ しみこみ ぐるりとまわって まっすぐに かんがえなしの蛮勇も おちこみ し…

(詩)しずむ

日々のあくは うかびあがって すくいとられる こともなく いずれいずこへ 内のうちまで しずみ しずむ 音もないまま 膜のうちの しょげたゆめは うかばれぬまま うかぶま…

(詩)雪平鍋

湯は空気の玉を含んで ふつふつおどり 湯気を吸い込みながら 換気扇がまわる 今日も熱を受けとめて あいつからもらった 黒ずんだ雪平鍋 薄きいろのかたまりが 沸騰の中で…

こぼれ

夜空からこぼれ落ちて
手のひらにやってきたちいさな光もやがて
手のひらからこぼれ落ちて夜空へもどる

こんななまあたたかくて見えない牢獄の中でも
しどろもどろになって笑いあい
ちょちょぎれる涙の海で水遊びでもできたら

ビー玉

ビー玉いっこ手のひらで弄び
ビー玉もういっこ手のひらに拾いあげ
きれいにきしんだ響きを大人になった自分へおくる

そんなものは見たくないからといって
鏡をまとわせ隠したところで
結果見えるようになったのは愚かな自分

かわる

変わることは変われぬ誰かを追い抜き
置いてかれた声を背中でしか受け止めなくなること
わたしはそう思う人とすれ違いながら代わりになろう

あした

朝はあしたとも読めるという実感を手放し
まぶたの裏の残像のカーボンコピーを
無理やりにこすってトイレに行くのだ

ストーリーテラー

さあ必要な形容詞は持ったかい
まあ足りないなら現地調達でいい
ああ必要は発明の母というからなくたっていいさ

歌・詞・詩

歌をきけばつねにすでにといったふうに
そこには疑いもなく詩が生まれていて
ことばなど無視して素知らぬ顔で事は進むのだ

redo

国家だとか誇りだとか
力だとかに縛られるくらいならば
おれはあなたに縛られたほうがいい

(詩)おやすみのかたまり

寝息のかなでる子守唄の
やさしい矛盾をひきうけて
夜は虹色のうすい膜をひろげ
ふくれあがり息をする
ほら眠る子の頬をなでて
ほら泣く人の涙をぬぐい
木立の象のように街をゆくよ
おやすみのかたまりは

瞳をとじた孤独な鼓動も
無風無音のためいきも
もつれた脳波のハミングも
ぜんぶぜんぶかきまぜて
きまぐれな真夜中の対流
ささくれをなでつけて
しまわれた街はゆるまってゆく
おやすみのかたまりに

ビル

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(詩)立冬

冷たくけむる空気を
見えない編み棒で編むように
朝っぱらからギターは響く
その振動が減衰する果てに
届くべき鼓膜がないとしても

孤独と退屈とは異なる
教えてくれた人はもう遠く
そんなことを思い出したり
思い出さなかったりしながら
ガットギターはつまびかれる

離れゆく虚無の日々も
無駄ではなかったと信じることが
良いのか悪いのかその戸惑いだけを
淹れたてのコーヒーに溶かした
砂糖とクリームのよう

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(詩)うがつ

目の前の壁を数ミリずつうがちながら
ときおり憎むべきそれに寄りかかりながら
人生というものは一定のリズムをきざんで
しかし残念ながら遅々として進まない
情けなくて涙が出ようが泣いたところで
なにも特になんにも解決しないので
一休みしてわんわん泣いて
貴重な休みや後悔と引き換えに
すっきりするだけすっきりする
その内側に宿るものこそ人生の
人生のまん中に近い場所を
占めているという誰かの声は
心を込

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(詩)サイクル

ひびきあう
いつかのサイクル
いつとも知らずに
突然起きては
心うちならす
うちうちに

ひびきあう
だれかのサイクル
きりきりまいして
偶然の一致が
ありえないくらい
ありありと

ひびきあう
無意味なサイクル
意味と意味とが
いみを捨てさって
おどりをおどるよ
おどおどと

ひびきあう
サイクルとサイクル
触れてもないのに
ふれられやしないのに
つうじあっては
つじつまを

ひびきあう
ぜんぶ

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(詩)おちこみ しみこみ

わすれかけた言葉が
おちこみ
しみこみ
いつかひょっこり
顔を出し

ひねくれた希望が
おちこみ
しみこみ
ぐるりとまわって
まっすぐに

かんがえなしの蛮勇も
おちこみ
しみこみ
散らした花びらは
点描点睛

真夜中のざわざわと
おちこみ
しみこみ
夢のほとりで
ほとぼって

無駄につんだ日々に
おちこみ
しみこみ
あの熱たちは
くすぶって

忸怩のかたまりめ
おちこみ
しみこみ
心のうちに

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(詩)しずむ

日々のあくは
うかびあがって
すくいとられる
こともなく
いずれいずこへ
内のうちまで
しずみ しずむ
音もないまま

膜のうちの
しょげたゆめは
うかばれぬまま
うかぶまま
熱にうかされ
すかされて
すずみ すずむ
秋のゆうぐれ

いかりを下ろし
あめかぜよける
みずのそこには
あの日のおもい
きまずいうずまき
きりきりまいで
よどみ よどむ
見えないこころ

試しあいした
みじゅくなみそぎ

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(詩)雪平鍋

湯は空気の玉を含んで
ふつふつおどり
湯気を吸い込みながら
換気扇がまわる
今日も熱を受けとめて
あいつからもらった
黒ずんだ雪平鍋

薄きいろのかたまりが
沸騰の中でほどける
百度近くの熱と
五百ミリリットルの水をえて
膨れあがる期待
あの日笑顔の
あいつからもらった
黒ずんだ雪平鍋

あいつからもらった
黒ずんだ雪平鍋
あの日の輝きはもうなくて
でも今もここにあり
いつものように
一袋40円の

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