(詩)雪平鍋

湯は空気の玉を含んで
ふつふつおどり
湯気を吸い込みながら
換気扇がまわる
今日も熱を受けとめて
あいつからもらった
黒ずんだ雪平鍋

薄きいろのかたまりが
沸騰の中でほどける
百度近くの熱と
五百ミリリットルの水をえて
膨れあがる期待
あの日笑顔の
あいつからもらった
黒ずんだ雪平鍋

あいつからもらった
黒ずんだ雪平鍋
あの日の輝きはもうなくて
でも今もここにあり
いつものように
一袋40円のラーメン
たいらげたあとに
油じみて片隅の
あいつからもらった
黒ずんだ雪平鍋


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