(詩)おやすみのかたまり

寝息のかなでる子守唄の
やさしい矛盾をひきうけて
夜は虹色のうすい膜をひろげ
ふくれあがり息をする
ほら眠る子の頬をなでて
ほら泣く人の涙をぬぐい
木立の象のように街をゆくよ
おやすみのかたまりは

瞳をとじた孤独な鼓動も
無風無音のためいきも
もつれた脳波のハミングも
ぜんぶぜんぶかきまぜて
きまぐれな真夜中の対流
ささくれをなでつけて
しまわれた街はゆるまってゆく
おやすみのかたまりに

ビルたちのやわらかな眠りに
ふいにやどる不揃いなリズムすら
あらかじめわかってたように
ティッシュにくるみこまれて
今夜かぎりのコンチェルトに
今度もしずかに着席する
街のつかの間はひたしこまれる
おやすみのかたまりへ

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