(詩)うがつ

目の前の壁を数ミリずつうがちながら
ときおり憎むべきそれに寄りかかりながら
人生というものは一定のリズムをきざんで
しかし残念ながら遅々として進まない
情けなくて涙が出ようが泣いたところで
なにも特になんにも解決しないので
一休みしてわんわん泣いて
貴重な休みや後悔と引き換えに
すっきりするだけすっきりする
その内側に宿るものこそ人生の
人生のまん中に近い場所を
占めているという誰かの声は
心を込めて無視をして

なにがいけないか判っているに
そこからきびすを返して遡りながら
すべきことはなにか考えようとすると
手足がからまっててんで考えにならない
かくあれかし我よ善くあれかしと
願う我がそもそもからっぽと気づくのは
遡りパンくず拾う道半ば
自ずから捨てたものを拾ったところで
自ずと満たされるでもなく
からっぽのままからまわりして
手足は固結びされ動けなくなる始末
情けないけれどそれが人間なのだと
人の歴史の大真理なのだと
隙を見るとおれの心は手前勝手に
そんなひどくうがった考え方をしやがり
かっこつけてはわかったふりをしては
からっぽのままからっぽなりに
刻一刻を消費する

うだつがあがらないならせめて
うがつべき穴を見つけよ
穴をうがつべき場所を
おのれの中に見つけよ
読まなきゃ思ったものが書けないように
賢さへ至る道が愚かさを経由するように
うがたなければ穴はない
だれかがそう言い放っても聞かずにいて
長い長い回り道を満身創痍でくたびれはてて
路傍の看板に書いてある真理に至っても
何の悔いがあるものか
穴をうがつのに遅すぎることはないのだ
それをわかっていても寝首をかこうとする
こびりついた後悔にはお引き取り願い
祈るようにもしくはだべるように
空虚で空虚をぱんぱんに膨らますように
行為に宿る意味をからからに煎じるように


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