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キャリアの含み資産をどう作るか

 日経ビジネスの最初号から『アドラーとロート製薬の共通項 目的論が会社と人生を変える』。

 誰しも、過去があって現在がある。すなわち、これまで行なってきたことがあって、今がある。
 これを"原因論"(=過去が今の原因)ではなく、"目的論"(=今のためにこれまでがあった)で捉えてみることで人生自体を変えられる、という「アドラー心理学」を引用したエッセイです。

 題材となっているのはロート製薬が1990年代から導入している「キャリアビジョンシート」。これは全社員が毎年、「仕事の中で今後実現したいこと」と「そのために取り組むこと」などを書くというもの。同社の取締役は国内の従業員約1,600人分のシートをすべて読むといいますから相当なエネルギーを要します。

 それとは別に同社には、個々人がこれまでに勉強してきたことや関心を持っていることなどを社内で共有するためのデータベースがあるといいます。これは単にお互いを知り合うという効果以外に、プロジェクトのメンバーを招集する際にも活用されます。

 仕事を通して自ら主体的に"なりたい自分"を目指し、それによって身に着けた資本を組織として最大活用する。まさに昨今注目を集める人的資本経営のはしりといえる取り組みです。

 ビジネスパーソンである以上、誰にも必ず組織から課された目標や役割があります。そしてそれが仮に好き(得意)なことでなかったとしても、短期的にはそのノルマを果たすのが仕事です。

 それを繰り返すことで積み上がっていくキャリアにオーナーシップを持つということは、その"ノルマ"を達成するプロセスで何を身に着けようとするかです。
 後に振り返って職務経歴書を書くときに、「目標100%達成」という"結果"に加えてどんな能力や経験値、すなわち『キャリアの含み資産』を言語化して明示できるのか。
 それは、「100%達成のために行なった工夫」とは次元が異なります。

 営業は結果が全て、とはあくまで"今"を語るフレーズでしかなく、"未来"の礎となるのはキャリア資産です。

 目標からは決して逃げられませんが、目標達成が"目的"になってしまっているとしたら、いくら高い業績賞与を受け取ったとしても、時間をお金に換えているだけ、、という可能性もあるのではないでしょうか。

 考えるべきは、目標を達成するプロセスで、未来に繋がるどんな経験/スキルを身に着けるか、です。

 そしてそれを考えるヒントは、今の自分を形造っているスキルや考え方は過去のどの体験によって身に着いたのか(=過去に対する意味付け)なのです。


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