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本を書いてみた(下)

 6月28日、初の単著となる『海外事業を加速する 中途採用の成功法則』が発売されることになりました。既にAmazonでは予約販売が始まっていますので、もしよければ表紙だけでもご覧ください。

 一連の投稿は、自分もいつか本を書いてみたいと考えている人のために、なぜ私にそれができたのか、私にとって、本を書くために必要だったのはどのようなことだったかをお伝えするためのものです。
 よろしければ、ぜひバックナンバーからお読みください。

本を書いてみた(上)

https://note.com/preview/n6d3806036bc4?prev_access_key=42268e83998b4a1e91cb3fa875d18617

本を書いてみた(中)
https://note.com/preview/n6d4768a86b70?prev_access_key=be5dab3c5020a2ddf54f0591d0bd9b38

3)パートナー

 世の中には膨大な数の本があり、星の数ほどの"著者"がいます。
 その中で、出版社からのオファーが次々と舞い込むような売れっ子作家はごく一握りではないでしょうか。
 とは言え、自分の原稿を出版社に持ち込んだところで、それが本になることなどほとんどないでしょう。
 ネットに情報が溢れ、ChatGPTのようなAIを使って簡単に文章を作れる時代に、出版社は易々と投資をしてくれるとは考えられません。私が実際に探してみたところ、原稿を持ち込もうにもその窓口さえ閉ざしている出版社の方が圧倒的に多かったです。(自費出版ならいくらでもあります)

 私は、ある程度(結果として出来上がった最終稿と比べると7〜8割)書き進めた原稿を、企画書を添えて10社強の出版社に送りました。そのほとんどは、出版社のWebサイトに設けられた応募窓口から行なったのですが、「受け取りました」という事務的な返信すらなく、返信があったとしても「1ヶ月待って返事が来なかったら落選です」というものでした。
 そんな中、2つの出版社が興味を示して下さったことは、非常に幸運なことでした。

 その一つが、今回お世話になったアメージング出版です。
 同社は、お世辞にも大きな会社とは言えませんが、代表の千葉慎也氏の会社設立の思い(※)に強く共感してお世話になることを決めました。
※アメージング出版 

 千葉氏だけでなく、構成や校正(どちらもコウセイですね)、タイトルやデザインの決定に、自分事のように熱心に関わってくれた同僚や、「他の従業員にとっての一つのロールモデルになるから」と前向きな言葉で出版を承認してくれた役員など、社内のパートナーに恵まれたことも、欠かせない要件でした。

4)自分と向き合う強さ(謙虚さ)

 本を書く作業は、自分と向き合う作業です。
 最も伝えたいことは何か、なぜそう考えるのか、を考え抜くことに加え、入稿直前になると、本当に自分はベストを尽くしたのか、という不安にもさいなまれます。

 一方、原稿は自分一人だけで書き上げるものではありません。私の原稿のもととなっているのは、大学院で書き上げた修士論文です。その時点で論文の指導教官や修了試験の面接官など、複数の研究者から厳しいフィードバックを受けています。それに実務的な内容や追加の考察を書き足して初稿を作成し、それを出版社に送る前に、これまで本書の内容に近いテーマで色々と議論をしてきた友人に意見を求めました。
 それに対して還ってきたフィードバックは予想以上にネガティブなもので、私は原稿の大幅な見直しを余儀なくされます。正直、出版応募に対して強く背中を押してくれるような前向きな感想を予想していた私は、心の半分では愕然としながらも、そこで初めて読者目線で客観的に本書の意義やポジショニングを意識することができたと言ってもよいでしょう。

 入稿して、出版社からの原稿が上がってくると、それに対する校正作業が始まります。何度か読み返した上で入稿した原稿も、実際の書籍フォーマットに落とし込んでみると、読み難いところに気付いたり、図表内の文字が小さくて見え難かったり、また入稿段階では気付くことができなかった誤字なども見つかります。
 しかし自分で何回見直しても、絶対に不適切な箇所は残ります。私の場合は、個人としてではなく、企業に所属する立場で書きましたので、誤字や誤表現のチェック、専門的な内容のチェック、法的な観点からのチェックと、社内で私を除く計4人の目で校正が行なわれました。
 原稿が不完全な状態でこれだけの人の手を煩わせた上に、再び大幅に修正された修正稿のチェックを依頼する、というようなことを避けるため、校正を依頼した原稿は自分の中ではほぼ完成したと思えるものでした。当然、それぞれの立場から様々な指摘が行なわれたのですが、有難い反面、大量の“赤入れ”をされた原稿が返ってくると、自分自身を否定されたような気にさえなります。
 しかし、それを無視して本を世に出すと、多くの人に誤った不適切な情報を拡散してしまうだけでなく、場合によっては自身や所属する組織が社会的な責任を追及されるような事態にならないとも限りません。

 私に限らず本を出版しようと考えるような方は、ある分野の専門性を持つ人です。ひょっとしたら普段の生活の中では、少なくともその分野については誰かに指摘をすることはあっても、自身の不足を指摘されることは滅多にないかも知れません。指摘された時は、その内容によっては自尊心を傷つけられたり、恥ずかしかったり、少なからず感情が揺らぎますが、そこは反発するのではなく、また自身を過度に否定することなく冷静でありたいところです。

 今にして思えば、大学院で多くの素晴らしい論文に出会ったことや、修士論文の指導教官や、本書の校正に携わってくれた方々からの数々のフィードバックは、自分にとって欠けている視点や考えの浅さ、表現の稚拙さなどに気付く、いわば客観性と謙虚さを取り戻すという意味で貴重な体験となりました。
  *      *     *     *     *

 さて、書き終えてみて思うことは二つです。
 一つは、本書の内容をもとに色々な人と議論をしてみたいということです。
 本書の原稿は既に印刷工程に進んでおり、ほどなくして読者の方々の手元に届きます。いわば本書に表現したことに限れば、逃げも隠れもできない状態になっています。
 かくなる上は、私の理論の未熟な点をご指摘いただき、また様々な異論反論に触れることで自らの知見を更に深めていくのみです。

 そしてもう一つの思いは「次は何について書こうか」ということです。
 今のテーマ「日本企業の海外事業展開と要員確保」について本格的に学び始めて既に10年以上が経ちました。
 まだまだ深めるべき論点は幾らでもあるかも知れませんが、今まで掘り進めできた穴を更にまっすぐ下へと掘り下げるよりも、新たに何か掘るべき穴を見つけ、それを掘り進めることで今のテーマについての新たな考察や分析の切り口が見つかるのではないかと思うからです。
 知らないことがもっと多い分野へと鞍替えすることで、新たな刺激や喜びを感じられるのではないかという期待もあります。

 しかし、私にとって人材採用が仕事や学びの中心から外れることはありません。
 これからも、学び、語らい、文字にしてアウトプットする習慣は続けていきますので、宜しければお付き合いください。(完)

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