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ローリング・ストーンズの好きなアルバム10作品②

ローリング・ストーンズ
メイン・ストリートのならず者
ブラック・アンド・ブルー
スティール・ホィールズ
ヴゥードゥー・ラウンジ

ビッグ・ヒッツ(ハイ・タイド・アンド・グリーン・グラス)
ホット・ロックス1
ホット・ロックス2

ブルー&ロンサム

ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット

■R・ストーンズの好きなアルバム10作品②
オリジナル・アルバムが五作品、ベスト・アルバムが三作品、カバー・アルバムが一作品、ライヴ・アルバムが一作品で構成された十作品です。先に好きなオリジナル・アルバムを十作品を紹介しましたがその続き、できたら今回もオリジナル・アルバムで統一したかったですが明らかに好きさ加減に差があり過ぎたのでオリジナル・アルバムを五作品と他のベスト・アルバム等で構成しました。前回の十作品が100点、90点で今回のオリジナル・アルバム五作品が80点くらい、そして、今回、漏れたオリジナル・アルバムが70点、60点、あるいはそれ以下ということになります。そうなると一般的に評価の高い「女たち」、「刺青の男」が漏れたのは意外ということになりそうです。なんとなく後ろめたいような気後れするような気持ち、理由も問われたとしても漠然としています。強いて挙げるならマイルドな歯応え、アーモンドが入っていないチョコレートを食べているような「女たち」、「刺青の男」であります。特に「刺青の男」、レコードだとB面が穏やかで物足りなかったりします。

「ローリング・ストーンズ」
「ローリング・ストーンズ」はアルバム・タイトルが示すようにローリング・ストーンズが1964年に発表したイギリスでのファースト・アルバムです。ローリング・ストーンズのカバー曲と言えばチャック・ベリー、マディ・ウォーターズ、ボ・ディドリーが真っ先に浮かびますが本作はそれらの曲が収録されていて予想が的中したような満足感が得られます。チャック・ベリーが「ルート66」と「かわいいキャロル」、マディ・ウォーターズが「恋をしようよ」、ボ・ディドリーが「愛しのモナ(アイ・ニード・ユー・ベイビー)」の計四曲、これら以外も含めるとほとんどがカバー曲でルーツを知る機会にもなるので探求心を満たします。掘り下げてローリング・ストーンズがカバーしたアーティストを聴いてみたこともありましたが特にマディ・ウォーターズは異彩を放っていました。ローリング・ストーンズがカバーするのも納得、何しろバンド名の由来も有名な話です。ローリング・ストーンズの「恋をしようよ」は原型から離れ過ぎていて、最早、ブルースではなくてパンク、1970年代のパンクに対して冷ややかな姿勢を示していたローリング・ストーンズですがなんとなく理解ができそうなファースト・アルバムです。

「メイン・ストリートのならず者」 
「メイン・ストリートのならず者」はローリング・ストーンズが1972年に発表したアルバム、黄金期の一枚で名盤に位置付けられている作品です。ロックンロールを筆頭にブルース、フォーク、カントリー、ゴスペル、ソウル、R & B等、ローリング・ストーンズはカバー曲も含めてそれら多数の音楽ジャンルに関わってきました。本作はそれらを散りばめた言わば集大成のようなアルバムです。先に並べたように一枚に収まらず二枚組、トータル・タイムで六十数分の大作です。ローリング・ストーンズの魅力は加工や融合等、吸収力や複合性と思っています。本作はそれらが控えめ、先に挙げた音楽ジャンルに対して真正面から向かい独自の解釈や新しさを加えないことを意識したような傾向が感じられます。本作で好きな曲の一つが「彼に会いたい」、この曲はアバンギャルドなゴスペル・ナンバーで画期的ですが本作に収められている曲はそのような大胆な試みはあまり示されていません。個人的には先のように複合性等を好んでいるので遠ざけてしまいがち、一方ではガイド・ブック等の高評価も納得していてローリング・ストーンズの真髄も本作と思いながら充分に満足できずにもどかしいです。本作について考え文にしたのは良い機会でした。整理がついたので本作に対しての評価は好転しそうな気配はしています。

「ブラック・アンド・ブルー」
「ブラック・アンド・ブルー」はローリング・ストーンズが1976年に発表したアルバムです。全八曲という曲の少なさから全体の仕組みが分かりやすくて明確性に満足させられます。通常は十曲というのがスタンダード、個人的にはオリジナル・アルバムでの八曲という可能性について考えさせられた作品でした。八曲というとレッド・ツェッペリンの四枚目を思い浮かべる方も多いと思います。両作が異なるのはレッド・ツェッペリンはそれまでの集大成としての役割でしたが「ブラック・アンド・ブルー」は始まりを印象付けたことでした。ロン・ウッドの加入と合わせて本作からファンク、レゲエ、ディスコを本格的に取り入れたことに魅力を感じます。一方では従来のブルース、フォーク、カントリーな控えめ、これについては本作の特異性になったと思います。象徴的なのは「メロディ」、この曲はジャズですがこれまでのローリング・ストーンズはロックというフィールドの中での従来のブルース、フォーク、カントリーとの関わりだったことでした。本作は明確性と可能性と特異性が有機的に働きかけていて上手くまとまっているアルバムですがそれに加えて安定性、常套手段と解釈していますがA面の最後とB面の最後から数えて二曲目にバラードが置かれているのも良好です。ロック・パターンも各面に一曲ずつ配置、なんとなく四つの柱で支えられた四角形の家を連想させられ落ち着きます。でも、中央の大黒柱がないのも事実、全九曲の「レット・イット・ブリード」には「ミッドナイト・ランブラー」という大黒柱があると思うと本作がそこまで評価されていないのも納得です。

「スティール・ホィールズ」
「スティール・ホィールズ」はローリング・ストーンズが1989年に発表したアルバムです。ミック・ジャガーとキース・リチャーズの和解、翌年の初来日、前後して二十五周年等の後押しから祝祭感が溢れるアルバムです。この時代はレコードからCDへ移行、曲数や収録時間を考えるとレコードではなくCDを意識したことが伺えますが合わせてローリング・ストーンズそのものもグレード・アップを意識したようなアルバムです。アルバム・タイトルは鋼鉄の車輪、転がる石が進化してそれになったということを充分に理解ができるのでコンセプトも素晴らしいです。鋼鉄の車輪なので色々なものは付着し難いことから流行の音楽ジャンル等の吸収はないに等しく、また、状態の悪い道にも負けないことにも繋がることからロックンロールという言葉が浮かび上がります。優れたプランやコンセプトに舌を巻きますが、やはり、必然的に舌を出した唇を連想、何から何まで好循環で車輪やCDの永遠性に考えが及びますが全てが繋がるようになっていて感心します。ビジネスに寄せた事柄なのでミック・ジャガーの貢献と思ってしまいますがアルバム自体はブライアン・ジョーンズを含めてメンバー全員の絆を示していて清々しいです。

「ヴゥードゥー・ラウンジ」
「ヴゥードゥー・ラウンジ」はローリング・ストーンズが1994年に発表したアルバムです。1990年代に限らずロック史に刻まれる名盤がニルヴァーナの「ネヴァーマインド」、パンクとハード・ロックを掛け合わせたサウンドは適度な暗さと重たさと冷たさが混ざっていて好感触、「ヴゥードゥー・ラウンジ」はその影響を滲ませるアルバムですがローリング・ストーンズは少しの恐怖を加えて魅力的なアルバムにしています。アルバム・タイトル、アルバム・ジャケット、アートワークは悪魔を連想、必然的に「ベガーズ・バンケット」を連想、アルバムの一曲目の「ラブ・イズ・ストロング」は緊張感が漂う曲で先の事柄と上手く結びついています。本作は「ベガーズ・バンケット」に限らず過去の名曲を連想させる仕組みになっています。曲名に使われている単語を並べるとムーン、ワイルド、トゥゲザー、レインボー、「ベガーズ・バンケット」に反して割と穏やかな過去の名曲が浮かんできます。特に「スィーツ・ハーツ・トゥゲザー」は新鮮、幼い少女に聴かせているようで微笑ましいです。極端な話、孫がいなければ書けないような曲、性欲丸出しの「夜をぶっとばせ!」との違いを実感します。合わせて本作からビル・ワイマンの代わりにサポートとして新しいベーシストが加わりましたがそれも違いを実感しました。サポート・メンバーに特に不満はないですがビル・ワイマンのこれまでの貢献を再確認しました。

「ビッグ・ヒッツ(ハイ・タイド・アンド・グリーン・グラス)」
「ビッグ・ヒッツ(ハイ・タイド・アンド・グリーン・グラス)」はローリング・ストーンズが1966年に発表したベスト・アルバムです。イギリス版は全十四曲、カバー曲とオリジナル曲のバランスが良好でおよそ三分の一がカバー曲、その中で異彩を放っているのが「リトル・レッドルースター」です。アルバムの最後に置かれているのでその後押しもあるのかもしれませんがそれにしてもブライアン・ジョーンズのスライド・ギターは鮮烈です。一方ではファズ・ギターが活躍、収録曲を眺めるとやはり初期のローリング・ストーンズを象徴しているのは「サティスファクション」と確認させられます。聴き過ぎてすっかり麻痺をしている曲ですが1960年代の当時の衝撃を想像すると計り知れないそれだったのではないでしょうか?例えるならイエロー・マジック・オーケストラの「ライディーン」をリアル・タイムで聴いた時の衝撃、そのような感じだったことを想像しています。本作の「リトル・レッドルースター」と「サティスファクション」と並ぶイントロ、それに限定するなら「黒くぬれ!」のシタールもインパクトがあります。これらを始まりと位置付け辿っていくと「リトル・レッドルースター」が「ノー・エクステーションズ」、「サティスファクション」が「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、「黒くぬれ!」が「悪魔を憐れむ歌」辺りを結び付けるのが適当かと思いますがベスト・アルバムである本作は後の名曲に繋がる原石が転がっています。

「ホット・ロックス1」
「ホット・ロックス1」はローリング・ストーンズのベスト・アルバムです。「ビッグ・ヒッツ(ハイ・タイド・アンド・グリーン・グラス)」と同じように1960年代のベスト・アルバムでそれと被っている曲もあります。自身のローリング・ストーンズの好きな曲のベストテン、その内の五曲も収録されているので最適、全十二曲なので半分近くを占めていることになります。代表曲の粒では先のベスト・アルバムよりも本作のほうが大きいような印象、本作でも「サティスファクション」は収録されていますがそれほど目立つ存在ではないような気がします。「アンダー・マイ・サム」、「夜をぶっとばせ!」、「ルビー・チューズデイ」辺りが収録されているのでその影響のような気がしますが個人的にはそれらが好きな曲なのでそのように感じるのかもしれません。後に数々のベスト・アルバムが発売されているので本作の価値は現在ではそれほど高くないと思いますがオリジナル・アルバムの「ビィトウィーン・ザ・バトンズ」のイギリス版を支持している立場からすると都合の良かったアルバムです。アメリカ版の「ビィトウィーン・ザ・バトンズ」には「夜をぶっとばせ!」と「ルビー・チューズデイ」を収録していますが趣旨から外れているような気がするので快く思っていません。

「ホット・ロックス2」
「ホット・ロックス2」はローリング・ストーンズのベスト・アルバム、「ホット・ロックス1」の続編に位置付けられるアルバムです。契約上、「ブラウン・シュガー」と「ワイルド・ホース」が収録されているのは微妙ですが黄金期の「ベガーズ・バンケット」、「レット・イット・ブリード」、「スティッキー・フィンガーズ」の三作品の代表曲とオリジナル・アルバムに収録されていない「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」と「ホンキー・トンク・ウィメン」との組み合わせは魅力的、先の三作品の代表曲から選ばれた曲にも異論はなくて充実のベスト・アルバムです。やはり、数年という短い期間にこれだけの個々の輪郭がハッキリとしている曲が発表されたのは凄いです。例えるとV9時代のジャイアンツを連想する鉄壁の九曲、うっとりするラインナップです。具体的なブルースというよりはそのフィーリングが滲み出ているような感じがします。加えて勝手な思い込みになりますがいくつかの尺の長い曲はプログレシッヴ・ロックへの関心を表しているような気がします。でも、それに踏み込まなかったのはサイケデリックの反省だったのかもしれません。この頃のローリング・ストーンズは実に冷静だったことも確認させられる「ホット・ロックス2」です。

「ブルー&ロンサム」
「ブルー&ロンサム」は2016年に発表されたローリング・ストーンズのアルバム、全曲ブルースのカバー・アルバムです。ローリング・ストーンズのブルースと言えば「ストレイ・キャット・ブルース」、「ミッドナイト・ランブラー」、「シスター・モーフィン」、これらはオリジナル曲でローリング・ストーンズの解釈が大胆に加わった曲、一方、オリジナル曲でも解釈を加えず純度の高いブルースは「パラシュート・ウーマン」、この曲はアコースティック・サウンドが主体、これに反してエレキ・ギター主体で尚且つカバー曲という正反対な曲が「ストップ・ブレイキング・ダウン」になります。つまり、「ブルー&ロンサム」は「ストップ・ブレイキング・ダウン」みたいなタイプの曲が十二曲で構成されているアルバムです。エレキ・ギター主体になったのは1995年に発表されたアコースティック・サウンドが主体の「STRIPPED 」があったからと勝手に推測しています。「ブルー&ロンサム」はハード・ロックな肌触りが特徴です。思い出すのはレッド・ツェッペリンの「プレゼンス」や「コーダ(最終楽章)」、なんとなくジミー・ペイジが好きそうな音質です。でも、参加しているのはエリック・クラプトン、たぶん、ブライアン・ジョーンズがやりたかったのはこのようなアルバムだったような気がしますがスライド・ギターは控えめ、ハーモニカは印象に残りやすい「ブルー&ロンサム」です。

「ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」
「ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」は1966年に発表されたローリング・ストーンズのライヴ・アルバム、アルバムの最後に「サティスファクション」が置かれているのが好感触です。「サティスファクション」はライヴ録音が好きです。つまり、ライヴ映えする曲です。一方、ライヴよりもスタジオのほうが好きなのは「ストレイ・キャット・ブルース」です。この曲はライヴ・アルバムの「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」に収録されていてオリジナル・アルバムでは「ベガーズ・バンケット」に収録されていますが、スタジオで感じられる緊張感や不気味なムードがライヴでは感じられないのが残念です。とは言え、「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」のムードに溶け込んでいるのでスタジオでの緊張感は必要としていないという解釈もできそうですが全体的に落ち着いた趣きの「ストレイ・キャット・ブルース」及び「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」です。反して「ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」は熱狂的、歓声や熱量に誘導されて興奮させられます。なんとなく、ビートルズがライヴをやらなくなったのも納得できそうなアルバムでもあります。






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