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落合陽一「働き方5.0 これからの世界を作る仲間たちへ」を読んで

今回は、

6/3に発売された、落合陽一氏最新著書「働き方5.0」を読んでの感想を書きたいと思います。

正直なところ「確かにな〜」と納得のいく部分もあれば、【意識だけ高い系】人間の話など若干耳の痛い?気をつけなきゃいけないと感じる部分も多くあり、今後の雇用や働き方の側面を考える上でとても勉強になった本でした。

ただ一個だけ言えるのは、本書は今後の働き方に対して不安を持つ人々に対して答えを明示しているものではなく、コンピュータやインターネットに対する既存の考え方・捉え方に対して警鐘をならし、「アフターコロナで人はどう生きていくべきなのか?」という大きな問いを投げかけている本です。

メディア・アーティスト、「現代の魔法使い」と称される落合さんならではの見方や表現方法・考えなど、ちゃんと読むとかなり面白くてスイスイ読めちゃいます。

ここからは落合さんの意見と人材営業の観点を織り交ぜながら感想(というか、思ったことを赤裸々に)を書きたいと思います。ただし、私は落合さんほどの頭脳は持ち合わせてないので解釈のレベル感は少し低いかもしれませんが、ご了承ください笑

はじめにーそもそも働き方5.0って?

科学技術基本計画で提唱されたもので、〈サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会〉とされています。これまでの「狩猟社会(1.0)」「農耕社会(2.0)」「工業社会(3.0)」「情報社会(4.0)」に続く、新たな社会の姿です。それは、AIやロボットが幅広い分野で進化し、人間とともに働いていく時代=「働き方5.0」の時代とも言うことができます。(「働き方5.0」、12ページから引用)

コンピュータと人間がお互いのできること・出来ないことを補い合って社会の課題に向き合い、経済発展につなげていく働き方…それが働き方5.0。本書にはウーバーイーツの例が度々出てきますが、コンピュータが采配した場所に人間がデリバリーを行ったり(コンピュータが人を利用)する事例、一方で人間がコンピュータを利用して、新型コロナウィルスの感染を予測したり(人がコンピュータを利用)する事例、と環境や場面、向き合う課題によって人とコンピュータが相互に補完しあっている時代だと書かれています。

落合さんは本書の中でコンピュータを、我々の【第二の身体・脳】や【集合型の隣人】と表現しております。コンピュータをただの機械として捉え、いつまでも利用者側の考えでいるのではなく、共生していくことを考えることが重要だと読んでいて感じました。

この本は落合さんがミレニアム世代の代表として、Z世代やそれ以降の世代に対して、新たな世界の景色と展望を共有したい!という想いがあるようで、度々学生やその親御さんに向けてのメッセージのような言葉も含まれております。

ただ、私自身この本の読者は今後を担う人々だけでなく、すべてのビジネスマンに読んで欲しいと思っており、そちらに対する考えをこの後書いていきたいと思います。

私の向き合ってるマーケットについて

新型コロナウィルスを機に、テレフォンカンファレンスやテレワークなどいわゆるリモートワークという新しい働き方が標準化したり、ギグエコノミーニーズの躍進、コンピュータ機材の確保・通信環境の整備などDXに対する急速な社会要求が高まりました。

私は今リテール領域と言われる、所謂中小事業者様や個人店など、組織規模で言うと大体5人から30名規模程度のお客様に日々対峙しております。大企業じゃないからこその、考え方や仕事に対する意識など勉強させてもらえることが多く、且つ人材の価値はそういった企業様の方が1人の雇用による社内影響度が大きかったりするのでとてもやりがいを感じています。

そんな会社様や人事担当者様を一社一人でも多く救いたい。ただ、私の中で非常に危惧している部分が急速なデジタルシフトが求められてる中で、頑なにコンピュータとの共存を拒む方も多いと言う事実です。もちろんすべての企業様が…と言うわけではありませんが、「パソコンを持ってない」「pcはややこしいから弄りたくない」というご意見もあり、ここの価値観に対してどう向き合っていくか?が私なりの営業課題だと考えております。

もう一つ問題があります。大手企業では、毎年数百名規模の新卒を採用している会社様も多いですが、中小事業者様だと、人材育成に回す予算がなく、即戦力となる30〜40代を採用したいという意向が強い会社様も多く、そうなると同時に、デジタルに強い人材の確保も難しくなってきます。こうした仕組み・構造的な課題が大手企業と中小企業者様のコンピュータとの共存に対する意識や力に、大きな差を生み出してしまっているのです。

個人組織の意識レベルの課題から構造的な課題まである中で、本書は前者の意識レベルの課題に対して、とてもわかりやすく語られている本だと考えております。もちろん落合さんが語られているコンピュータとの共存課題の遥か手前のハードルが超えられてない会社様も多くあるので、少しでも本書を読み、世の中が大きく変容する中で対応していかなければならない動機づけに繋がればと願っております。

今の時代を捉え、求められる人材の定義をしっかり考える

話はそれましたが、引き続き本書の感想も述べていきたいと思います。

本書の中で落合さんは度々【クリエイティブ・クラス】という言葉を使います。このクリエイティブ・クラスというのは、ブルーカラーやホワイトカラーとは違う、米国の社会学者リチャード・フロリダが考えた、新しい階層のことです。簡単に言えば、「創造的専門性を持った知的労働者」のことだそう。

これからの時代、誰もが共有できる形式知のような代替できるモノは求められておらず、誰も盗むことのできない知識、すなわち「暗黙知」を持つモノが、それを自らの資本として戦うことができると説いております。

私自身、このクリエイティブ・クラスの定義に包含されている能力は新型コロナウィルス前から求められてきた特別なスキルだと考えておりました。世の中を動かすのはこうした特別な才能を持った人で、様々なイノベーションをもたらしてきたのもクリエイティブ・クラスの人々だと考えております。

しかし、新型コロナウィルスにおいて、既存の働き方や社会通念が大きな音を立てて崩れ去る中で、本書でクリエイティブ・クラスと表現されている階層は、特別ではなく【標準化】され、そうでなければ淘汰されていく世の中になっていっている気がします。

処理能力の高いホワイトカラーを目指せばよかった時代には、受験勉強にもそれなりの意味はありました。受験勉強を通じて身についたスキルが、仕事にも役に立ったからです。与えられた問題を解決するだけの仕事であれば、学校の試験と同じで、いろいろな問題の解き方をたくさん知っていればいるほど、処理能力は高まります。実際、業務を進める上で社内の過去の事例を調べる機会もあると思いますが、過去を踏襲するだけであれば、ただ当てはめていく作業にしかすぎません。しかし、クリエイティブ・クラスの人間が解決する問題は、他人から与えられるものではありません。彼らの仕事は、まず誰も気づかなかった問題がそこにあることを発見するところから始まります。それによって生み出されるような仕事は、勉強からは生まれません。勉強は基本的に、誰かが見つけて解決した問題を追体験するようなものだからです。(「働き方5.0」、78-79ページから引用)

以前も別の記事で山口周先生の「ニュータイプの時代」で言われていることを書きましたが、こちらにも問題を解決する能力ではなく、問題を見つける(発見する)能力が問われているとかかれていました。取って代われない【専門性】と【問題を発見する力】この2つは間違いないなく、標準化され求められてくる能力だと思います。

デジタルの波に乗る船と漕ぎ人

ちょっとかっこつけたタイトルにしてみましたが、これからの時代、というか自分の認知が遅れただけで、もうだいぶ前から私たち人と企業はデジタルの波に揺られて、荒波の中を一生懸命漕いでいるイメージです。大きな波(変化)や小さな波(変化)に捕らわれては抜け出し、そう思ったらまた大きな波がやってくる…そんな中で私たちは生きていかなければならないと感じました。

タイトルでは船と人としましたが、船が企業、漕ぎ人は文字通り人(雇用される側)です。企業はデジタルの波に船を壊されないように耐久性をあげ、上手な船乗りが必要です。人は荒波の中の漕ぎ方を学び経験しながら、丈夫な船を選択していく必要があります。

何が言いたいかと言うと、人も企業も変革を求められているということです。そして、双方がそれを意識し、行動に移して初めて、デジタルの波をしっかりと漕ぎ進めていけるのかなと考えています。

昔の企業と人の関係は引き続き船に例えると、大きな海賊船のような乗り物に船長がいて、参謀がいて、航海士がいて…などそれぞれの役割を担う人がいて、残り数十名は船員として、上記で伝えていたホワイトカラーのように「言われたことを完遂する能力」が求められていました。

しかし今の時代漕ぎ手の中の、特に名もなき船員A/B/Cたちは、言われたことを完遂するだけでなく、「なぜさっきの波はうまく乗り越えられたんだろう?どういう波なら乗り越えられて、どんな波ならまだ乗り越えられないんだろう?」「なぜ、この時間にシケが来るんだろう?前も同時刻にきていたけど、何かと関連性があるのかな?」と問題をブレイクダウンしながら考え、学習・研究していく【思考体力】が必要になり求められています。つまり、全員が我がごとのように自分たちに降りかかる出来事や問題を捉えて研究し、成長していかなければならないのです。

そしてその成長に必要なのが、本書では下記のように述べられています。

ですから若い世代は、いま自分がどんな時代に生きているのかを過去と比較して知ることも大事です。昔は何ができなくて、いまは何ができるのかを知らなければ、解決すべき問題を発見することも、そこに文脈をつけることもできません。生まれた時からパソコンもインターネットもスマートフォンもあると、「昔は何ができなかったのか」を直感的には理解しにくいものですが、それがわからないと、20年後30年後にまた別の時代が訪れることも想像できないのです。

時にはデジタルの荒波すら味方につけて大きな航海に出る、そんな人と企業が求められているのではないでしょうか。そして、英語やプログラミング言語を学んで…という話ではなく、思考体力を培い、AIなど(翻訳機器)の力を借りながら、世界中どんな波も乗り越えていける能力を身につけていく必要があると思うのです。

最後に

本書のあとがきで落合さんは下記のように書かれています。

やりたいから、やる。困難は問わないーきわめてシンプルな話ですが、本書で述べてきたとおり、そういう「モチベーション」で動くことこそが、システム的であることと、人間的であることとの違いにほかなりません。どんなに高いスペックとスキルを持つシステムでも、損得関係なく「これをやりたい」というモチベーションは持つことができないでしょう。ですから、システムに「使われる」側ではない生き方・働き方をしようと思うなら、何よりもまず、「こんな社会にしたい」「世界をこう変えたい」という強いモチベーションを持つべきでしょう。何が見えるか、が勝負だと思います。

この考えは非常に共感しました。私自身、テレビ局という大きな看板的企業に新卒で入社。自己紹介の記事でもかきましたが、本当に人とも仕事とも合わずじまいで、就職活動を失敗してます。ただし中途ではありますが、今の人材領域の仕事は社会的な意義という大きな価値から、人材と企業のマッチングに見える人事担当や一人一人の求職者の喜びに繋がる小さな?細かな価値まで楽しくやりがいをもって取り組めており、人と企業を結びつけることで「こんな社会にしていきたい!」みたいなモチベーションは少なからず持てていると思っております。

長くなりましたが、一旦こちらで以上になります。本自体は結構読んでいるのですが、このように人に伝えるための感想は長らく書いてなかったので、見辛い点とかもあると思いますが、最後まで読んでいただいた方はありがとうございました!

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