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不登校と中学受験(15)

テクニックのためにつぶれていく


この問題を解けますか?

(問題)12 %の食塩水 250g と 20 %の食塩水 150g を混ぜると、何%の食塩水になりますか。

これは、ある関西の中堅上位私立中学の入試問題です。


これはとても簡単な入試問題ですから、すぐに解ける子どももたくさんいます。

ご家族は解けなくてもいいのですが、解ける方もたくさんいらっしゃると思います。


これと同じ問題が中学1年生の文章題で出てきます。

その時に、困る子ども達がたくさんいるのです。


私も毎年、この食塩水問題で中1生だけでなく、受験を控えた中3生にも頭を抱えてきました。


中堅上位私立中学の入試問題ですから、この問題の正答率は高いと思います。

これを中学受験大手進学塾に通っている子ども達の中に、「こんなのすぐに解ける!」と言って自慢をする子どもが結構いるのです。


こういう子ども達は、算数は得意にしている子どもが多いのですが、中学に入って、数学になった途端に、あまり成績が伸びないことが多いのです。

中には、数学がわからなくなり、どんどんついていけなくなってしまう子どももいるのです。


それは、「文字式」がわからず、「方程式」を作れないからなのです。


中学受験の一番厄介な科目は「算数」という方も多いと思います。

算数を少しでも楽に、早く正確に解けるようになりたいと、子ども達も思いますし、そうであってほしいとご家族も思うのです。


そこで、進学塾側も「こうしたら解ける!」とテクニックを教えることになります。

この時に、塾の中のクラスによって、なぜこの解き方で解くことができるのかという解説をしっかりするクラスと、解き方だけを教えるクラスとか出てきます。

これは理解度の違いにより、より上位クラスではこのテクニックだけを知っていても解けない問題が出てくるからなのです。

中堅クラスでは、解き方を教えて、それを使えるようにすることが優先事項になるからなのです。

そうすると、テクニックは身につくのですが、なぜ、そうなるのかということを全くわからないまま使っています。


この子ども達が、中学に進学して、方程式で悩むことになるのです。


毎年、このタイプの子ども達を見ていて、受験の弊害はこういうところにもあるなと思わずにはいられません。

この子ども達は、方程式を作れるようになるまでに、時間がかかります。

なぜなら、算数で解いた方が、圧倒的に速いからなのです。

先ほどの問題は「天秤法」という解き方だと、暗算で答えが出るのです。

ところが中学校では、方程式をいちいち立てて、その方程式を解かないといけないのです。

方程式を考えている間に、もう答えは出ているのです。


だから余計に厄介なことになるのです。


私立中学で数学に厳しい先生ほど、わざと問題を解く途中過程を書かせて、方程式が立てられているのか、算数で解いていないか、をチェックされるのです。

なぜなら、方程式で解くことをできるようにすることが、「数学」というものの考え方をしっかりと身につけることに繋がっているからなのです。


今は、小学校の算数にでも、式の中に文字を扱う内容が出てきますが、本格的に数学に文字が出てきて、戸惑ってしまう子どもがいることは、お分かりの方も多いと思うのです。

そして、テクニックが通用しなくなり、なぜ、算数のテクニックで解いてはいけないのか、答えが出るからいいのではないかと、テストの点数や結果がほしい子ども達ほど方程式が面倒に感じられ、わからなくなるのです。

なぜ、そうするのか、どうしてそうなるのか、ということを考えなければいけないのが、中学校以降の「数学」であり、「受験算数」のように正解できたら良いのではないのです。

そのために、同じくらいの学力の子ども達が集まっている私立中学で、勉強について行けなくなり、不登校になってしまうことが、現実問題としてたくさんあるのです。

これは難関中学よりも中堅上位私立中学に圧倒的に多いのです。

本当にできるようになるためには、テクニックを学んだ時に、どうしてそうなるかまでしっかりと理解して、その上で使えるようにならないと、同じくらいの学力の子ども達がほとんどである中学校で、一気についていけなくなり、脱落してしまうことになるのです。


たったこれだけのことでも、不登校の原因の一つになることがあるのです。

そのことも知っておいてほしいと思います。


谷 圭祐
進学塾TMC池田 講師(算数・数学・理科担当)
パーソナルアカデミー カウンセラー、講師
谷圭祐事務所 



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