お一人様専用ブックカフェ「自分を見つけるブックカフェ」を始めた理由
うちのブックカフェには蔵書が1000冊以上あるが、席はたったの6席しかない。その6席全てがお一人席なので、最大でも6人までしか入れない。
席数が少ないのに都会のブックカフェのような時間制限もなく、一人一人が気のすむまで長居できるような設計になっている。
いくつか二人席を作るだけでも売り上げも増え、経営的にも楽になるが、徹底して一人席にこだわった。
なぜそこまでして一人席にこだわったのか。
それは、
「一人でいる時間が人を癒し、ひいては世界そのものを癒すから」だ。
人は気づけば競争や比較のなかに自然と組み込まれる。学校に行けば点数で比較され、職場にいれば仕事の出来で判断され、たとえ何もしていなくても見た目や性格の良し悪しを比べられたり、ただ生きているだけで何かと比較し比較され続ける。
しかし一人でいる時、一人の時間を過ごしている時、人は自分を誰かと比較するだろうか?
しないのではないだろうか。
一人で過ごす時間。自分一人で、自分自身のために十全な時間を使える時、他者のことはいちいち考えない。自分のやりたいことを自分のやりたいようにできる時、他者という存在はいい意味で限りなく薄いものとなる。
その他者が介在しない自分のあり方は、孤独というよりは、「孤高」と呼ぶにふさわしい。大空を優雅に舞う、鷹のような気高い美しさ。
忙しないこの現代社会で、
人と人が比較し合い競争し合うこの世界で、
一人の時間を過ごす大切さを知ることや、一人でいられるという自立した精神を育むことが、何よりも未来のためになるのではないかと思う。
それはパッと見える形で効果が現れるものではないし、即効性のあるものでもない。
しかし、本当の意味で世界や世の中を変えていくのは、そういった地道な変化なのだ。一度に劇的に変わることは、また同様に劇的に過ぎ去ってしまう。少しずつ小さく変わっていったことは、しっかりとこの世界に根付き、力強い土台を作ってくれる。
未来を変えるために、まずは一人の時間を持って欲しい。
うちのカフェにわざわざ来なくたっていい。
1日の中に、ほっと一息つける時間と余裕を持って欲しい。
あなたがつく、その一息が、
忙しない世界にゆったりとした呼吸を送るのだ。
その呼吸はやがて世界全体を巡る風となり、
ゆったりとした優しい雰囲気が世界を包み込むのだ。
それが僕の夢であり、
「自分を見つけるブックカフェ」がある意義なのだ。