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蔵書問題を解決し住まいの顔になる本棚

新築にしろ、リノベーションにしろ、
空間に調和した家具をしつらえたい。

比較的、造作家具のデザインは得意なので
日頃の仕事でも提案して図面まで起こしても
それなりに費用はかかりますので、
なかなかすべてを実現させるのは難しいです。

それは、私とて同じでした。

とはいえ、それでも既製品では難しいものはありますので、
これだけは!を吟味します。

蔵書問題解決のための本棚はマスト!

その中のひとつに本棚があります。

夫婦とも読書が好きで本が多いので
書庫をつくろうかとも考えましたが、
限られたスペースを考えるとそのような個室はつくれない。

そして、本は重い
特に私の本は写真集が多いため特に重い。
そのため、既製品の本棚では
すぐにひずんで壊れてしまう経験を度々してきました。

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ひずむ既製品の本棚。。

この2点で造作本棚はマストでした。

中途半端なものだと「安物買いの銭失い」になるのは必至だったので、
ここはじっくりと考え、迅速に設計しました。

住まいに寄り添う本棚とは?

スペースも限られていますので
本をしまい込むのではなく積極的に見せて本棚が居間の中心となる
アイテム
としてとらえました。

そして、重量に耐えられること。

あとは、いかにもデザインしました!と主張はほどほどに
あっさりとしたもの

でも、きちんと設計してる感も出したいな。
(私の設計は往々にしてこういうものかもしれません。)

本棚の設計概要

本がずらっと並んでいるイメージを重視したいと思いました。
となると、縦板で分断されるのではなく、
板材がすらっと流れているくらいがいいかなと。

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板はできれば無垢材がいいかなー
と思っていましたが、
・そこそこ値が張る。。
・横に流れる板なので、暴れる(うねる)かもしれない。
 すると、本が入らなかったりするかも。。

という、理由で素材はパイン集成材とし、厚みは36mmと厚めです。
集成材なので強度は高まります

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そして、これには染色塗装しました。
木目を活かしつつ、色を染めるものです。
これは、ゆくゆく憧れの家具になじみつつ、アクセントになるように。
(気の色合いについては別の機会に)

概ね建具枠の見つけ寸法と同じなので空間は整って見えます
幅は大体3mくらいで圧巻です。
(枠についてもいろいろ考えました。それは別の機会に)

壁と棚との取り合いは、
結局本で埋め尽くされるので、そこまでこだわらないにしても、
金具のステー(取付金物)だと本に傷がいったり、
それをよけると収納量が減るし、見た目も抜けた感が目立ちそうです。

なので、棚と同材で、しかし縦枠がみえないようなしつらえにしました。

そして、本のサイズは大体決まってくるので、
できるだけそのサイズに合わせました
そうすると、整頓もしやすいし、収納量も増えます。
見た目もよし。

そしてそして、板並べただけの本棚では芸がないかなと思い、
一部は棚の奥行きを逸脱させて立体感を持たせました。

下部は床から40cm程度にすることで
TVボードにもなるし、テーブルにも、ベンチにもなりました

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本以外をおいてもよし

上部はキャンチレバーになっているので、より板の線形が強調されます。

で、実際はその分本が置けるということであり、、、
すっきり感を維持するのが至難です。。

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スペースがあれば、ある分だけおいてしまう。。

10年経った本棚のいま

しっかりした材を選定したおかげもあって、
10年経ったいまもたわむことなく居間の顔としても健在です。
いまはTVは自立ラックにしていますので、
すっきり感はより出てきました。

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そのおかげでいまは私だけでなく、
画を描いたりブロックで遊んだりと
子どもの居場所にもなっています。

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難点をいえば、いわゆるLDK的空間なので、
キッチンの油など直接はつきませんが
空気の汚れがつきやすいかもしれません。

等身大で成長していける空間を。

家具に限らず、
何らかの問題を解決するために設計したことが
その解決以上に他の豊かさをもたらすことがある
と実感できた箇所です。

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ここでは、蔵書問題がきっかけでした。
それを解決するための本棚でしたが、
いまや住まいの顔になっています。
本が置かれ、気軽に読書するきっかけをつくり、
また本以外でも使い関わりをつくっている。
空間が豊かになっています。

無理な背伸びはしない、だけど今の自分の背よりも
ちょっと上の幸せを感じられる場所。

そんな場所を設計していきたいですね。

【追伸】
この本棚は建築知識2019年3月号「図解リノベーション大百科」
取り上げられました。


詳細はこちらから


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