販売戦略会議?vol.1

『ボジョレーの予約販売をしましょう。』

ビッグスマイルに入社10年のソムリエ佐藤君から提案があった。正直なところ、ボジョレーやノベッロの販売にはあまり乗り気ではない。
何故なら…

“全く魅力を感じなーい。”

言ってしまった。
ワインを扱うお店を経営している社長として決して見逃すことのできない、そして生産者や酒屋さんを敵に回してしまうような失礼な発言をしてしまった。
しかしワインを扱うお店の人達の中にも僕と同じ気持ちの人がいるのではないかと思っている。
コンビニやスーパーもボジョレーの季節になると必ず販売する。当然年一回のイベントなので、そこでの売上を上げるためには当然必要なことではある。
酒屋もインポーターもこの時期に売れる可能性があるものを売らないわけにはいかない。さらに生産者との付き合いもあるそうだ。

ただ、仕入れ価格は決して安くない。ここが問題だ。
飲食店をやっていたら、もっと美味しく、コスパのいいワインはたくさんあるにもかかわらず、この時期になるとボジョレーを売るために粗利を減らし、なんとか完売させようとキャンペーンを打ち、憂鬱になる時期だ。

余った瞬間に、不良在庫となり、料理酒にまわりすることも多く、色んな意味でもったいないことが起こってしまう。

そんなボジョレーを佐藤君が売りたいと言ってきた。なぜだ。あいつも僕と同じ気持ちだったはずだ。
恐る恐る彼の話を聞いてみた。


『自然派ワインのボジョレーはいつものボジョレーと違い、寝かせることで味が変化し、面白いんです。』
声が小さい。自信が無いのか?思い出した。彼はもともと声は小さい。


彼の自然派ワインに対する情熱と、このボジョレーの魅力を聞き(詳しくはインスタ・フェイスブック・店頭で)、『確かにこれは価値があるボジョレーだ。お客様に価値を伝えることができれば、感動してくれるはずだ。是非売ろう。』と決めた。

とはいえ、そもそもビッグスマイルストア(小売店)を開いてわずか1年。予約販売のノウハウなんて全くない。さらにどれくらい売れるかもわからない。運が悪いことに『受注発注』である。つまり前もって発注して、11月の解禁日に商品が届く。商売としてはとても難しい。

このボジョレーを販売するために、そして予約を取るためにどうすればいいのか。

やっと出番がやってきた。大学院で学んだ『マーケティング』というものをここで活かしてやろう。へっへっへ。

さあ、考えるぞ。と思った矢先。仕入れ業者さんから連絡があり、すでにボジョレーの予約販売終了したそうだ。佐藤から報告があがった。
売れると思ったので、大量に発注しました。
おいおいおい。待て待て待て。まだ考えてなかったぞ。そして戦略まだ立ててないぞ。

しかし売らなくてはいけない。いや、絶対売れるはずだ。まずはそう思う事。これが大事なことだ。
そもそも普段のボジョレーとは違い、確実に価値の高い商品だ。心配することは無い。
そう思いながら不安も大きい。
ただでさえ飲食店が大変で利益が出ていない状況で、大きな損失はしてはならない。
しかし佐藤は俺にこう告げた。
『このボジョレーはすぐに飲んでも美味しいですが、寝かせたらもっと美味しくて価値が上がります。』
なるほど。という事は多少売れなくて余ったとしても問題はないな。
覚悟は決まった。予約で全て完売しよう。お客様に素晴らしい体験を提供しよう。

その夜、ボジョレー販売会議を開いた。
広報担当窪田(加奈ちゃん)・中野店店長佐藤・そして社長の俺。3人で中野の事務所に集まった。車の中でよく考えたら、このボジョレーの販売戦略自体関わってなかった。反省しながら中野に到着。車の中ではこの販売戦略を何があっても成功させることで、クリスマス予約販売、年末商戦に繋げていきたい、そして彼らに成功体験を積ませてあげたい。そのためにとにかく今日の販売会議では、『絶対やれる』という気持ちにさせなくては。そう思いながら、青梅街道から天沼通りを抜け、早稲田通りで中野新井にあるビッグスマイルストアに向かった。

まずは情報収集。佐藤からこのボジョレーの話を聞く。マーケティングでよく言われている『STP&4P』にあてはめながら話を聞いた。みんなの頭を整理しながら戦略練るのにはもってこいのフレームワークだ・・・とか言いながら正直それがいいか悪いかよくわからないが、とりあえずそう言えば、みんなから『すげー』って思われるのではないか。完全な私心である。これじゃあよくは無い。
4Pとは、どのような商品を、どのような価格で、どのように宣伝し、どのように販売していくのかという、マーケティング手法のひとつで、それをどのような属性を持つお客さんに売っていくのか、という事を整理して、商品や販売方法などの矛盾は無いのか、これで売れるかをのかなどという事を検証する際に用いるものである。
ただ正直なところ僕はあまり好きではない。お客様視点より企業目線で商品を売ろうとしている感じがするからだ。

先程の佐藤の話を簡単にまとめると
Product(商品)…今までのボジョレーとは違う、寝かせることもできる価値あるワイン
Price(価格)…いつものボジョレーよりは値段が1.2倍ほど高い
Promotion(宣伝方法)…SNS・店頭・チラシ・ポスティング等
Place(販売ルート)…店頭での予約・SNSでの予約/店頭受取・配送

S(セグメンテーション)…ワインに興味はない/価値あるワインに興味がある人/マニア級に詳しい人
T(ターゲッティング)…価値あるワインに興味があり、毎年のボジョレーに対し違和感を感じている人
P(ポジショニング)…コンビニ・スーパーよりも高いがそれを上回る価値がある

さあ、ここからどうやって売っていくか。佐藤と加奈ちゃんの3人での販売会議が始まった。


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