旅をしながら仕事をする"家族ノマド"を実現された (株)ベビログ 代表取締役 板羽宣人さん
"家族を幸せにしたい" という一貫した想いと覚悟をもって、事業を軌道にのせ「家族ノマド」という理想的なライフスタイルを実現された 板羽宣人さんにお話を伺いました。
(※家族ノマドとは、板羽さんが作った造語であり、家族で季節やその時々の情勢に合わせて一定期間住む場所を変える生活のこと。)
プロフィール
出身地 大阪府
経歴 1974年生まれ。関西大学社会学部産業心理学科卒業。地方公務員を8年勤めたのち 2006 年起業。2007 年、子どもの成長記録に特化したブログサービス「ベビログ」を立ち上げ、2012 年に事業譲渡。
現在の職業および活動 株式会社ベビログ 代表取締役。現在の主力事業は e コマース。オーダーメイド商品に特化したメモリアル商品を扱う7店を運営。その他、電子書籍出版事業、個人としてWeb 戦略に関するコンサルティング事業も行っている。また、季節に合わせて家族で住む場所を変えるライフスタイルである家族ノマドを実践。
記者 よろしくお願いします。
板羽宣人さん(以下、板羽) はい。よろしくお願いします。
「家族を幸せにしたい」
記者 板羽さんは、現在はどのような事業をされているのですか?
板羽 今は、eコマース事業としてネットショップをいくつか運営しています。その中でも主力事業となる「テディベアタイム」というネットショップは、お子さまが生まれたときの体重でつくるオーダーメイドの体重ベアとウェイトドールを扱っています。それ以外のネットショップも含めて、すべて家族の思い出を形にするメモリアル系のものばかりです。メモリアルなものを形として残すことで、よりリアルに幸せな瞬間を追体験してもらいたいという想いが、eコマース事業をはじめるに至った経緯です。
記者 その想いの背景をもう少し聴かせてください。
板羽 もともとは、幼少時代、家族の仲がよくなかったことが背景としてあります。自分は幸せな家庭を築きたいという思いが強く「安定=幸せ」という安直な考えではじめは公務員になりました。吹田市(大阪)の職員として、約8年間勤務した後に独立をしました。
記者 なぜ公務員から独立して起業しようと思ったのですか?
板羽 安定した生活は手に入りましたが、その後、公務員という仕事にやりがいを見い出せなくなったこと、それと、インターネットの可能性にいてもたってもいられなくなったからです。
当時、ヤフオクをはじめて知り、いらないものがすごく高い値段で売れて、商売のおもしろさを知りました。あとは、自分が立ち上げたテニスサークルでメンバーを集めたときに、インターネットを使ったらとてもおもしろい人たちが集まったのです。当時はまだ2000年、雑誌でサークルメンバーを募集するのが一般的だったので、インターネットの可能性にとてもワクワクしました。
学生時代の友達は、私が独立したことを知るとむちゃくちゃビックリします。目立たない存在で人前に立って何かをすることは全くありませんでした。それに自分でも、そんなことができるなんて、当時はとても思ってはいませんでした。
ヤフオクとテニスサークル、そして、インターネットによって、自分の思い描いた理想を創っていく楽しさに気づいたことが、自分のなかで大きな起点になりました。
「家族ノマドというライフスタイル」
記者 板羽さんは、世界のさまざまな場所で「家族ノマド」を実践されてきたそうですが、そのきっかけは何だったのですか?
板羽 私は、これまで、北海道ニセコ、沖縄、ハワイ、フィンランド、エストニア、オーストラリア、ニュージーランド等で「家族ノマド」を実践してきました。
きっかけは、その前年に夏バテをしてしまい、何でこんな暑いところで仕事をしているんだろうって疑問を感じたのがはじまりです。翌年には絶対にクーラーのいらない涼しいところで仕事をしようって決めたんです。
弊社はサイト運営を主な事業としているので、基本的に普段からどこでも仕事ができる環境にはなっています。ただ、はじめてやるときは、本当にできるのかな? 拠点を離れて売上は落ちないかな? と不安もありました。
記者 一番印象的だった場所は?
板羽 フィンランドですね。30日間行って嫌なことが一つもなかったからです。ふつう海外旅行に行ったら、文化が違うので、嫌なことの一つや二つくらいは必ずあるじゃないですか。それが全くなかった。それは妻や息子とも一致した意見です。フィンランドは夏の期間が短いので、特にそうだったのかもしれませんが、とにかくみんな幸せオーラが満載なんです。
記者 一番印象的だった思い出は?
板羽 2011年にはじめて北海道ニセコに行ったときです。家族ノマドは、平日は普通に仕事もしますが、週末は家族で楽しく過ごします。ある時、撮り溜めた写真をスライドショーにして家族で見ていました。楽しく過ごした時間を振り返り、家族みんなが大笑いしてそのスライドショーを見て何とも幸せな時間を過ごすことができました。それを思い出すと胸が暖かくなり、まさにこの瞬間が家族にとって、そして、私にとって幸せな瞬間だと気づくことができたのです。
起業して間もない頃は、寝る間も惜しんで仕事をし、家族との時間がなかなかとれず、家族を幸せにすることとの矛盾に苦しんだ時期もありました。でも、家族ノマドがそれを解決してくれ、自分にとって何が幸せかを気づかせてくれました。
記者 「メモリアルなものを形として残す」今の事業につながるエピソードですね。
「息子には覚悟できる人間になってほしい」
板羽 家族ノマド中に息子は色々な試練が与えられます。
例えば、彼が小学3年生のときにハワイに行ったのですが、自分で滞在中の目標を決めさせました。彼は英語がぜんぜん話せなかったのですが、外国の友だちをつくるという目標を決め2日間でその目標を達成したこともありました。ニュージーランドでは、日本人が誰もいない現地の学校に一カ月間も放り込まれたり、フィンランドでは、ちょうどポケモンGOがリリースされたこともあり、ポケモンGOをしたければ、一日一人ポケモンGOを使って現地の人と交流するという課題を行いました。ちょっとハードルが高いかなぁと思いましたが、息子は勇気を振りしぼって何人もの人に話しかけることができました。
記者 なぜ試練を与えるのですか?
板羽 覚悟できる人間になってほしいからです。こういうことは覚悟を決めないとできないことですし、この先、何をするにも覚悟は絶対に必要だと思うからです。覚悟がなければ中途半端になり、何ごとも成し遂げることはできません。
公務員を辞めるときも相当な覚悟が必要でしたし、家族ノマドを最初にやるときももちろん必要でした。
でも逆に、覚悟さえ決めれば何ごとも何とかなるんです。
その結果、中学3年生になった今では中学生だけでフィンランドのゲーム会社に企業訪問したり、大学生に混じってカンボジアでインターンシップを体験してくるなど行動できるようになりました。
◇息子さんのブログ
「暇をつぶせる能力」
記者 これからのAI時代に求められるニーズは何だと思いますか?
板羽 暇をつぶせる能力じゃないですかね。私は、人生って突き詰めると暇つぶしだと思っていて、その中でも仕事は一番おもしろい暇つぶしだと思っています。
AIが発達すると、間違いなく暇な時間が増えると思うんですが、そうなったときに日本人ってすごく苦労すると思うんです。みんな暇をつぶすのに慣れていないから。
今みんなが遊んでいるものって、ディズニーランドとか、カラオケとか、つくられたものの中で遊ぶんですけど、そういうのってすぐに飽きちゃうじゃないですか。一方でフィンランドに行くと、そういうところはあまりないのですが、みんな公園でピクニックをして楽しんでいるんです。夏の間のためだけに小屋を建てる人もいてるそうです。
つくられた用意されたもので楽しむのか、自ら創造して楽しむのか、その違いだと思います。
そして、仲の良い友達とか、共通した思いをもつ仲間と過ごす時間がますます大切になってくると思います。
「今年はキャンピングカーの年」
板羽 今年はキャンピングカーがテーマの年なんですよ。キャンピングカーで旅をしながら仕事をしてみたい。
早速2月には静岡に行こうと思っています。夏には北海道にも行きたいので、それを考えるとワクワクします。仲間と一緒に全国に行けたら楽しいでしょうね。
自由に動けて一緒に楽しめるような仲間をたくさんつくって、色んなところに行って、楽しみながら仕事をしてみたいですね。家族ノマドのように、家族だけで移動するのは、ぜんぜん問題ないんですけど、これからは家族だけではなくて、もっと幅広い仲間と一緒に移動したいですね。
人との交流や関わりが楽しいので、例えば、どこへ行っても迎え入れてくれる人たちがいて、逆にこっちにきたら迎え入れてあげる。全国、全世界に、迎え、迎え入れてくれる環境をつくることができたら、今後の人生、楽しいことは間違いないだろうって思います。
記者 家族の概念が拡がっているようで、この先、家族ノマドがどう進化していくのか楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
板羽宣人さんに関する情報はこちら
↓↓
◇自己紹介ページ
◇株式会社ベビログのホームページ
【編集後記】
今回、インタビューの記者を担当した、見並、山本(カメラ)です。
家族を幸せにしたいという一貫した想いによって、自分の思い描いた理想を実現させていく、板羽さんの芯の強さを感じました。そして、これからは家族という概念が拡がって、たくさんの仲間たちと一緒に新しい「家族ノマド」として、楽しくお仕事をされている姿が浮かんできました。ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?