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高人さんが猫になる話。

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呪いで猫にされた西條さん。行方不明になってしまうも事務所は公表全部ず内密に捜査を開始。東谷自らも探し回るが見つからず…そんな時、東谷は1匹の猫と出会う。
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高人さんが猫になる話-if-

14話の事後からの分岐です。 ―――――――――― 高人さんが人に戻った。 戻ってすぐに存在を確かめるように彼を抱いて、彼は今、俺の腕の中で眠っている。 でも、このまま俺が眠ってしまったら、また猫に戻ってしまいそうで…。不安から、ぎゅっと抱きしめる。 俺だけ置いて先に逝ってしまうような存在にならないで。どうか…。 「高人さん…。」 急に睡魔に襲われる。 いつもなら夜通し起きてるなんてなんとも無いのに、何かに眠らされるように、すぅーっと眠ってしまった。 朝日の眩しさに俺

高人さんが猫になる話。後日談3日目

次の日は、体の負担を考えてチュン太の部屋で1日ゆっくりと過ごす事にした。 本を読んだり音楽を聞いたり。 昼下がりの暖かい陽気がリビングに差し込み心地よい眠気を誘う。 チュン太も隣で台本を読み込んでいる。ぴたりとくっ付いているので温かい。 「お前、仕事は大丈夫なのか?」 「はい。調整してもらってますから。俺も高人さんがお仕事の日からです。CMの撮影2本と雑誌インタビューと、ラジオゲストですね。」 「…多くないか?」 「そんな事ありませんよ。夜遅くなるかもですが、高人さんはちゃ

高人さんが猫になる話。後日談2日目

後日談2日は、性的な描写を含みます。苦手な方は回れ右ん推奨致します。大丈夫な方のみ先にお進み下さい。 誤字脱字申し訳ございません! アトデシュウセイシマス^^; ーーーーーーーーーーーーー 「高人さん、そういえば…なんですけど、」 佐々木が来たその晩、2人でベッドに入り雑談していると、ふと思い出したように俺、東谷准太は、隣でゆったりと読書を楽しむ西條高人に問いかけた。 ん?と、雑誌から目を離し俺を見つめてくる高人さんのなんと可愛いことか。 「あの、お仕置きモードの

高人さんが猫になる話。-後日談1日目-

「…と、いうのが今の現状ですね」 人間に戻れて次の日だ。 東谷に説明を受けて項垂れる。 「は――――――――…っ」 頭が痛い。 リビングのテーブルに手をついて、頭の前で手を組んで視線はテーブルの下。 どうしようか…。 西條はかなり大事になってる自分の失踪の現状を知った。 「まぁでも、世間的には体調不良で通ってるんで炎上とかは無いと思いますよ?」 何をそんな思い詰めてるのかと、東谷はキョトンとする。 「いや…そうじゃなくてだな…」 猫になってたなんて誰が信じるんだよ。

あとがき。

高人さんが猫になる話。最後まで読んで下さりありがとうございました! このお話は、Twitterに妄想としてチラッと書いた事にフォロワーさんからご興味を持って頂いた事がきっかけで書き始めました。 チュン太くんを翻弄したい一心で筆を進めてきたのですが、きちんと文章が書けていたかは不明です笑 イイネやリツイートをして下さった皆様、noteでフォローしてくれた皆様、また、温かいコメントや、スキを送ってくださった皆様、反応してくれた方々、皆様のおかげで素人の書き物ではありますが、完成

高人さんが猫になる話。14

14は、性的な描写を含みますので、苦手な方は回れ右を推奨いたします。大丈夫な方のみ、先にお進み下さい。誤字脱字ご容赦ください。 よろしくお願い致します。 ――――――――――――― 「チュン太…苦しいッ…はなせ!」 「嫌です。」 ぐりぐりと首筋に顔を埋めてくる。 「高人さんは分かってない。」 「何がだよ!」 「他なんて無いです。」 「分かんないだろ…そんな。俺が居なくなったらお前だって変わる!」 「変わりませんよ。」 東谷が顔を起こし真っ直ぐに西條を見つめる。 一点の

高人さんが猫になる話。13

13は、性的な描写を含みますので苦手な方はこのまま回れ右を推奨致します。大丈夫な方のみ先にお進み下さい。 誤字脱字、ご容赦下さい。 よろしくお願い致します。 __________________________ チュン太、驚いてるな。ふん。 気を抜いたら、すぐに主導権を奪われてしまいそうに思うのは、いつもこういった駆け引きに惨敗しているからだ。俺はプライベートでのハプニングに本当に弱い。だが役者としての自分なら? 自分を、別の何かとして演じてしまえば恥ずかしくないんじゃ

高人さんが猫になる話。12

ちゅん太が浴室に行ってしまった。 俺は特にする事もなく、その場で横になる。 猫の性か、モフモフしたラグマットをパシっと叩き、毛を押さえ込んでは元に戻ってきた毛をまた反射で押さえ込んで遊ぶ。身体が勝手に動いてしまう。 ふと、パタンと硬い感触がする。 手をおいた先にちゅん太が置いて行ったケータイがあったようだ。 起き上がり座って画面を見てみる。 鍵をかけ忘れたのか待ち受け画面が表示されていた。 猫の手でも開くもんなんだな。と、なんの気無しに、写真ホルダーを開いてみる。 そ

高人さんが猫になる話。11

「ふ――――――…。」 浴室の鏡で自分の顔を見る。熱に浮いた雄の眼光がこちらを睨みつけていた。 こんなんじゃダメだ。 気を抜いたら高人さんを壊してしまう。今の彼は非力で弱いただの猫だ。 まだ何も終わってないのに、俺は何を浮かれているんだろう。 冷水のシャワーを頭から浴びて熱を冷ます。 覚めていく思考は別の事に使う。 高人さんの今の状況は人が成しえるものではない。なら原因はなんだろうか。高人さんともっと話せれば、言葉を交わせたなら少しは現状がわかるのではないだろうか

高人さんが猫になる話。10

ちゅん太がようやく俺を認識してくれた。 タクシーに乗ると分かると、逃げたいような嫌な気分になる。タイヤの音が嫌いなのだ。あと揺れも怖い。 でもこれに乗らない事には帰れないのだから仕方がない。 ちゅん太の膝で大人しくしておこう。 「…――――動物病院へお願いします。」 ん?病院いくの?…なんで?耳をピンとたててちゅん太を見た。 気づいたのか、こちらに微笑んでくる。 「だって、1週間お外で暮らしてたじゃないですか。健康診断ですよ。」 なんだ、健康診断か。 ホッとして、返

高人さんが猫になる話。9

黒猫さんが高人さんだと分かったのは良かった。 また自分の腕の中に戻った事も本当に良かった。だがそれ以外は何も解決していない。これからだ。ため息が出る様な現実ではあるが…。 今は、この沁みわたる温もりを、喜びをただ感じていたい。 今後については後ほどゆっくりと考えよう。もう愛しい人は腕の中にいるのだから。 東谷は、黒猫を腕に抱き、到着したタクシーに乗り込んだ。 「どちらへ?」 運転手がバックミラー越しに聞いてくる。 まずは…。 「最寄りの動物病院へお願いします。」 高人さ

高人さんが猫になる話。8

ここ数日、ちゅん太は毎日のように逢いにくる。何をするでもなく、手土産に水とご飯を携えて、ただ隣に居る。一日中。 こいつは、俺を探さないで猫の尻ばかり追いかけて何してんだ! いや、俺が西條高人である事は間違いないのだが、どうも気づいてる様子はない。無いのに毎日やってくる。 猫になって5日目、1日も欠かさずやってくるこの男に苛立ちを感じていた。そんなに猫がいいのか。俺の事はお構いなしか! 自分自身に嫉妬など己の尻尾を追いかけて捕まえようとするくらい愚かだ。そんな事分かっている。

高人さんが猫になる話。7

東谷のマネージャー、田口守は心配だった。あれだけ仲の良かった日芸の西條高人が姿を消して、1週間が過ぎている。東谷くんは1人でぼーっと外を眺めている事が多くなった。話しかければ返事はするし、仕事も完璧にこなし、天使スマイルは健在なのだが、少し目を離すと外の見える場所を眺めている。 やっぱり心配だよな…。 佐々木さんもトータカが戻ると信じて、スケジュール調整や挨拶周りをしているみたいだが、少し痩せたように見えた。 東谷くんは大丈夫だろうか…。あまり仕事は詰めないよう、夕方には

高人さんが猫になる話。6

猫は本当に繊細だ。どんな些細な音でも聞き分けて次のリスクを考える。行動も早い。 西條は自分が猫の身体と本能に振り回されているかのような奇妙な感覚に陥っていた。実際、思考が猫寄りになっている。本能が強いのだ。 ちゅん太のそばを離れてしまった。 でも、しばらくは戻れない。人の気配が多い。 (戻らなくても良いんじゃない?自由に生きればいい) 縛られる事を嫌う本能が首をもたげる。 いや、ちゅん太にはまた逢いたい。 とりあえず、もっと静かな場所に身を隠そう。 西條はゆっくりと