見出し画像

「心」が生みだす競争優位

今週は、お客さまと立て続けに戦略合宿を行っていました。飲食業のお客さまです。

同社は、「人が作って、人によって喜ばせる」ことを大切にしています。そのため、自動化・機械化は極力避け、手で作ることにこだわっています。

たしかに、飲食業界は、人手不足です。機械化・自動化が進んでいます。それでも外してはならない本質は、お客さまを味やサービスによって喜ばせることです。あそこに行って、また食べたい、楽しい時を過ごしたいと思ってもらえるかどうかを大切にするべきだと思います。

とはいえ、ジレンマもあります。人が作ることにこだわるがゆえに、人任せになってしまうのです。

もちろん、マニュアルはあります。しかし、現場は生き物です。食材・天候・季節・旬といったナマモノを扱っています。提供しているのは、手作りの一品です。職人の経験値が活きる場面も多々あります。それは大切な武器です。しかし、いつも悩ましいのは、属人的になってしまうこと。人手も不足する中、結果として品質がばらついてしまいます。

この状況を「所詮、そういうものだ」として、済ませてしまうこともあるでしょう。人は弱いものです。だからこそ、お客さまを喜ばせたいという思いを原動力に品質向上を「徹底」できるかどうか、そうしたマインドが競争優位を生みます。

同社は、サービスを提供する業態やエリアごとにグループ会社に分かれています。中核となるグループ会社は、コロナ禍にありながら最高益を達成するなど絶好調です。

その理由は、品質向上の「徹底」にあります。属人的になりがちな料理の手順を可視化し、標準化を進めています。単に手順を同じにするだけでなく、どういう手順をとると味が良くなるのか、品質をチェックし、プロセスの改善を進めています。また、人材育成にも力を入れています。グループ本部の研修プログラムへの参加率や資格試験の合格率もダントツです。

レシピを作り、手順をマニュアル化することは、どの会社もできます。しかし、ほとんどの会社がそれを「徹底」することができません。結果、そのプロセスを機械に任せるようになります。

それは確かに効率的でしょう。味もどんどん良くなるかもしれません。
でも、本当に味覚だけで私たちは食事を楽しむのでしょうか。人の手による、心のこもったサービスがあるからこそ、美味しく楽しい時間を過ごせます。

そうした品質向上の原動力は「もっと良いものを召し上がっていただこう」という誰しもが持っている思いやりの心です。

合宿では、彼らに対してこんな質問もありました。
「手順を可視化すると、ライバルに真似されませんか。」
それに対する彼らの回答に鳥肌が立ちました。

「心は盗まれません」

いくら手順を真似しても、より良くしよう、喜んでいただこうという思いがなければ機械と変わりません。人手が足りず忙しい現場においてもその気持ちを忘れないこと、それが他のグループ会社との結果の違いに表れています。

グループの中でもダントツの彼らは、合宿の中でもあいさつや返事、傾聴の姿勢、発表の力強さなど、素晴らしい行動が際立っていました。戦略合宿といいながら、戦略以上に実行力やそれを支えるマインドが大事だと再認識させられました。

お客さまを喜ばせようと創意工夫すること、それが仕事の喜びであること、これをコンサルタントとしてもっと伝えていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?