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【読書メモ】THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

やっぱり、素直で謙虚ってことかな。

本書は、私たちが陥りがちな建設的ではないコンフリクトについて様々な示唆を与えてくれます。

読みながら反省したのは、自分の「思い出し怒り」です。誰かとのやり取りを思い出して、「あんな言い方しなくたっていいだろうに」「そもそも言っていることがおかしい」などなど後から思い出して頭に来てしまいます。

これはヘルシーじゃないですよね。何も解決しないし、不毛だし、疲れます。その場で、互いに再考(Think Again)をする機会を持たずに済ませてしまっているのだと思います。

科学者モードで考える

下図は、本書にでてくる私たちの思考モードです。

大変雑に言ってしまうと「科学者モードで行きましょう」というのが本書の考えです。主観で決めつけずに、実験して確かめればよい。

自分の考えを持つことは大切です。でも、それ以上にいつもと違うことを学ぼうとする姿勢が大切なのだと思います。それによって、思考停止を防ぎ、価値観も異なる相手から学び、変わることができます。

埋もれてしまっている「共通の基盤を見出す」という人間の知性

一番、印象に残ったのは下記のくだりです。

 百億の文例を研究した後、コンピューターは冗談さえも言えるようになった。これは、ハイレベルな社会的知性と感情的知性を有する人間だけに限られると一般的に信じられていたスキルだ。コンピューターは筋の通った主張をし、相手の反論を予測することさえもできるようになった。それにもかかわらず、相手との見解の一致点を見出す方法を習得していなかったのは、人間が書いた四億の文献の中に、そのような行動パターンがほとんど示されていなかったから、ということは明白だ。記事や論文はたいてい、自説を強調し、他説の欠点を指摘し、もっともらしい論拠を挙げて他説の支持者をこちら側に引き寄せることばかりを重視しているからだ。

『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』アダム・グラント

これは、コンピューター(人工知能)と人間がディベートをしたときの話です。ちなみに人間の方はディベートのチャンピオンです。

勝負は人間の勝ちでした。勝敗は、両者の討議を見ていた観客が決めます。チャンピオンは普段のディベートでもするように、相手との共通点を見出して論点を観客に問いかけました。

一方、コンピュータにはこの行動がありませんでした。人間に勝る圧倒的な情報量で相手を論破しようとします。実際、ディベート後のインタビューでは、観客はコンピュータの方から多くを学んだと答えています。しかし、ディベートでは負けました。

チャンピオンは論点を観客と共有し、論拠を絞って示すことで、ディベートを聞いている観客自身が、納得して論拠を選択できる状況をつくりました。つまり、多くの情報を得るよりも、チャンピオンの行動によって自分の考えを「再考」し、新たな発見ができたと観客は評価したのです。

ちなみに、ディベートができるほどの知能を持つコンピューターが、観客への問いかけをしなかったのはなぜだと思いますか?
それは、コンピュータが学んだ大量の記事や論文は、自説を強調し、他説の欠点を指摘するというものばかりだったからです。結果として人工知能は「相手との見解の一致点を見出し提供する」ということを学んでなかったのです。

再考サイクルと過信サイクル

ディベートはダンスのようなものだと本書では表現されています。
対話するダンスパートナーがいるのは有難いものです。異なる考えを持ちながらも、共通の基盤を見出そうとする謙虚さが互いの発見を促します。これを本書では「再考サイクル」と呼んでいます。

一方で「過信サイクル」と呼ばれるものがあります。私たちは「自尊心」や自分の信念を変えようとしないバイアスを持っています。結果として知識量としては学んでいても、新たな発見をしていないために本質的には学んでいないことになります。

私たちの知性を支える仕組みは、いつもこうした裏表があります。多くは時間軸の違いです。短期的には確信も必要です。短期的には迷っていては成果を逃します。しかし、それだけでは過信になります。「いつも通り」に拘泥していては、進歩がありません。ときには立ち止まって「アンラーン」することが求められます。

優れたダンスパートナーになりたい

私が、コンサルタントとして、大切にしたいと思っていることもまさにダンスパートナーのような存在です。お客さまの課題に対してソリューションを出すだけでは足りないのです。なぜなら、実行し結果を出すのはお客さま自身だからです。

ディベートを聞いていた観客同様に、多くのことはコンピューターから学ぶ方が速いでしょう。それよりも、お客さまが向き合うべきことに向き合うような働きかけが大切だと考えています。お客さま自らが考え「いつもと違う」ことに一歩踏み出せたという実感がない限り、ソリューションの実行が徹底されません。

私自身は、そうやってお客さまから学ぶことで、次のお客さまへ貢献することが可能になります。謙虚に素直に学び続ける「再考」サイクルを日々実践していきたいとあらためて思いました。


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