もし自分が魔々勇々の編集だったら

魔々勇々の魅力全般は↓の記事で

※以下の記事は、第4話時点での記事なので、以降の情報は反映されていないことにご留意ください。

魔々勇々が面白い。
第1話から毎回感想を書くくらいには楽しんでいるし、今後にも期待している。

各話感想
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話
第9話 第10話 第11話    第12話 第13話    第14話    第15話    第16話    第17話

現在第4話(第5話以降は更新後にその都度↑に付け足し)
このままの調子で進んでくれれば満足なんだけど、期待込みで面白いと思っている部分もある。
期待している部分も踏まえ、「こうすれば売れる」ではなく、「こうすれば自分にとって最も面白い」という視点から魔々勇々を考えてみたい。
タイトルは「編集だったら」としたが、思えばこの視点は編集失格か。

①今までで良かったところ②自分が漫画に求めているもの③魔々勇々に期待することの順に考えてみる。

今までで良かったところ

ここまでの展開で惹きつけられたのはマママというキャラの存在と、エリシアの登場と、魔王勇者がいる世界でのコルレオの成長。

マママ

母+魔王という設定だけならそこまでの独自性はないが、魔王の要素は形式的であり、「母」という要素を徹底しているところが珍しい。
38歳、作者の強みを生かした年齢ガン無視のかわいらしい見た目、交際経験あり、ギザ歯と食いつきたくなる要素が盛り沢山なのはもちろんだが、中身が伴わなければキャラの魅力にはつながらない。
1話の

悲しみが先に立って強い言葉が出ない

とか、2話、3話の

世界じゃなくて息子が大切
完全にただの過保護な母

は、たった3話で、魔王という宿命に振り回されつつも大切な人を最優先にしてきたマママの生き様、魅力を存分に表現していた。
発言は乱暴なのに、節々に哀愁が漂っている。
魔王になんてなりたくなかった。それでも魔王と勇者の宿命は理解している。
そんな描写がしっかりされたからこそ、今後のマママの「魔王」としての活躍への期待が高まった。
紋章を失ったことの影響はどうなるのか。

エリシア

まだ数コマだけど。
第4話の登場シーンにはかなりのインパクトがあった。
林先生がこれまで読み切りで発揮してきたかわいい女の子描写の能力が如何なく発揮されている。
エリシアの登場までシリアスな展開が続いてきた上、読切時とは若干画風を変えてきていたからこそ、読切時のタッチで描かれてライトに登場したエリシアの異世界感が際立っている。
画風の変化まで狙ってやっているとしたら天才としかいえない。
思えばエヴァン、エンドも明らかにタッチが違った。

登場の絵面のインパクトに加え、初対面のコルレオに驚きと戸惑いを見せながらも歩み寄る様子から、友好的で穏やかな性格が2ページでしっかり分かる。
ヒロイン要素満載である。
細かいセリフ回しからも、今後も今作で重要になると思われるキャラ立てのうまさを感じる。
ここに勇者属性をどのように加えるか期待。

魔王勇者がいる世界でのコルレオの成長

魔王勇者がいる世界というのがやっぱり魅力的。
紋章、一対しか存在しえない、勇者を犠牲にしての和解、複数の世界。
練りこまれた謎の多い世界は、それだけで次の展開が楽しみにできる。

そんな世界観の中で、コルレオが勇者としての自覚を持つまでの心情描写がものすごく丁寧だった。
平和な世界で望まず勇者になった少年に、運命に立ち向かうモチベーションを与えるのは難しい。
この点に十分説得力を与える3話までの展開だったと思う。
第3話の最後はドラクエの序曲が脳内に流れるくらいに勇者の旅立ち感が溢れていた。
勇者として彼がどう活躍していくのかが楽しみ。

漫画に求めるもの

人によって漫画に求めるものは違うので、あくまで個人的にではあるが、漫画に求めていることを考えてみる。

必要要素

魅力的なキャラがまずいて、そのキャラクターが予測不可能なストーリーの中で織りなすドラマを楽しみに読んでいるんだと思う。
ストーリーの中で課題(難敵でも人間関係でも自分の信念でも)に直面したキャラがそれを乗り越える瞬間
例)ガッシュ:第1話で清磨が不良からガッシュたちを守ることを決意し屋上の扉を開けるシーン
  ハンターハンター:ゴンとキルアの友情関連全般
  バトル全般:覚醒シーン(スーパーサイヤ人、ギア2、ゴンさん、アンサートーカー)
既に完成された強さと精神性を持つキャラがその強さを発揮するシーン
例)五条悟、ジン、シャンクスの活躍場面
この二つが漫画を読んでいてグッとくる瞬間である。
そして、
これを繰り返す中でストーリー上の謎が明らかになっていく
ことで、間延びすることなくストーリーを追うことができる。

キャラについては、特にこういうキャラクターがいいという方向性はないが、分かりやすい信念を持っていてぶれない行動をしているキャラが好きな気がする。

ストーリーについてはとにかく予測不可能で世界観に底が見えないと嬉しい。
1つのエピソードの中で全部は語り尽くさず、想像の余地を残したり伏線かどうか分からないものを描写してくれるとワクワクする。
ガッシュは100冊の本で王の座を争うという目的がはっきりしているにも関わらず、その背景が最後まで謎に包まれていたことで展開への興味が一切失われなかった。
ハンターハンターは幻影旅団の「最初はただ欲しかった」に代表される、過去に何が?と想像を膨らませる描写がそこら中に含まれていて、作者の頭の中にはその先のエビソードがあるだろうにそれを全部は作中に出さないことで作品の奥行がすごいことになっている。だからこそその中の伏線が回収されたときの快感は段違い。旅団の過去編やってくれると思わなかったよ…

他の漫画の例

・金色のガッシュ
別の記事で語ったとおり、ガッシュの魅力は、人間と魔物のペアごとのドラマを魅力的なキャラ同士が繰り広げるところにある。そこに完璧なストーリーラインがあるから非の打ち所がない。
・デスノート
ストーリー自体がよくできているのはもちろんだが、月とLという二人の天才それぞれの魅力がなければあそこまで面白くはならなかった。
・めだかボックス
個人的にはストーリーラインにあまり興味は持てなかったけれど球磨川禊が登場するたびに心を躍らせていたのをよく覚えている。
・ワンピース
頂上決戦編があれほどの盛り上がりを見せていたのは、白ひげを筆頭とする最強格のキャラクター達がバトルという媒介を通してそれぞれの魅力(強さ、信念、賢さ、カリスマ性、残虐さetc)を存分に発揮していたからだと思う。
・ハンターハンター
例外的に、ストーリーがあまりにも魅力的すぎて、まずはストーリーを楽しみに読んでいる。が、そのストーリーラインに幻影旅団とかいう圧倒的カリスマ軍団やらヒソカやらジンやらという単体で漫画を支えられるレベルのキャラがひしめいているのだからツボにはまるのは当然。一番好きな漫画なんだけど最近の展開は難解すぎて自分ごときが感想を投稿するのは憚られている。

魔々勇々の第1話

第1話が自分に刺さったのは、二人の勇者の葛藤と昇華を1話でまとめるストーリーの構成力の高さに加え、息子想いの口うるさい母親として描写される魔王マママ、圧倒的実力を持ちながら過酷な環境により冷酷になってしまったエヴァンというキャラクターが1話の中でしっかり描写されていたからだと思う(第1話ではコルレオの真価発揮には至っていないので、主人公の魅力という意味ではもう少し時間がかかる。)。

余談:ヒロイン(恋愛要素あり)の扱いの難しさ

さて、キャラといえばヒロイン。
主人公とヒロインの恋愛模様や丁々発止は漫画のお決まりのようにも思えるが、バトル漫画におけるこの扱いは難しい。
ヒロインと恋愛関係になってしまうと、そちらを楽しみにしすぎるあまり、本筋に興味を持てなくなってくることがある気がするのだ。
逆に恋愛描写におもしろさを感じられない場合、恋愛要素なしのキャラにしたほうが本筋に集中できる。
主人公との恋愛を応援したくなるキャラで、かつ本筋を進行させながらそのキャラとの関わりを描写できるのがベストなんだと思う。

ジャンプのバトル漫画において、ヒロインと主人公がしっかり恋愛していて恋愛描写が成功した漫画はあまり思い浮かばない。
幽遊白書の螢子なんて冨樫先生に嫌われているし(それでも成功の部類か)、サクラはそもそも矢印がナルトに向いていない。織姫はいい子だと思うんだけどブリーチを読んで一護と織姫の恋愛を楽しみに読んでいた人は少数派だろう。ワンピースは尾田先生が麦わら海賊団に恋愛させないことを明言している。
ジャンプ+のダンダダンは成功しているが、個人的にはモモちゃんといちゃいちゃしているところが面白いのであって、どうもストーリーには乗り切れないところがある。
そう考えるとヒロアカはすごい。お茶子はヒロインとして魅力的な上で空気と化していないが、それでも本筋の面白さを失っていない。それどころかトガとの関係ではヒロインであることの意味がしっかりある。

魔々勇々に期待すること

ここまでの考えを踏まえて、キャラ関係とストーリー関係に分けて期待することを考えてみる。
自分が編集なら自分好みの展開にするためにこのとおりコメントするけど、他方、意向は聞きつつそれを超えるものにしてほしい…ってこんな感じのツイートちょっと前にバズってたな。

キャラ

・マママ
3話まで、コルレオと同じくらい丁寧にキャラを掘り下げられている。
ここまで掘り下げたキャラをフェードアウトさせるのは惜しい。
ヒロイン(恋愛要素なし)として活躍させてほしい。

「魔王として弱かった」という点は覚悟が足りなかった、紋章の使い方を知らなかったなど、いくらでも解決可能。
紋章を失っていることは、むしろ取り戻すイベントによって戦線復帰させやすいように思う。
ハロハロを失ったことから「大切な人を失わないためには戦わなければならない」と思い直し復帰して欲しい。
まあ、冷静に考えてタイトルやここまでの掘り下げから考えて復帰は確定と思っているので心配はしてない。
弱い魔王というオリジナリティも強みだが、やっぱりバトルしてほしいなあ。

・コルレオ
3話かけて勇者としての決意を固めるところまではバッチリだったと思う。
ただ、今のところ自分の力で課題を解決するシーンが一度もないことが気になる。
「弱い」というコンプレックスを解決するイベントが欲しい。
エリシアを守るために紋章の力を覚醒させて敵を蹴散らす的な。
守る対象はマママでももちろんいいが、「魔王と勇者の共闘」を漫画としての強みにするためと、マママが覚醒してコルレオの救援に現れるシーンが見たいって観点からエリシアが適任。
あと守られる=ヒロイン(恋愛あり)と考えると、さすがに母親をここに据えるのはきつい。

・エリシア
登場シーンのままのイメージのキャラで固まっていってほしい。
そうすると必然的にコルレオが守りたいと思える存在になるのは間違いない。
これに加えてエリシアなりの勇者としての葛藤が見えればなお良い。
エリシアにはエリシアの勇者としての物語があれば、本筋から外れないヒロイン(恋愛要素あり)として活躍できる気がする。

ストーリー

以上の形でキャラを活躍させるとすると、
エリシアと紋章術について解明しながら修行する中で、敵(魔王か「勇者二人は存在NG」と判断した人間かはどっちでもいい)が来襲し、コルレオの力(紋章)で解決するイベントは必須だと思う。
このままだと明らかにベタだけど、退屈になりがちな世界観の説明に、分かりやすい面白さのベタがくるのはある程度仕方がないんじゃないだろうか。
「コルレオ応援したい!」とはなっても「コルレオかっこいい!コルレオなら何とかしれくれる!」とはなっていない現状は打破したいところ。

そこをクリアしたら、あとは魔王、勇者が押し寄せてほしい。
新キャラそれぞれに勇者と魔王という属性が付与されるのはかなりのアドバンテージになると思う。いろんな勇者と魔王が見られるのはやっぱり嬉しい。
それぞれの元の世界でスピンオフが作れるくらいに練り込んだ上で、それぞれの魔王勇者の物語をこの世界で完結させず、元の世界に帰るやつもいればこの世界に定住するやつもいるって感じの見せ方をしてほしい。
武力が至高の世界のほか、頭脳を持ち味にする世界があってもいいし、科学が圧倒的に進んだ世界があってもいい。
こんな世界観が見えれば、物語がどの方向に広がるのか全く予想できず正に自分好みのストーリーラインになる。

他方、魔王と勇者の関係は基本対立していたほうがコルレオとマママの特異性が際立っていいのかなという気がする。

まとめ

ここまで語っておいて、肝心の大筋のストーリーラインについては何も思いついていないし世界観の予想が陳腐すぎることに気付いた。
創作者ってやっぱりすごいんだなあ。

最近のヒット漫画は、今回語った求めるものに合致していない部分もあるし、言語化しづらい空気感やライブ感みたいなところが魅力になってる気もする。
チェンソーマン、坂本デイズも好きだけど今回の必要要素から面白さが説明できない気がするんだよな。
少なくとも自分が編集じゃないほうがいいことはよくわかった。

いずれにせよ、自分の漫画に対する思いを書き連ねるのは楽しかった。
発想の貧困な1読者の期待を超える展開を第5話以降も楽しみにしております。

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