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今日のラリア ー「腕の傷とロックンロール」

自己紹介:妻の転勤の機に福祉施設の施設長を退職し、持ち家も処分。当時13歳の娘と家族3人で2023年夏にオーストラリアに移住の48歳。現在子育てと家事全般を行う完全専業主夫。ワーホリのタグ付けをしているが、ワーホリではなく働く予定も特になし。一応、社会福祉士だが外国ではなんの意味もない。吉本芸人チャド・マレーンがオーストラリアを「ラリア」と呼ぶことに感銘を受け、そのまま使用する。


13歳「パァパ、私さ、最近さ、新しい友達できたんだよ!モンゴルの子なんだけどね。全校集会で私がギターを弾いて歌ったの見て話しかけてきてくれてさ!同じ年の女の子。ビートルズやストーンズが好きなんだって。で、一番好きなのはレディオヘッドだってさ!私もそうだよ〜!って嬉しくなった。で、今日もいろんな話して、じゃまた明日ね〜ってバイバイした時さ。・・・左腕にさ、たくさんリスカの跡があったんだよね・・・」

・・・そうか。うん。なるほど。うん。

きっと君はびっくりしたかもしれない。・・・そうか、すごくびっくりしたか。そうだよね。

でもさ、それはその子が悪いわけではない。決してその子が悪いんじゃないんだよ。こんなこと言うと勘違いするかもしれないし、これはあくまでパァパの個人的な考えなんだけどさ。

そういうことってあると思う。彼女がロックンロールが好きなら、きっとそういうことってあるんだよ。君もよく知っているように、ロックンロールって心が優しい人のための音楽なんだよな。心が豊かで、いつだって正直に生きたいって思う人間のための音楽でしょ?

そして、自分自身に正直に生きようとした時、世界は生き辛いんだよ。どうしようもなく生き辛い。そんな時、自分を傷つけてしまう人もいるんだよ。

でも、それはさっきも言ったけど彼女のせいじゃないなんだよ。

彼女は悪いことをしているわけではない。でも、間違っている。間違ったことをしている。

パァパもマァマも絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に、君にそれをして欲しくない。君がこれからも音楽を聴き続け、映画を見て、本を読み、友達と語り合っていけば、もしかしたらいつかそう言う気持ちになるかもしれない。

でもね、さっきも言ったけど絶対に自分を傷つけることはして欲しくない。これだけは絶対に忘れないでほしい。

うん、最近は君も少しずつわかってきたと思うけど、この世界は楽しいことや嬉しいことと同じくらい、悲しいことや辛いことがある。その時、音楽って助けてもくれるけど、そうじゃない場合もあるんだ。音楽が逆の作用をする事も実はあるんだ。

だから、パァパは君にはわかって欲しいんだよ。

君の友達は決して悪くない。ただ間違っているだけ。

友達の傷を見た時、君はびっくりしたって言ったけど、だからと言ってその友人を嫌いになんかなれないじゃん。彼女は自分に誠実に切実に生きようとしているんだから。

だからこれからもたくさん音楽の話をするといい。映画や本の話も。嬉しいことも辛いことも。そのことが彼女の助けになるかもしれないじゃん。

君は彼女と話をする時、自分が無力に思えるかもしれない。でもそんなことはない。何も話をしなくてもいい、彼女の隣に座っているだけでいい。それだけでいい。もちろん、君が辛くならない範囲で、ね。・・・そして彼女の左腕の傷がこれ以上ひとつも増えないことが大事じゃんね。

お友達、大事にしてね。ロックンロール。

娘はもうすぐ14歳になる。

日本で暮らしていた時とは違う環境の中で、これから色んなものを見て、知る。その時、音楽が支えになってくれればいい。映画でも本でも絵画でもなんでもいい。負けないでほしい。

そして、こんな時は俺がくどくど語るよりも、やっぱり音楽がいい。


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