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佐久間マリさん

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佐久間マリさんの作品が大好きです。 特に男子がとても魅力的で、物語は大きな出来事がドカンと起こるわけではないですが、心が切なくギュッとなります。 沢山の方にこの切なさを。。。
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#小説

10年越しで漫画化されることになった

10年越しで漫画化されることになった

 拙作、チョコレイト・ラブがコミカライズされることになりました。
 ありがたいことです。

 使ってるケータイで時代がわかります。
 当時はスマホが一部のアップル好きの人しか持っていないシロモノだった。「ボタンがないのにどうすんのー?」とかアンチなことを言っていたな。

 十年、それなりに酸いも甘いもさらに経験して、チョコラブは今は絶対書けない内容だ。まだまだピュアよのう、十年前の私。

 十年後

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大反対2

大反対2

朝、出勤すると社内チャットで野木からメッセージが届いていた。
ファイルが添付されていて、件名は予想通り、『あすなろ会案』とされている。
驚いたのは、その送信時刻だった。

「は? 2時12分って頭おかしくない!?」

仕事の合間にたまたまこのメッセージを送ったのがこの時刻だったのか、この資料を作っていたからのその時刻だったのか。後者ではないことを祈る。

希愛は仕事が忙しいことを理由にあすなろ会に

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大反対(パイロット版)

大反対(パイロット版)

 昼休み、社食から出た所で同期の竹田由美と並んで歩いていると、エレベーターからこれまた同期の野木が降りてきた。

「お、野木。おつかれー」

「ああ、おーっス」

「まったねー」

 挨拶と社交辞令は隣の由美に任せて、希愛(のあ)は知らん顔ですれ違う。

 すれ違ってしばらくしてから由美が「あ」と思い出したような声を出した。

「今年の『あすなろ』の幹事、希愛と野木だよって言うの忘れてた」

「げ

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音と映像、音と文章。
音と組み合わせることで二倍にも三倍にも魅力的になる。

音と映像、音と文章。 音と組み合わせることで二倍にも三倍にも魅力的になる。

 物を書くときに音楽がないと乗らないタイプです。
 つねに、私的主題歌があって、それぞれのシーンにも私的サウンドトラックがある。
 アーティストの歌う唄をエンドレスリピートすることもあれば、ドラマや映画のOSTにお世話になることもしばしば。オリジナルサウンドトラックはそもそもが物語により効果をもたらすために創られた楽曲ばかりなのだから創作のBGMにするには最適であるのもうなずける。

 私の中で、

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作家先生気取りで語る佐久間(テレ)

作家先生気取りで語る佐久間(テレ)

 堂道三部作を終えて(note掲載は二部まで)、堂道ファン代表のKazunanoさんがインタビューしてくださいました。
 まぁ、特に何の得にもならない内容ですみません……。
 堂道好きの方には少しは暇つぶしになるかなと思います。
 Kazunanoさん、膨大な量の編集ありがとうございました!

男のダメな点を挙げだすと恋愛貧乏になる

男のダメな点を挙げだすと恋愛貧乏になる

 横断歩道の信号待ちで、電車の席の向かい側で、いつも男を品定めしている。

「なんでそのスマホカバーなの」
「その髪の毛、イケてると思ってる?」
「微妙に色があってない」

 相手の男性からすれば、ほんっとうに余計なお世話だし、お前一体何様である。
 答えは、趣味で恋愛小説書いてるオバハンですが、なにか。
 現実に存在しないようなスパダリを夢見て自分で書いてそれに萌えてるキモいオバハンですが、なに

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ファン動画をもらったよ!

ファン動画をもらったよ!

 こんなことしてもらえる作品になったんだな、堂道よ。
 お前、愛されてるよ!

 日頃より堂道広報大使のkazunano様がPR動画を作ってくださいました。
 日々、不眠不休で、堂道の普及に多大なる貢献をしてくださってます!ありがとうございます!

 堂道の怒鳴り声、ガニ股、眉間の皺。
 リアルにゴミ箱を蹴る堂道を拝める日がいつかきますように。

8.堂道、フォーエバー!

8.堂道、フォーエバー!

会社のほど近く、オフィス街のこんなところにあったのかと思う場所に、一軒だけ存在していた。
 確かに、いかにもな外装ではないし、装飾も抑えられてはいるが、看板には「REST」と「STAY」の値段が書いてあるし、意外にも部屋は半分以上埋まっていた。

ラブホテルならではの、部屋選びから事前精算まで、堂道は戸惑いも躊躇いもなく済ませた。
 動作のたびにガコガコ鳴るようなエレベーターに乗り込む。定員二名か

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7.堂道、最終章!④

7.堂道、最終章!④

濃い目の口紅をぐるりと乱暴に塗りつけて、ジャケットを脱ぐ。
 薄手のブラウスに、今日はあえて目立つ色の下着を透けさせてある。
 胸元のボタンを一つ分多く開けながら女性トイレから出ると、急いで階段に通じる重い鉄の扉を体で押し開けた。

池手内が、しらじらしく糸の後を追って離席しようとしていたのが見えていた。
 ここで同じエレベーターに乗り合ってしまうのはどうしても避けたい。

「やばいやばい、早く早

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7.堂道、最終章!③

7.堂道、最終章!③

糸は、いつかのリバーサイドにいた。

手すりにもたれて暗い川を見ながら、買ってきた缶チューハイを一人で開ける。
 酒が苦い。
 息を吐いた傍から川風がさらって行く。
 したためた辞表をくしゃと握りつぶした。

「玉響さんが辞表を出すのは勝手だけど、キミが辞めたところで、ボクが写真公表しないって約束にならないよ」と池手内に先手を打たれている。

堂道への腹いせには違いなかった。
 しかし、写真を撮ら

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7.堂道、最終章!②

7.堂道、最終章!②

「堂道君、糸をよろしくお願いします」

がちがちに緊張して迎えた東京の、堂道が予約したホテルの和食レストランで父は開口一番に堂道に向かって頭を下げた。
 
 文字通り「開口一番」で、どれだけ「文字通り」だったかというと、まず、新幹線口で両親を出迎えたのは糸一人で、堂道とは現地集合だった。
 予約した個室に玉響家が案内され、先に着いていた堂道は父が入ってくるのが見えると席を立った。
 つまり、そこで

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7.堂道、最終章!①

7.堂道、最終章!①

「池手内課長ォ、コレもうちょっとわかりやすく書けねえんですかネェ?」

「い、いや、それは夏原さんに頼んだら……」

「お言葉ですが、夏原さんは課内でも特に見やすいレイアウトで資料を作る事務サンなんですけどネェ? まあ、例えば百歩譲ってこれを夏原さんが作ったとして、課長はそれを指導する立場にあるんですがネェ?」

堂道が次長になって、直接平社員が怒られることは少なくなった。
 当然ながら、その代わ

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6.堂道、ファミリー!④

6.堂道、ファミリー!④

 日暮れとともにマリーナに帰港し、みんなで荷物を下ろしていると、堂道母に声をかけられた。

「今から食事に行くのよ。糸さんも是非いかがかしら」

陽は落ちたのにつばの広い帽子をかぶり、コーディネートの良し悪しはさておき、一目で高級ブランドとわかる柄のリゾートワンピースに着替えている。

聞きつけた姉春子が、糸の腕に自らの腕をからめて、
「糸ちゃん、ステーキよー! 行きましょうよ」

そこへ堂道がや

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6.堂道、ファミリー!③

6.堂道、ファミリー!③



堂道と草太が楽しそうに釣りをしている。
 糸と小夜はそれをぼんやりと眺めていた。甲板の白の跳ね返りが眩しい。サングラスがなかったら目を傷めていただろう日差しの強さだ。

「お金持ちってホント天然だよね。大学の時にいた社長令嬢を思い出した」

あらゆるもの、ことに対して悪意がなく、マイペースだった彼女によく似ている。堂道母しかり、春子しかり、美麗しかり。

「小夜も結婚したらあんな感じになるの

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