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佐久間マリ
2022年2月7日 23:04
物を書くときに音楽がないと乗らないタイプです。 つねに、私的主題歌があって、それぞれのシーンにも私的サウンドトラックがある。 アーティストの歌う唄をエンドレスリピートすることもあれば、ドラマや映画のOSTにお世話になることもしばしば。オリジナルサウンドトラックはそもそもが物語により効果をもたらすために創られた楽曲ばかりなのだから創作のBGMにするには最適であるのもうなずける。 私の中で、
2022年1月15日 13:45
こんなことしてもらえる作品になったんだな、堂道よ。 お前、愛されてるよ! 日頃より堂道広報大使のkazunano様がPR動画を作ってくださいました。 日々、不眠不休で、堂道の普及に多大なる貢献をしてくださってます!ありがとうございます! 堂道の怒鳴り声、ガニ股、眉間の皺。 リアルにゴミ箱を蹴る堂道を拝める日がいつかきますように。
2022年1月1日 14:34
会社のほど近く、オフィス街のこんなところにあったのかと思う場所に、一軒だけ存在していた。 確かに、いかにもな外装ではないし、装飾も抑えられてはいるが、看板には「REST」と「STAY」の値段が書いてあるし、意外にも部屋は半分以上埋まっていた。ラブホテルならではの、部屋選びから事前精算まで、堂道は戸惑いも躊躇いもなく済ませた。 動作のたびにガコガコ鳴るようなエレベーターに乗り込む。定員二名か
2021年12月30日 16:10
濃い目の口紅をぐるりと乱暴に塗りつけて、ジャケットを脱ぐ。 薄手のブラウスに、今日はあえて目立つ色の下着を透けさせてある。 胸元のボタンを一つ分多く開けながら女性トイレから出ると、急いで階段に通じる重い鉄の扉を体で押し開けた。池手内が、しらじらしく糸の後を追って離席しようとしていたのが見えていた。 ここで同じエレベーターに乗り合ってしまうのはどうしても避けたい。「やばいやばい、早く早
2021年12月29日 07:39
糸は、いつかのリバーサイドにいた。手すりにもたれて暗い川を見ながら、買ってきた缶チューハイを一人で開ける。 酒が苦い。 息を吐いた傍から川風がさらって行く。 したためた辞表をくしゃと握りつぶした。「玉響さんが辞表を出すのは勝手だけど、キミが辞めたところで、ボクが写真公表しないって約束にならないよ」と池手内に先手を打たれている。堂道への腹いせには違いなかった。 しかし、写真を撮ら
2021年12月28日 06:36
「堂道君、糸をよろしくお願いします」がちがちに緊張して迎えた東京の、堂道が予約したホテルの和食レストランで父は開口一番に堂道に向かって頭を下げた。 文字通り「開口一番」で、どれだけ「文字通り」だったかというと、まず、新幹線口で両親を出迎えたのは糸一人で、堂道とは現地集合だった。 予約した個室に玉響家が案内され、先に着いていた堂道は父が入ってくるのが見えると席を立った。 つまり、そこで
2021年12月27日 07:04
「池手内課長ォ、コレもうちょっとわかりやすく書けねえんですかネェ?」「い、いや、それは夏原さんに頼んだら……」「お言葉ですが、夏原さんは課内でも特に見やすいレイアウトで資料を作る事務サンなんですけどネェ? まあ、例えば百歩譲ってこれを夏原さんが作ったとして、課長はそれを指導する立場にあるんですがネェ?」堂道が次長になって、直接平社員が怒られることは少なくなった。 当然ながら、その代わ
2021年12月26日 07:45
日暮れとともにマリーナに帰港し、みんなで荷物を下ろしていると、堂道母に声をかけられた。「今から食事に行くのよ。糸さんも是非いかがかしら」陽は落ちたのにつばの広い帽子をかぶり、コーディネートの良し悪しはさておき、一目で高級ブランドとわかる柄のリゾートワンピースに着替えている。聞きつけた姉春子が、糸の腕に自らの腕をからめて、「糸ちゃん、ステーキよー! 行きましょうよ」そこへ堂道がや
2021年12月25日 07:19
*堂道と草太が楽しそうに釣りをしている。 糸と小夜はそれをぼんやりと眺めていた。甲板の白の跳ね返りが眩しい。サングラスがなかったら目を傷めていただろう日差しの強さだ。「お金持ちってホント天然だよね。大学の時にいた社長令嬢を思い出した」あらゆるもの、ことに対して悪意がなく、マイペースだった彼女によく似ている。堂道母しかり、春子しかり、美麗しかり。「小夜も結婚したらあんな感じになるの
2021年12月23日 20:46
若いことと初婚であることは、気づかないうちに糸に胡坐をかかせていたらしい。 周りの反応が糸にその意識を助長させたこともあるが、見定められる立場にあることを忘れるくらいには、堂道との婚約は糸にとってまだ夢の出来事だった。「すみません、ほんとに、私なんかで……」爽やかなマリンルックに身を包みながら糸は、暗い顔で言った。 クルージングには絶好の晴れやかな青い空が広がる。 堂道の両親と対面す
2021年12月22日 21:45
「玉響サァン」席の後ろに立った人に名前を呼ばれ、糸は振り返った。 見上げると、見慣れた、けれど会社仕様の堂道次長。 疲れた顔は、仕事が忙しくて残業続きだからだ。「次長。なにか?」「ちょっと」「はい」堂道の後についてフロアを出るのに、痛いほどの視線を感じた。みんなが固唾を飲んで見守っているのがわかる。交際は、隠していないが公にもしていない。 堂道が次長となって本社復帰後
2021年12月21日 21:34
「……堂道さん、ゆっくりして行ってくれ。わたしは少し出かけてくる」父は答えを出さないまま、席を立った。「お父さん!」堂道も立ち、一礼をする。 糸は立たなかった。父が行くと、部屋に残された母が「堂道さん、楽にしてね」と自分も大げさに肩を上下させてみせた。 そして、まるで普段の態度になって、自分でいれた茶を飲む。「ああ、噂には聞いてたけど、この状況さすがに緊張するわねぇ」「
2021年12月20日 09:24
「人間、早々変われるモンじゃないよねー」「あー、久し振りだわー。この不快感」小夜と夏実が腕組みして眺めている。 その姿は『腰かけ感』より『お局感』が出てきてしまったまさに中堅アラサーOL。「昔、羽切さんにもらった耳栓、まだ引き出しの奥にあったような」「糸の嫁になって多少はいい人間に生まれ変わったかと思いきや、イヤ、ほんと三つ子の魂百までって言った昔の人はエラいわ。堂道は腐っても堂
2021年12月19日 19:44
ひととおり食事を終えると、酒を片手に場所をソファに移した。 たわいもない話をしながら、しつこくシャンパンをちびちび飲んでいた糸に、前触れもなく堂道が身体を覆いかぶせて来た。「ん、課長……」糸の意向にかまわず、どんどん舌を進めてくる。「ま……って……」唇は、会話にキスにシャンパンにと忙しい。「……だめ、こぼれちゃう」「ん」キスをしながら器用に、糸の手からフルートグラス