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【主体性を育む】日本の近代教育史から見る「ゆとりvs詰め込み」

「ゆとりvs詰め込み」みなさんはどっち派?
一見 生徒vs学校の代理戦争みたいな形相をしていますが、実は一概にそうとも言えないようです。(とはいえほぼ100%の生徒はゆとりが良いと思ってるんでね?と思ってます笑)

さて、今日はそんな「ゆとり」と「詰め込み」教育のお話です。
ゆとりと聞くと「2000年ごろにスタートしてすぐに無くなっちゃったやつでしょ?」というイメージが強いのではないでしょうか?
ですが、実はこの元になる概念は古く、戦後教育から始まっていると言われています。

なので今回は、戦後の教育まで遡りながら、ゆとりと詰め込みの仁義なき戦いを書いていこうと思います。

🔸第二次世界大戦終戦後の教育

第二次世界大戦は教育関係者の心に大きな大きな傷跡を残しました。
「もう2度と、子どもたちを戦場に送りたいくない。」
この強い思いから、中央集権的な教育制度を嫌い、各々が考え、自由に教え学べる教育を行うべきだ、そして自分で考えて行動できる人間になるべきだ、と考えるようになりました。

夏休みの自由研究というのはみなさん経験したことがある人も多いと思います。自由研究は実は戦後1947年の学習指導要領で導入された活動で、しかも最初は列記とした授業だったんです。
そのころの先生方の想いは、今の総合的な探究の時間に通ずるものがあるのではないでしょうか?

🔸高度経済成長期

この時代はとにかく経済発展を第一目的にしており、そのために一定基準の学力を持つ国民が必要でした。
時代は東京オリンピック。それに伴い東海道新幹線が開通しました。
これからはこういった科学技術の時代だ、という風潮になり、理数系の授業コマ数が増やされ、時代は一気に詰め込み教育に。
その時代に実は全国で学力調査というものがスタートします。
戦後教育は自由思想を重要視するゆとり傾向があり、学力の低下が懸念されていたため、その実態調査というのが名目でした。
しかし当時は日教組(日本教職員組合)が猛反対。
さらに学校間での競争ばかりが過激化していき、1964年に一度中止されました。

しかしこの頃から、学校現場は荒れ始めます。
年間の単位数が増加し、子どもたちは勉強詰めになっていました。その圧が子どもたちのストレスになっていたのでしょう。
「盗んだバイクで走り出す」そんな歌詞が流行りに流行った社会背景には、子どもたちの言葉にならない主張があったように感じます。

🔸ゆとり教育

ゆとりという言葉が使われ始めたのは、1970年ごろからだと言われています。
当時、詰め込み教育への世論の風当たりは厳しく、思考力や想像力を育む経験主義的な教育が求められてました。
1980年代から徐々に「ゆとり教育」が浸透していったそうです。
しかし、世間では1990年代になっても子どもたちの非行、暴力、いじめ、果ては自殺が問題となっていました。
そこで中教審はこの問題の原因を、子どもの「ゆとりのなさ」「社会性の欠如」「自律の遅れ」などと定義し、「生きる力」を育めるようなゆとりある学校を本格的に目指すようになります。

このタイミングで学校の週5日制も取り入れられました。
教科を詰め込むだけでなく、もっと幅広い学びが必要であり、そのために教科以外のことに時間を使える「ゆとり」を持てるように土日の時間を確保したい。というのが本来の目的でした。

学校現場では、ゆとり教育といえど何をして良いのかわからず、ただただ授業実数を減らして物事を簡単に伝えるだけにとどまってしまったように僕は感じています。
しかしその本質は、ゆとりを持たせた時間で
自ら学ぶ力を育み、興味関心を引き出す活動や、地域社会に関わる体験学習を行ってほしいというメッセージだったのだと感じています。

🔸PISAショック!!

僕はいわゆるゆとり世代でして、上記の学校週5日制は小学生の時に経験しました。今でも伝説のように語り継がれている(?)円周率3の世代は僕のすぐ下の後輩の代です。
そのように、ゆとり教育が本格化した時は
「学力が落ちる」「教科の時間が足りない」「子どもの将来が不安」などさまざまな批判の声がありました。(変化に批判は付きものですから、、)

世界に目を向けてみると2000年にOECD加盟国に向けた学習到達度調査(PISA)が始まりました。
PISAが日本の教育にもたらした影響はたくさんあります。
その中でも特に影響力が大きかったのは評価システムではないでしょうか。

数値化、一般化されることにより、比べることが容易になったことで評価制度がより意識されるようになりました。能力を数値化し、目標を設定する動きもこの頃から出てきたそうです。

さて、このPISAの結果ですが、
2000年に実施された第1回の結果とその後2回の結果を見ると明らかに成績が落ちていることがわかります。
初回から2回目では読解力が、2回目から3回目では数学的リテラシーが大幅に下降しているのが見て取れます。

https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf

この出来事はPISAショックと言われており、
「ほら見たことか!やっぱり学力下がってるんだよ」
という意見を裏付けることになりました。

これにより、ゆとり教育は衰退し始め、「確かな学力」という言葉が使われるようになりました。

🔸現代の教育

さて、近代教育の変遷をたどり、現代に戻って参りました。
「確かな学力」というパワーワードが生まれ、基本的には今も学力重視の教育が行われているのではないでしょうか?
定期テスト、受験、偏差値、評定平均値、成績、全国模試、統一テスト、学歴、可視化できて測れるものを重視する傾向にあるのは間違いないと思います。

そんな中でも、ゆとり教育の基本思想は重要視され続けました。
10年ほど前に囁かれた「キャリア教育」や今では「探究学習」はその表れだと考えています。
しかし社会のシステム上、子どもたちが自由に学べる環境はなかなか実現されていな現状です。

🔸「教育」と「学習」

さて、ここまで日本の近代教育の変遷を「ゆとりvs詰め込み」という視点で書いてみました。
ではこの2つは何が違うのでしょうか?
両者とも子どものためを思い、子どもの成長を望む活動であることは変わらないのに。

大きな違いは「教育と学習の違い」だという話を聞いたことがあります。
教育とは漢字からもわかるように「教え育てる」という活動です。
子どもの能力や性質を他者が力を加えることによって強制する行為です。子どもが人間社会で生きられるようにするにはある程度必要な経験です。

対して学習は「学び習う」という活動です。
そもそも主語が違い、子どもに主眼を置いています。子どもが自ら学び、他者に習う活動です。子どもが自らの意思で活動することに重きをおいています。

このどちらが正しく、どちらが悪だということはないと思います。
どちらか一方だけを行うことはできないし、すべきかもわかりません。

ですが、個人的な意見としては
今、この時代においては少し「教育」に偏り過ぎているのではないかと感じています。
これは資本主義による経済活動の活発化が大きく関わっているのだと思いますが、それにしても人間はもう少し「ゆとり」を持って自分の生を生きてもいいのではないかと思います。

どちらが良いかという二元論になりがちですが、
先述の通り、僕は2つの方法が共存することを否定していません。
割合の話であり、ベストな割合は時代や社会背景によって変わっていくものだと思っています。

ただそうなると、今日におけるベストな割合を経済成長を主軸に置く政府や文部科学省が「教育」という方法で「学習到達度」を気にするようになってしまうのは必然なのかな、、なんて思ったりもしています。
システム/構造が結果を産んでいるんだとしたら、このシステム自体にメスを入れていく必要があるのかもしれません。
(そんなことを考えていると途方に暮れますが、、)

🔸まとめ

今回は「ゆとりvs詰め込み」と「戦後教育」というテーマで書いてみました。
主体性を育むことを主軸にさまざまなことを調べていると、
どうしてもどこかでぶつかるのが子どもの意思に反する詰め込み教育だったりします。
僕自身も子どもの頃はその壁を強く感じていました。
興味は全く持てないし、学ぶことが楽しいと思うことはほとんどない。好きな教科と嫌いな教科の差は大体教科担当の先生のことを好きかどうか。
ですが、本来「学ぶ」という行為自体はとても興味深くワクワクする活動だということに大学生になって気づきました。

社会に出てある程度必要な知識・スキルがあることは理解しています。
学びたいと思った時に知識・スキルを伝えてくれる「教育」機関があることがどんなに素晴らしいかも知っています。
人間は弱いから、時に外部からの強制力で詰め込んでもらう方が良い場合があることもわかります。

しかし、自分で自分を幸せにすることに責任を持つ生き方をするためには、
やはり主体性を持てるように、まずは学習を促す必要があるのではないかと考えます。

今回の参考資料

OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント

PISA で教育の何が変わったか~日本の場合~

大田堯・寺脇研が戦後教育を語り合う―この国の教育はどこへ向かうのか

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