ニュース性をプリインストールする。
スタートアップスタジオquantumのクリエイティブ担当役員、川下です。
「事業作家」として、未来の物語を書く中で得た気付きをnoteにまとめています。
前回は、「vision prototyping」というquantumからリリースした新たな新規事業開発手法に関する号外的な記事を書きましたが、ここからは再び、連載本編の記事に戻っていこうと思います。
今回は、quantumが新規事業開発において特に大切にしている”視点”について書いていきたいと思います。
quantumのユニークなところとして、わたしを含め、複数のPR実務経験者が所属していることが挙げられます。そう言うと、生み出した新規事業のPRに力を入れていると思われるかもしれません。もちろん、それもひとつの重要な役割だと考えています。しかし、このような人員構成になっている背景には、それだけではない意図があるのです。
わたし自身も広告会社時代、ずいぶん長い間PR業務に携わってきましたが、ある程度のことは知恵を絞れば解決できるにしても、そもそもニュース性が少ない製品・サービスを”川下の工程”でなんとか話題にしてもらえないか、と依頼されても、正直なところそれには限界があると感じていました。
そんなあるとき、新しい製品・サービスが発表される前からメディアが飛びつき、話題をさらっていくある企業の広報責任者の方が、「自分からは一度もメディアに製品やサービスを売り込んだことがない」とおっしゃられているのを聞きました。そして、ふと、”川上の工程”、つまり、開発の初期段階から予め取り組んでいる事業・製品・サービスにニュース性を組み込むことができれば、後工程でジタバタしなくても自ずと話題にすることができるのではないかということに気づいたのです。
そこでquantumでは、事業・製品・サービスができてしまってからPRするためというよりも、ニュース性がプリインストールされた事業・製品・サービスをつくるために、アイデア出しの段階からニュースになるかどうか目利きできるPRのプロをアサインできる体制を整えているのです。
そもそもわたしが新規事業開発の世界に入ったのは、川下の広告・広報クリエイティブだけではなく、川上の事業クリエイティブに深くコミットしたいと思ったからですが、実際にPRと新規事業開発の両方に携わって思うのは、両者はコインの裏と表の関係にあるということです。
新規事業のアイデアにニュース性がなければ、後からどんなに知恵を出してもPRの広まりには限界があります。一方で、新規事業のアイデアにニュース性を盛り込むことができれば、後から苦労しなくてもニュースを広げていくことができるのです。
ニュースとは、メディアに取り上げられることだけでなく、広い意味で人が人に伝えたくなることだと、わたしは考えています。
成功するかどうかもわからないなかで、立ち上げ当初から潤沢な広告費用を使える新規事業はほとんど存在しません。そうした意味でも、ニュースに取り上げられる、SNSで拡散される、口コミで広がるなどのように、人々の口の端に上る要素を組み込んでおくことは、事業の初速をつくる上で重要なポイントになることは間違いありません。
新規事業開発に携わられている方は、今取り組んでいる事業アイデアに需要があるかはもちろん、そこにニュース性があるか、考えてみてはいかがでしょうか。
次回は、アイデアを生み出すための、脳の使い方について考えていきたいと思います。
イラスト:小関友未 編集:木村俊介
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