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いちおうフィクションです。

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3分あれば読めます。寝付けない時、起きたくない時に、ベッドのお供に使ってください。
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2021年3月の記事一覧

余興の思い出

余興の思い出

私がアルバイトしている職場では、店長を除けば、自分が最も長くこの店で働いている職員になってしまった。

給料は一番安いが、態度が一番でかいのは、恐らく私だろう。最もそんなことなんの自慢にもならないのだが。

春は出会いと別れの季節と言われる。

この季節は、華々しい袴姿と着なれぬ背広姿の大学生達を見かけることも多い。

私は彼らに対して、心の中で勝手に「おめでとう」と呟くと共に、これから必ずや彼ら

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「王妃が処刑された町を出て」

男はダブルベッドで一人目を覚ました。

白い壁に、灰色の寝具。

それらは全て彼の妻が選んだものだ。
深緑色のカーテンを開けると、くすんだ雲が空を覆っており、雨が降っていた。

壁から外の冷気が伝わってくる。男は再び目を瞑った。

こうして一人で生きることにも男は慣れてきた。

自分の感情をじっと静かに保つことが肝心だ。

何かに対して喜びを抱いたとしても、その後には必ず落胆がやって来ることを男は

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