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連続小説『ワンフレーズ』

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『ワンフレーズ』 20話 「呼び出した理由」

「お葬式、どうだった?」
リコは慣れた手つき子供にミルクをやりながら、俯いたまま僕に問いかけた。
「ヨウジはなんか言ってた?」
「今日夜勤だから、起こしてない」
「そっか、起きたらありがとうって言っておいて」
「わかった」
リコの口調って、こんな詰まった感じだったか、僕は忘れてしまった。水垢を取った跡のこびり付いたグラスに注がれた茶色いコーヒーを、音を立てずに吸った。少し酸っぱい味がした。

「カ

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『ワンフレーズ』 19話 「喫茶店に子供」

 玄関を出た。外は雨が降っていた。隣の家の格子を雨粒が伝って、植えてあった青白い紫陽花が、それを迎えるように、嫌がるように、ポタポタと染み込み、弾いている。僕は風呂上がりの頭がまだ生乾きだったので。ちょうどいいやと思った。
 なんでだろう、今のリコと会うことに、僕は全然緊張していない。高校の頃だったら、連絡が来ただけで、なんとなくそわそわしていたはずなのに。

「ごめん急に、遅れた」
「ありがと」

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『ワンフレーズ』 18話 「久しい連絡」

 何時に帰って来てたの?というお母さんの声を聞いて、ようやく頭が目を覚ました。特に潰れるまで飲んでいたわけでもなかったし、ヨウジの子供だって、見て帰って来たはず。
 僕はスーツだけをカーテンの留め具に綺麗に立てかけて、他人の家のようなソファに寝っ転がっていた。

 居酒屋を出て、ヨウジの家に着いたとき、もう大分夜も遅かったから、リコも子供も すっかり寝てしまっていた。起こさないようにそっと、子供の

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『ワンフレーズ』 17話 「ヨウジ」

「今仕事、どんな感じなの」
 僕は、気にかかっていても答えも出ないカズマのことを話すのをやめて、まるで、話すことがなくなったような聞き方をした。

「全然、ぼちぼちだよ、毎日ほとんど同じ仕事だし」
「そうなんだ」
「三交替だから、最近夜勤が始まって、終わった後きつい時とかあるけど」
「夜勤とかあるんだ、家族いるのに、大変だな」
「アラタも夜勤してんじゃん」
「コンビニの夜勤と一緒にすんなよ、あんな

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『ワンフレーズ』 16話 「誘われた居酒屋で」

「今から、呑みに行かね?」
「え?」
 カズマのお父さんに挨拶を済ませ、車に乗って、真っ暗な田んぼの間道を、ガタガタと通りながら、ヨウジは僕にそう聞いて来た。
「明日は何時に帰んの」
「まだ決めてない、夕方には大学の方にいたいけど」
「じゃあ、今日呑んでも大丈夫だろ、なんか、このまま帰るの嫌じゃね?久しぶりに会ったし」
「そうだけど、お前車じゃん」
「いいとこ知ってんだ、代行呼ぶし、大丈夫」
 ヨ

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『ワンフレーズ』 15話 「誰が殺した」

「そろそろ、帰ろうか」
 僕は、ヨウジに向かって帰宅をあおった。
「そうだな」
「そろそろ、失礼します。」
 僕らは、横たわったカズマの遺体越しに、カズマのお父さんへ小さくお辞儀をした。 
「申し訳ないが、ちょっと待ってくれないか、少しだけ聞きたいことがある」
 カズマのお父さんはそう言って、僕らを引き止めた。
「ここじゃ話しにくい、少し外に行こう」

 僕らはホールの裏口から出て、親族用の駐車場

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『ワンフレーズ』 14話 「三角形、一直線」

 しばらくして、葬儀が行われているホールに着いた。思っていたより駐車場には車は留まっていない。僕とヨウジは受付を済ませて、ホールの中に入った。中にも、そこまで人はいないようだった。

 人の葬儀に行くのは久しぶりだった。今までに何回か行ったことはあったけれど、遠い親戚だったり、近所の、もう何年も話していないお爺さんだったりして、なんとなく参加していただけで、なんとなく悲しまないといけない常識がある

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『ワンフレーズ』 13話 「再会」

 

 「起きて、もうそろそろヨウジ君迎えにくるよ」
お母さんに張った肩を叩かれ起こされた。どうやら、本当に夕方まで寝続けてしまったらしい。
 変な夢を見た。顔が見えたような、聞き覚えのある声だったような、そんな気がしたけれど、半ば強制的に、夢から引き摺り出されたせいで、さっきまで見ていた光景が全然思い出せない。何か、誰かに大事なことを言われているような、そんな夢だった。 

 僕はお父さんから黒

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『ワンフレーズ』 12話 「誰かの声」

 カズマの葬式は通夜の二日後に行われることになった。
 丁度バイトも就活もない日曜日だった。急いで二日分ほどの荷造りをして、実家へ向かうバスに乗った。ジュンヤには、「友達の葬式が入った」と伝え、呑みの予定を延ばしてもらった。

 久しぶりの深夜バスだ。 

 僕は一体、いつからちゃんと、ヨウジと会っていなかったんだろうか。道路照明が視界を流れて行く様子を、もうすっかり消灯されて真っ暗な車内か

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『ワンフレーズ』 11話 「僕らの関係」

 地元には、もう社会人として働いているヨウジ、浪人して実家にいるカズマがいた。だから比較的、実家に帰ることは楽しみだった。
 帰ったらいつも会える友達がいたから、そうだと思っていたけれど、カズマは浪人してから、僕たちにはめっきり会ってくれなくなってしまった。状況は変わったけれど、僕が帰って三人が揃えば、小学校や中学校の頃みたいに、楽しく話せる日がまたくると思っていた。でも、状況が変わったからこそ、

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『ワンフレーズ』 10話 「カズマ」

 二年になって半年が経った時、リコは文系分野、カズマは理系分野のクラスで、成績優秀者として表彰された、学年の皆が見ている目の前で。

 僕にはそれが、どれだけ凄いコトだったのかは分からなかった。どれだけ凄いのかも分からないし、景品なんて、図書カードの五千円分だけだし、僕からしたら、そんな表彰なんてモノが、この学校にはにあったのか、それくらいのコトだったけど。でも、その日からカズマとリコは、うちの高

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『ワンフレーズ』 9話 「2人と3人と」

 若干二日酔いが混じる朝、自分の部屋で目が覚めた。 携帯を見ると、なぜかヨウジから十数件の不在着信が入っていた。まだ九時半なのに、一体どうしたんだろうか。

「おはよう、ごめん、寝てて気付かなかった」
「やっと出てくれた、朝早くに悪い」
 電話越しからでも、落ち着きを失っているのが見て取れる。いつも何かあると、連絡はとってはいたんだけれど、ヨウジの声を久しぶりにちゃんと聞いた気がした。

「いいよ

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『ワンフレーズ』 8話 「同い年の」

「それとミズちゃんと何が関係あるの」
「ミズに質問責めされた後にさ、私はずっと一緒にいたいと思ってます、とか、ジュンヤくんの地元についてくる、とか言われたんだよ、その時にさ、ああおれもそういえば高校の彼女と初めてやった後にそんなこと考えたような、って思ったんだよ、なんていうのこういう時、通過儀礼的な感じ、別に、ミズのことはちゃんと好きだったけど、別にはじめてした時も何も問題なかったけど、前自分が本

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『ワンフレーズ』 7話 「イニシエーション?」

「もったいぶってるっていうか、自分で言うのが恥ずかしいだけなんだけど」
「うん」
「ミズにこの質問責めされたのがさ、おれと初めてした日より後なのが問題ってことなんだよな」
「え?」

「ミズってさ、おれが初めての相手だったんだよね」
「それは、付き合ってた時に聞いた」
「確かに、言った事あったな」
「その頃一年生だったし、時期的にも初めてでも変じゃないでしょ」
「そうなんだけど、誰が初めてだったと

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