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エイプリルフール

4月1日、 今にも雨が降りそうな曇天に、 桜の花びらは早とちりを掴まされたみたい 3月の寂しさを 残りの洗い物に見つけて 家の中にいるのに 迷子になった気分 あなたの名前のすべてが 正解になる為に 人生があるんだとすれば、 退屈の小石を蹴飛ばしている わたしの今を誰が説明してくれるの くだらないやりとりが ふたりを育むとか けんかをするほど、とか 美しさがそこにある時代は もう終わりつつあるのかしら バカにしないでよ 本当の気持ちはいつだって とびっきりの恥ずかしさの

    • 家族計画

      バカ真面目になることも バカになることも出来ない僕は あなたと離れたくないことすら 分からなくなった 「誰にも内緒で」なんて 言っても仕方なくなった このまま歳を取って 死んでいこうと思っていたのに 二人をつなぎ止める為だけに 贈った指輪は、 そんなハラの中がばれているからこそ 薬指で私に輝いていた 本当のところは どうだっていい だから私はいつでも あなたと話しやすいのだ それは この関係すらどうだっていいことと 同じなのでは? その程度のものなのでは? もし問

      • こまったちゃん

        寂しさを思い知る時 わたしは帰り道を探す いつでもあなたのそばにいたい、って あなたのまわりをそんな 愛しい言葉で溢れさせたい わたしの中のこまったちゃんは 朝も昼も夜も欲張りで 幸せと不幸せを混ぜ合わせて あなたの頬があたたかいって 悴んだ両手を充てるんだ 息が止まれば人は生きられないなんて 決めた誰かがいる わたしに牙を剥けるこの気持ちは この世界のなによりも首を絞める でも、何とかしたいなんて これっぽっちも思っていなかったりするんだよ こんなに便利になった世の中

        • 珈琲

          ため息も吐き飽きた頃、 珈琲が冷めていたことに気づく まだ待ち合わせの時間にはならない 期待していたのはどうやら私の方だったようだ 私の心の中の悩みは 貴方の顔を見れば忘れてしまうようなことで そんな事実に かえって胸を痛めている 私にとって言葉とは どう伝わるかなんてことが大事なので、 だから「好き」という2文字が どんな魔物にも化けていくような気がした 古いワイシャツに 薄いシミになっていくような 貴方との毎日は、 「会えているだけで」といった、 幸福の正当化をして

        エイプリルフール

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        • 自由詩
          86本
        • 超短編小説
          22本
        • 連続小説『ワンフレーズ』
          20本
        • エッセイ・日記
          14本
        • 詩画
          3本
        • 恋愛短歌
          3本

        記事

          なれないならない

          性行為に鈍感になることが大人 そうでもしないと子供なんて作れない 相手を想うことで生じるナーバスを 肯定するような詩は好きになれない 突き詰め切ったような顔で 口から出る意見は聞けない 「実際は」はない 「本当は」もない 「これからは」もない 信じてはいけない 言葉の優しさに触れることがある きっと言葉が響いているようで 視ているものは行動である 言葉に責任をとるということは 認知革命を恐れないということ

          なれないならない

          故郷のちがう人

           今日私は、あなたとあなたの故郷で久しぶりに会いました。  あなたの故郷は、10月なんかには既に寒空が広がっていて、日光がやや痛いのに上着に困るなんてことがありました。雨が降らなくてよかったね、と、天気の話ばかりする時は、大層な話題も無いときだと言われたりもしますが、あなたと散歩をしている時に限っては、それがかえって心地よかったりもしました。  私はコーヒーが飲みたくなりました。取ったホテルとは逆の道に静かそうなカフェを見つけたのでその店へ入ることにしました。従業員にバタバ

          故郷のちがう人

          金木犀

          シャツもニットも煩わしい寒さに 突然思い出す 私は貴方と出会って 情緒を磨きました わからない気持ちの落ち着きを 心地いいと感じられるようになりました 友達としてずっと一緒にいようね 私たちキスなんかもしたけれど 身体が触れ合っただけって 「なんか」と吐き捨ててしまえるって クールで格好良かったりするのかしらね 水槽越しに撮った貴方の写真を 見つめる日々から もう逃げることはできない 想い出ができちゃったんだからね 「愛を誓う」ってどういうことかしら いっそ不良のふり

          私が言葉に詰まるとき

          私が言葉に詰まるとき 私の中に「わたし」がいる 私の中の「わたし」は 今の今まで付き合ってきた「わたし」 これからも付き合っていく「わたし」 「わたし」は箱入り娘のように大事で さざ波のように寄せては返す 灯台のように辺りをてらし 足下には風があたる 私が言葉に詰まるとき 「わたし」の波が押し寄せる 私は灯台の灯りを探す 足下には風があたる 私が言葉に詰まるとき 私には正解が解っている あなたが気づいていない正解が解っている 気づいていない事の魅力に 気づくまでは 私

          私が言葉に詰まるとき

          9月の恋愛

          「こんばんはお身体にお気をつけて。」 夏の季節に取り残されたまま、私は貴方と手を繋ぎました。 朝方になって秘密を共有するように、私の肩に頬を寄せました。 このまま時間が過ぎたら、私は不幸せになるのだと思いました。 「不幸せ」という名の快感を性懲りも無く味わうことになるのだと思いました。 「今更信じてはもらえないでしょうか。」 コスモスの煌々とした咲き姿に背中を向けたくなるような気持ちです。 心を閉じて誰も入れることがなければ、その背中は真っ白ままです。 真っ白なまま、美しい

          9月の恋愛

          ひとり部屋

          なんだか今日は余計なことばかり考えてしまうわ ひとり部屋に帰るとわたしはひとり わたしにとって普通の光景に わたしはあなたのすべてを思い出して 寂しくなるんだと思うわ 苦しみに暮れて、眠りに落ち、 疲れた朝に目覚めた記憶も、 今日は今日までを一旦忘れて お酒を分け合ったことも そのすべてが大事なものばかりで わたしの心と身体を埋め尽くしていくわ あなたの抜け殻が やがて意味を無くした頃 また居場所を探しに行く 例えその線路に ふたりが立てなかったとしても 幸せな時間を

          ひとり部屋

          言質メモ

          執着は退屈である証拠になるので それは相手も大層退屈になります モノを贈る程度にしておきましょう 決して本当のことは言わずに はじめて起きたことのように 悪意を探り合いましょう 放つ言葉がない時に 血のように涙を流すでしょう よくない事かどうかは置いておいて 不健康を盾にしましょう 自分のせいにした時は ひたすら悔やみましょう 安売りしない事がプライドなのか プライドが無いことはいい事なのか ひたすら悩みましょう 酷い言葉をつかい 誰かを傷つけたくなったら 誰も知らな

          言質メモ

          言葉を出した途端に

          「大事」と言うと、わたしはモノのようで 「大切」と言うと、それは少しだけ愛かもね、 少しだけってことはそれが愛かもね 「当たり前」と言うと、朝はカーテンを開けて 「やっぱりね」と言うと、外は桜が咲いていた 待ちわびていたように、猫のように笑った どんな気持ちで 明け方の空を見ていたの 歳をとって、静かに静かに 一緒に過ごす時間が減っていく 「また今度ね」と言うと、涙が出るほどに、 心の中にはわたしたちの世界がきっとあった 「誰よりも」そういうセリフは好きじゃない 「僕

          言葉を出した途端に

          ダーリン

          空っぽの心に滲む 美しかったあの夜 「きちんと振ってほしかった」なんて つまんないこと言わないでよ こっちでは雪も降っていないよ 色っぽい理由に怯む またまた貴方の敗北 「こうしておけば惜しかった」なんて 言い訳ばかりしないでよ たどり着かない所が愛しいのよ あの言葉に込められていること きちんと伝わっていたかしら 怖くて涙が出ちゃうわあ 私にとって手紙が大事 あんなお酒に酔ったゲームで 躍起になって言うことではなかったわね 貴方の本当の気持ち 口に出すことが辛かった

          ダーリン

          声には出さないけれど

          声には出さないけれど 僕らは緩やかにすれ違う 私の話したいことはね、って 僕の気持ちを聞きに来る あれだけ忙しい毎日なのに 夜はなんだか眠れなくて 声には出さないけれど 抱きしめても遠い理由を話した 心なんてモノが 動いてしまった晴れた日は いっそフタリで出かけようか 君の分のストールも手に持った 自由にやってるよ、 キラキラしたくて仕方ない そんな風に素直でいたら 君はそこに居てくれますか? 僕はいつまでもここに居ます 愛しいだけ、寂しいだけ どれだけの「だけ」を

          声には出さないけれど

          朝が来る

          髪の毛を乾かして欲しい、でも前髪だけは大事なのと、ドライヤーを手に取った。 君は僕の家に、君が使う為のシャンプーとトリートメントを置いていた。 同じ場所で同じ匂いしてるの、何だか変でしょうと言っていた。 だらしなさが愛しいとするなら、夜だけ着けない上の下着だろうか。確かに、嘘の吐けない胸部の膨らみを見て、少しだけ、美しいと感じた、なんて、まるで芸術家を気取っていたかのようだ。 君との会話はすれ違いばかりだった。喧嘩をしている訳でもないのに、まるで遠くのものを指で指し示して

          朝が来る

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          舌の滔々とした仕草 相反して臆病な顔 何もかもにフィルターをかけて 正解にする 貴方の口から出た 「ベイベー」の後ろ姿を どこまでも追いかけて こんな島に辿り着いた 嘘ついてくれてありがとうね おかげさまでモノの良さが わかった気がするわ 涙を浮かべた理由は 言葉にするのも拙いくらい 野生的で情緒な心の中にある 離れたくないと思った 冷たい掌を握り返した 振り返りざまには 逆光が背中を差した

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