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【読書 #42】 かがみの孤城

辻村深月の『かがみの孤城』は、心を閉ざした中学生「こころ」が、鏡を通じて不思議な城に導かれる物語です。 学校で居場所を失い、孤独を感じていたこころは、同じ境遇の7人と出会い、共に時間を過ごす中で次第に心を開いていきます。 まず、こころが鏡を通り抜けるシーンは物語の象徴的な瞬間です。「輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物」。この場所は、現実の苦しみから逃れるための安全な避難所として描かれています。 次に、こころと他の6人が自分たちの過去と向き合うシー

    • 【読書 #41】 アルジャーノンに花束を

      『アルジャーノンに花束を』は、知能の向上とそれに伴う人間関係の変化を描いた感動的な物語です。 主人公チャーリイ・ゴードンは、32歳でありながら幼児なみの知能しか持ちません。しかし、彼は頭を良くするという夢のような提案を受け入れ、手術を受けることになります。 「知能が高くなることはすばらしいことだと思った」と彼は期待に胸を膨らませます。手術後、チャーリイの知能は劇的に向上し、天才へと変貌します。 この変化は、彼の内面にも大きな影響を与えます。例えば、かつては無邪気で純真だ

      • 【読書 #40】 ぼくらの七日間戦争

        『ぼくらの七日間戦争』は、中学生たちが大人たちに反抗し、廃工場に立てこもる物語です。 この作品は、子どもたちが自分たちの意思で行動し、大人社会に対抗する姿を描いています。 例えば、「勉強から解放されるって、あなた中学生よ。中学生から勉強を取ったら何が残るの?」という母親に対して、「何が残るって、ちゃんと手も足も顔も残ってるじゃんか」という子供たちの反論は、子供たちの視点から大人の理不尽さを突きます。 また、厳しい校則に対しても、「おれたちはセン公にうんこの面倒まで見ても

        • 【読書 #39】 失敗の科学

          『失敗の科学』は、失敗から学ぶ重要性を多くの実例を通じて描き出している。 著者マシュー・サイドは、失敗の認識と管理がいかに人間の進歩に貢献するかを示している。 例えば、航空業界の成功は「ミスの報告を処罰しない」文化にあるとし、これにより「多くの事故を未然に防げている」と指摘する。 また、医療ミスが改善されない背景として、「人はウソを隠すのではなく信じ込む」傾向を示し、その「努力」がかえって判断を鈍らせると説明している。 これら多くの事例を通じて、サイドは失敗がいかに価

        【読書 #42】 かがみの孤城

          【読書 #38】 限りある時間の使い方 人生は「4000週間」あなたはどう使うか?

          オリバー・バークマンによる「限りある時間の使い方 」時間管理と生き方についての洞察を提供する本です。 この本は、私たちの人生がわずか4000週間しかないという現実を直視し、どのように時間を効果的に使うかについて考えるきっかけを与えてくれます。 時間の限界を受け入れることで、初めて本当に重要なことに集中することができる 完璧を求めるあまり、行動に移せずにいる自分に気づかされ、まずは始めることの重要性を感じました。 限られた時間をより意識的に、そして価値あることに使ってい

          【読書 #38】 限りある時間の使い方 人生は「4000週間」あなたはどう使うか?

          【読書 #37】 ワークマン式「しない経営」

          土屋哲雄氏の『ワークマン式「しない経営」』は、常識を覆す経営戦略を紹介する刺激的な一冊です。 ワークマンは「残業しない、ノルマを課さない、期限を設けない」といった方針を掲げ、「しない経営」を徹底しています。 この戦略により、10期連続で最高益を達成し、ユニクロを超える国内店舗数を実現しました。 特に注目すべきは、データ活用ゼロからデータを元にした「エクセル経営」に転換し、急成長を遂げた点です。 著者は、「残業するくらいなら決算期を遅らせろ」と指示し、実際に遅らせても株

          【読書 #37】 ワークマン式「しない経営」

          【読書 #36】 ノーサイド・ゲーム

          『ノーサイド・ゲーム』は、企業内の陰謀や左遷という厳しい現実を背景に、主人公の君嶋隼人が新たな挑戦に立ち向かう物語です。 君嶋が異動先で直面するのは、成績不振で巨額の赤字を抱えるラグビー部アストロズです。 「ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋」は全く未知の世界での再建に挑みます。 このことは単なるスポーツチームの立て直しを超え、組織運営や人間関係の複雑さに向き合うことを意味し、自身の信念を貫きながらも、現実との折り合いをつける困難さは企業人として

          【読書 #36】 ノーサイド・ゲーム

          【読書 #35】 ファクトフルネス

          『ファクトフルネス』は、私たちが抱く世界に対する誤解を解消するための指南書です。 本書は、データと事実に基づいた世界観を持つことの重要性を説いています。 著者ハンス・ロスリングは、賢い人々ほど「世界はどんどん悪くなっている」という誤解を持ちがちであると指摘しています。 まず、「世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供は80%」という事実に驚かされます。 ロスリングは、この驚きをもたらすのは「恐怖本能」によるものであり、人々は悪いニュースに敏感になりすぎている

          【読書 #35】 ファクトフルネス

          【読書 #34】 どうせ死ぬのになぜ生きるのか

          名越康文氏の「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」は、根源的な問いに対する答えを仏教の実践を通じて探求する。 著者は幼少期からこの問いに向き合い始め、仏教の教えが唯一の答えであるという確信を得たと語る。 「行」としての日々の行動習慣の重要性を強調し、「方便」としての他者への親切行為が、人間関係を改善し心の曇りを取り除く手助けとなる。 「漠然とした不安」に満ちた現代で、その不安をも解消するためには、仏教の教えが非常に有益である。

          【読書 #34】 どうせ死ぬのになぜ生きるのか

          【読書 #33】 あなた次第でこの世界は素晴らしい場所になる

          『あなた次第でこの世界は素晴らしい場所になる』は、ひすいこたろう氏が日常のさまざまなシーンを題材にして、どんな状況でも前向きに捉える視点を読者に提供してくれます。 目の前の『現実』は変えられない。でも、『どう見るか』は変えられる 例えば、仕事で成果が出ないときでも、「それをどう解釈するかで、感情はいくらでも変化します」と言うように、視点の転換がいかに重要かを説いています。 解釈ひとつで、今いる世界を、そこから続くあなたの時間、人生を、素晴らしいものに変えられる 我々読

          【読書 #33】 あなた次第でこの世界は素晴らしい場所になる

          【読書 #32】 ケーキの切れない非行少年たち

          宮口幸治氏の『ケーキの切れない非行少年たち』は、児童精神科医としての経験を基に、非行少年たちの根本的な問題に光を当てた書籍だ。 著者は、彼らが単に反省力のないだけでなく、認知能力にも問題を抱えていることに注目する。 凶暴で手に負えない少年たちの多くが、認知力の低さにより『ケーキを等分に切る』こともできないという現実がある。 非行少年たちの認知機能の弱さと、それが彼らの問題行動にどう影響しているかを鮮明に示している。 さらに、本書は非行少年の特徴についても深く掘り下げて

          【読書 #32】 ケーキの切れない非行少年たち

          【読書 #31】 陸軍中将 樋口季一郎回想録

          『陸軍中将 樋口季一郎回想録』は、第二次世界大戦時の日本の陸軍中将であり、特にその人道的な行為で知られる樋口季一郎の半生を描いた待望の復刻新版だ。 本書は彼がナチスの迫害から逃れたユダヤ難民を救った功績や、戦後における重要な役割を詳細に記録している。 樋口季一郎は極東のシンドラーと称される人物であり、その人間性と勇気に光を当てるエピソードが数多く収められている。 例えば、彼が命を懸けて救援を行った満州でのエピソードは以下の通りだ。 ユダヤ人たちは極寒の満州で絶望の中に

          【読書 #31】 陸軍中将 樋口季一郎回想録

          【読書 #30】 イーロン・マスク 上

          ウォルター・アイザックソンによる『イーロン・マスク 上』は、南アフリカでいじめられ、心に傷を負いながらも、「電気自動車、宇宙開発、AIの時代へ世界を導いた」イーロン・マスクの軌跡を描く壮大な伝記である。 アイザックソンは2年間にわたりマスクを追い、彼の打ち合わせに同席し、工場を一緒に歩き回り、家族や仕事仲間、敵対者からも話を聞いている。 結果、読者はマスクの内面と外面の双方に深く触れることができたようだ。 マスクの幼少期についての描写は非常に生々しくて、少年時代は物理的

          【読書 #30】 イーロン・マスク 上

          【読書 #29】 行動経済学が最強の学問である

          『行動経済学が最強の学問である』は、理論を丸暗記するのではなく、行動経済学の「本質」を掴むことができるよう設計されており、ビジネスシーンでの実用性を重視した内容となっています。 認知のクセが意思決定に与える影響を解説し、「私たちの脳はパターンを見つけることに優れているが、時折それが誤った結論を導くことがある」と述べています 。 状況が意思決定に与える影響については「人間の判断は、置かれた状況や環境に大きく左右される」との見解が示されています 。この理論は、マーケティング戦

          【読書 #29】 行動経済学が最強の学問である

          【読書 #28】 神・時間術

          本書の中心にあるのは、「集中力の向上」と「時間の最適化」です。 例えば、「朝のゴールデンタイム」を活用することを強調しています。 朝の数時間は集中力が最も高まる時間帯であり、この時間を使って重要な仕事を片付けることで、効率が飛躍的に向上します。 「1日の中で、普通の人の4倍以上の仕事をこなして、2倍以上の自由時間を確保する」とは、この成果を示す具体的な例ですね。 時間を投資として捉える 「時間は、人生の通貨です。時間をどのように使うかによって、ありとあらゆるものを手

          【読書 #28】 神・時間術

          【読書 #27】 ソクラテスの弁明・クリトン

          私は自分が知っていると思っていることが、実は何も知らないことだと知っている ソクラテスは「無知の知」を強調し、自らの無知を認識することの重要性を説く。自分の知識の限界を理解し、真の知識を追求する姿勢を表している。 悪をもって悪に報いることは正しくない ソクラテスは正義と道徳の遵守を重んじている。 彼は市民としての義務を果たし、法を尊重することを強調しながらも、自らの信念に基づき行動する重要性を説いています。 この本は自分の信念を守ることの大切さと、そのために必要な勇

          【読書 #27】 ソクラテスの弁明・クリトン