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#8 心機一転!中学デビュー ~中学生時代(1)~

(前回の記事)父親に対する不信感 ~小学生時代(4)~

 6年生の時に、母が中学校の入学説明会でもらってきた「入学のてびき」を家で見かけて、中身をむさぼるように読んだ。クラスの数、授業について、制服のこと、給食から弁当に変わること、そして部活のことなど、私にとっては、夢の世界への招待状のようであった。毎日てびきを読み、希望にあふれる中学校生活を想像して、わくわくしながら、いや、メラメラと闘志を燃やしながら、小学校生活が終わるのを待ちわびていた。

 私の通っていた小学校は、1学年のクラス数が少なかったため、中学校で同じ小学校出身の子と同じクラスになる人数はかなり少なかった。だいたい1クラスで2~3人程度だったであろうか。そのおかげで、「私は変われる」ので、中学デビューが楽しみで楽しみでしかたなかった。「勉強ばっかりしている、まじめで暗い子」から「勉強も部活も活躍していて、おもしろいことも言えるリーダー的存在」に変身すべく、念入りにシミュレーションと人格改造のための準備を始めたのだ。

 まずは、この引っ込み思案の性格を変えて、織田信長のようなリーダーになることを考えた。この部分は、勉強ができるだけではみんなに認めてもらうのは難しいと思っていたので、アイドルやミュージシャンの新曲など、「流行に敏感だ」というところや、ドリフやひょうきん族、吉本新喜劇などのお笑い番組にも詳しくて「おもしろい人」だという部分を打ち出して、明るくて積極的なところを打ち出すことにした。

 それから、勉強だけでなく、部活動でも活躍したかったので、野球部ではなく、サッカー部か、県大会出場など実績のあった剣道部のどちらかに入ることに決めた。野球部だと、小学校から野球をやっている子に比べてすでにスタートラインで差がついてしまっているからだ。同じスタートラインなら、しっかり練習して、そして競争に勝って活躍できる自信がなぜだか私の心の中にあふれていたのだ。

 そして、その日はやってきた。

 服は学ランになり、それだけでも気分一新、あの暗い小学校時代から脱出だ。家から中学校までは歩いて30分もかかったが、さながら織田信長が岐阜から京に上洛したような気分だ。運命のクラス発表。1クラス40人のうち、やはり同じ小学校の子は自分も含めて3人しかいなかった。そのうち1人は女子、もう1人は、1年生の頃からずっと一緒だが、比較的自分と仲良くしてくれたクラスの人気者の男子だった。なので、私の暗い過去を他の小学校出身の新しいクラスメートにばらされる危険性はない。

 教室に入り、近くの席のクラスメートが話しかけてくる。私の過去を知らない彼らに、ついに本当の自分を披露できる時が来たのだ。

 自分を隠すことなく、ありのままを表現できることが、こんなに気持ちのいいことなのだと、初めて知った。もうこれで迷わなくてもいい。そう思えるのが本当にうれしかった。

 そして部活動。初めにサッカー部の部室に行ったが、先輩方がなかなかのやんちゃぶりで、「入部テストだ」と称して、成人向け雑誌のとあるページのセリフを大声で朗読させるという、大変タフな精神力が要求される「入部テスト」だったので、こっそり脱出してきた。なので当初の予定通り、剣道部に入部することにした。50人もの入部があったので、大変激しい競争になるのだが、スタートラインがほぼ同じだということで妙な安心感と根拠のない自信が生まれていたために、部活に通うことも楽しみで仕方がなかった。

 部活については、次回以降で詳しく書く。私はこのような感じで、狭くて居心地の悪い我が家を飛び立ち、中学校に通って見事に生まれ変わった。「華麗なる変身」とまではいかなかったが、中学デビューは順調にスタートし、勉強面でも最初の中間テストでも学年順位ベストテンにランクイン。しかし、1番ではなかった。クラスでも1番ではなかった。この部分については、小学校時代にはない敗北感を味わったのだが、逆にこの結果が勉強面で今後の私に大きなプラスとなった。期末テストでは学年ベスト3に入り、クラスでは1番となった。中学校が始まった最初のうちは「おもしろキャラ」を売りにしていたので、これらの結果でクラスメートから、そして担任の先生や各教科の先生、部活の顧問の先生からも、私にとっては気分のよい「尊敬のまなざしと注目の視線」を浴びることになり、着実に人気者へのステップを歩み始めていた。

 私は本当に恵まれている。実家は貧乏で、3Kの部屋に5人が住むという劣悪な住環境の中で暮らしていたのだが、私は勉強が得意で「自分に自信がある」という強みを持っていたおかげで、中学デビューを成功させることができたのである。おかげでさらに自分に自信を持ち、大変身を遂げることができた。ただ、自分に自信がついたことで、両親に対しての思いはさらに複雑な様相を呈し、後に深刻な事態を引き起こすことになったのだが、それはもう少し先に話すとして、次回も中学校での出来事を書くことにする。

                           (つづく)

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