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どうして子育てメディアで「事実婚」を取り上げたかったのか

私が所属する編集部は、「子育てに笑いと発見を」をテーマに、コノビーというウェブメディアを運営している。

多くは育児ライターさんにマンガ記事を書いていただいたり、オリジナルの連載企画を作ったりする中で、私は育児関連の書籍をウェブ記事化し、内容の一部を読者に届けている。
主にはウェブマーケター業務をしているけれど、今回は編集者としてコン
テンツのお話をさせてほしい。

コノビーで働く「わたし」の気持ち

コノビーの読者の多くは、育児中のママとパパ。
これはどの子育てメディアも同じだと思う。
近い属性のユーザーに向けて発信を行う子育てメディアの中で、コノビーはどんな存在でいたいのか、そこで働く私は何を伝えていきたいのか、個人的なキーワードは、「多様性」だった。ずっと。

私ははじめからコノビーの編集部員だったわけではなく、社内異動でここにやってきた。
コノビーの経営母体である株式会社LITALICOは「障害のない社会をつくる」をビジョンとして、主に障害者支援業を行っており、私も療育と就労移行支援に4年間従事していた。

「障害」とは個人にではなく、社会の側にある。
メガネの開発によって「視覚」に困難のあった人の多くが、「障害者」ではなくなったように、技術と支援と配慮によって、「障害」はなくせる。
そのビジョンに共感して飛び込んだ会社なのだ。

障害のある当事者、家族、それを取り巻く人たちをみていて学んだことは、障害による特性や困り感は、その人の一部分にしかすぎず、やりたいことも好きなものも、何に怒って何に感動するのかも、実に多様だ、ということ。

支援をしてみてはじめて気づいた。
自分はフラットな価値観だと思っていた私の中にも「障害者」とひとくくりにして、個をみないままに、勝手な想像とイメージで当事者の気持ちを決めつけている部分が、確かにあった

「こうされたら嬉しいだろう」「こうゆうことに困っているだろう」と善意からであったとしても、「障害者」というステータスに囚われて、そのもっと外側にある「個人」と本当にフラットな心で向かい合えていなかったのだ。

これは「子育て」にもそのまま当てはまるのではないだろうか。
「母」「父」「専業主婦」「ワーママ」「イクメン」など、育児をとりまくさまざまなレッテルが先に貼られてしまって、イメージや「あるべき像」が先行する。
それによって、「その人だけ」の喜びや悩みが、個性そのものが薄れてしまう。

「育児中の女性」「育児中の男性」は他人がおもう理想の型になど、はまらなくていいのだ。
その人たち「家族」の中で最適なカタチ、最適な生き方を自由に選択していい。障害者も健常者もそうであるように。
私はこの信念のもと、コノビーで記事を作っている。

「事実婚」の世間的なイメージ

私は法律婚をして、夫の姓に改正している。
「わたしは」その行為に抵抗がないし、発生する各種手続きも、そこまで面倒には感じなかった。
しかしこれはあくまで私の場合であって、自分にとってなんでもないことに、大きな負担や耐えがたい苦痛を感じる人もいるのだ。

もっと言えば、そんなに大きな理由がなくても「なんとなく」戸籍や姓を考えたっていい
「戸籍は重要」と考える人もいていいし、「戸籍はどうでもいい」と考える人がいたっていい。いいのだ、まったくいい。
自分にはない感覚に対して、否定せずに存在を認めること、それが「多様性」だと私は考えている

しかしながら、現在「事実婚」に対する意見は、厳しいモノも大きい。
・子どもが苗字がちがうのはかわいそう
・手続きが面倒くさいなど怠慢、みんなやってる
・苗字が変わるのが嫌なんてワガママ

言いたいことは大筋わかるし、そう思う「気持ち」自体は否定しない。
だが、あなたが誰にも文句を言われずに「法律婚」を選択したように、「事実婚」を選択する人、「夫婦別姓」を望む人にも、文句を言わないでほしい。
それは「多様性」の否定であり、不平等だ。

法律婚の中に夫婦別姓が取り込まれることに反対する意見もきくが、従来通りの「改姓」も選べるのだから、あなたは何にもおびやかされたりはしない。
新しい考えや価値観は怖いのかもしれないが、「自分が不安だから」という理由で、誰かの切実な「希望」を簡単に摘まないでほしい。
「わたしは」そう思う。

水谷さるころさんの書籍との出会い

書店で偶然手に取った、水谷さるころさんの書籍『目指せ!夫婦でツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)を読んだとき、これは絶対にコノビーで紹介したいと思ったのだ。

バツ1同士の再婚カップルであるお二人は、さまざまな理由から「事実婚」を選択して子どもを授かる。
不妊治療、出産、戸籍など、事実婚当事者としての心境や制度のお話をわかりやすくマンガ化されている本書は「子育ての多様性」を体現されていると、私は感じている。

出版社の編集さん、作者の水谷さまに、厚かましくも再編集のご相談をし、細やかな原稿確認をしていただき、また大きな心で受け入れていただき、コノビーでの記事化が実現した。

全5本に編集させていただいた記事は、現在もコノビーで公開中。

子育ての「多様性」をデザインできる編集者に

私が編集するのは「コノビーの育児記事」だが、そのコンテンツを活かして、多くの育児当事者、そして取り巻くすべての環境に届けたいものは、子育てはもっと自由でいい、自分たちが幸せになるために、他者の「自由」も尊重しよう、という「多様性」のメッセージだ。

車いすでどこにでもいける世界
事実婚であることに偏見を持たれない世界
障害という言葉のない世界
育児に笑いと発見があふれる世界

既存の凝り固まった価値観や、文化さえも編集したい

尊大で大げさなビジョンかもしれない。
今はできることも少なく、誰かに笑われてしまうのかもしれない。

だからまずはこの記事を届ける。
いつか大きな編集につながっていくよう、願いを込めて。


記:瀧波和賀

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