就労支援日記⑲~就労定着の秘訣は「好きなこと探し」~
今回の就職対策講座のテーマは、「就労定着」。
風の丘流定着支援は、仕事以外の生活領域を豊かにすることからはじまる。
簡単に言えば、好きなことをして、ささやかながら楽しみを堪能できる生活。
好きなことを犠牲にして仕事をするんじゃなくて、好きなことをするために仕事をする、という感覚。
そうはいっても、改めて「好きなこと」と言われても、なかなか簡単には見つからないもの。
では、みなさんと一緒に「好きなこと探し」の旅に出てみましょう。
ということで、今回の講座で用意した大きな設問はこれ。
『働かなくてもすむほどのお金を手に入れた後、自分は何をするのか?』。
なんとも不可思議な設問に見えるかもしれないけど、とりあえずここから最初の質問。
「お金の入金を確認した翌日、あなたは何時に起床しますか?」
うわぁーという声が上がる。
“たぶん、朝には起きられないと思う”
“すぐに目が覚めてしまって、早い時間に風の丘に電話すると思う。どうしたいいのかわからないので”
“周囲の人に気付かれないように、通常の時間に起きる”
次の質問。
「朝食は何を食べますか?」
“とりあえず吉野家かすき家に行って、落ち着く”
“たぶんステーキを食べていると思う”
“なるべく高いお店に行く”
“気づかれないように、普通に食べる”
次の質問。
「昼食までは何をしていますか」
“お金をドーンと使いたい”
“風の丘に来て、相談する”
“保険の見直しをする”
“家にこもる”
“できるだけ普通に生活して、様子をみる”
「その後は具体的にどんな生活をしたいですか」という質問に対しては、異様な熱気がほとばしる。
“しばらく東京で遊ぶ”
“やりたかったゲームを全部やる”
“車を買い替える”
“好きなものを食べ過ぎて太っていると思うので、ダイエットをする”
“いままでできなかったスポーツをする”
“新しい料理やお菓子作りにチャレンジする”などなど。
そこで最後の質問。
「やりたいことをし続けて、1年が経ちました。さて、いま何をしていますか?」
一気に沈黙。
“ひと回りして、またいまと同じように風の丘に通っちゃってるんじゃないの(笑)”
“何かスポーツでもしているのかな…”
“やっぱりゲームばっかりしてるんじゃないか…”
“午前は寝てて、午後はネットして、夕方から風の丘にでもいってるんじゃないかな…”
すると一人の方が、こんなふうにポツリ。
“ボーっと、一日を過ごしているかもしれない。今頃だとこたつに入って、テレビ観て…、みたいな感じで”
すかさずみなさんから、“それ、さすがにまずいんじゃないの?”と半畳が入る。
“じゃあ…、野菜栽培でもしようかな…”
この歯切れ悪さは、いったいなんだろう。
これまでやたらと道案内の看板が多い、険しい山道を歩いていたと思ったら、急に目の前に広々とした高原に出くわしてしまった。
その高原は、いままでの視野ではおさめられないほど広大で、あまりにも眩しすぎて輪郭さえぼやけている。
もちろん案内の看板なんてない。
途方にくれながらも、次第に明らかになってくることがある。
この高原は、いつもあったのだと。
いままでは道案内に目を奪われ過ぎて、足下にひろがる高原に気付くことさえなかったのだと。
高原のただ中において頭上を仰ぎ見れば、そこには遥かなる大空が。
高原に横たわりながら、一日中ずーっと青空を眺め続けてみること。
そして、道案内看板のデザインを、最初から自分なりに掘り起こしてみること。
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