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Inbal Pinto《LIVING ROOM》を見て

私は、身体表現の作品を見るのが好きで、
というか音楽にしろ、演劇にしろ、サーカスにしろ、
その場で溶けて無くなってしまう時間と動き
肌に感じる音、振動、光、
そういったものの中に身を置く、という経験がたまらなく大好きです。

そういったものを見ていく中で、森山未來さんの活動は眼を見張るものがあり、いつも注目しているのだけど、それを知ってくれていた友人が、彼がイスラエルでコンテンポラリーダンスの勉強をしていた時に所属していたInbal Pintoという演出家の作品が日本に、しかも近所の劇場で観れると教えてくれて、昨日一緒に観劇してきました。

Inbal Pintoの “LIVINGLOOM”という作品です。

観終わって、私はこの日の気持ちを絶対に書き留めなければならない想いに駆られています...

そのあまりの美しさ、素晴らしさに、中盤から終わりまでずっと泣いていて、
隣で見ていた友人にバレないようにしていたつもりが振動でバレていたようで、見終わって顔をぐしゃぐしゃにしている私を見て
笑いながら「ゆっくり、取り戻そうね(平常心を)」と言われたのも忘れたくない。笑
嬉しくて、幸せで、感情が爆発して、自分の中から溢れ出るものを止めることは不可能な時間でした。
こんな感情の体験ははじめて...
長年恋焦がれていた人にやっと会えたような...
この気持ちに関してももう少し考えたい気もするけど、一旦とりあえず、見たものを記してみます。


舞台は一つの部屋でできている
小さな村の昔の物語を絵にしたような壁紙に壁掛けが二つ、キャビネットが一つ、照明が一つ、一人がけのテーブルと椅子
照明によって幸福に感じたり、不安に感じたり、怒りを感じるような部屋の色に変化する

モランミュラーという女性ダンサーの素晴らしさと、世界観が完全に一体化しているあの心地よさ
自分の体が自分のコントロールを拒否する動きが特に巧妙で、
彼女の強固な身体性が私たちにしっかりと不安を感じさせた

私は彼女の表情とキュートな足先に夢中だった
セットもとても巧妙で、より世界観を広げていた
感情に合わせて変わる壁紙の色、自由に動きまわる椅子、くるくる周り出す照明、壁にひっついて動き出すポット、急に世界が不安にぐるぐる回り始めるのに合わせてクラクラと踊る女性

イタマールセルッシという成熟した男性ダンサーはキャビネットの中から登場するという衝撃の演出にも関わらず、彼女は全く動揺していなかった様から、彼は彼女の一部?同一人物?という解釈もできるのかもしれない
彼のなんだか不気味ななまめかしい、海の中を歩いているような動きと、その時の青い壁紙も忘れがたい

人物が二人になったことで、対象に対しての怒りや愛情などの表現が加わって、世界観に勢いが出た
だが男性はまたキャビネットの中に消えていき、部屋に一人残り、
ぽつんと佇む彼女から寂しさを感じて胸がぎゅっと苦しくなる
寂しさって、最初からいなければ感じないのに、そばにいた人がいなくなった時にふと感じるよなぁ…

終盤になり、部屋の角から壁紙の奥に入り込むような形で彼女は消えていき
これで終わりかと思いきや、
今度は壁紙の中にアニメーションと一緒に現れた彼女
壁紙の中でアニメーションとなった動き回る椅子と過ごし
最後は壁紙の一部となって、終わった

……………………………………………………………

はぁ。。。
とりあえず観たものを書き起こして残したい衝動で
ここまで書いてみました。
兎にも角にも、素晴らしく感動しました!
これに尽きます!
宣伝としてyoutubeにあがっていた動画をつけておきます。
雰囲気が少し伝わるかと思います。↓

舞台の後は、演出家のInbal Pintoさんのポストトークがあり
美術も演出も振り付けも彼女がしていたことを知り、あまりの多才さに驚きました…!

お話を聞いて面白かったのは、
見える範囲以上、物理的なもの以上のイマジネーションを作っているということ。
あのセットの壁紙の外の世界があるのか?外側とは、内側とはなんなのか?
入口があり、出ることも入ることも選べる状況であったこと。
最後壁紙の中に入った彼女は、望んで壁紙の中に入ったのか、
壁紙の中にある小さな村の世界は彼女にとって「外」だったのか、「壁紙の中の世界」にいるつもりなのか….

Inbal Pintoさん曰く、観た人のイメージを詰めるための箱を作っているのだと話していました。

観た人の数だけの物語があるのかもしれない。
こうした余白、想像する余地のある作品がとても好きだなぁ。。

ちなみに魅力的なダンサーのモランミュラーさんと森山未來さんが共演している作品の紹介もあり、youtubeで観れると聞いて早速観てみました。
コロナ渦であるうちに作りたかったというこの作品は、
イスラエルでモランさんを1日、日本で森山さんを1日ずつ撮影したものを合わせた、渡航できない状況での新しいアートの形を提案したものだそうです。

これもたまらないですね。
『OUTSAIDE』という作品です。


この作品を作るクリエーションの動画もありました↓

以上、Inbal Pintoさんの作品を見た感想でした!
はー…幸せっ!

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