会話や議論の雰囲気を「はい」にするために。
「はい」か「いいえ」であれば、「はい」と言う方がいい。なぜなら肯定するということは、前向きさを示すことに繋がるからだ。「はい」というたったそれだけの言葉には、会話や議論を、明るく前に進める力がある。
一方で「いいえ」には、もちろん、後ろ向きな効果が含まれる。否定することは、もうその話を聞きたくないというニュアンスとともに、相手よりも自分の意見なり言葉なりを発したいというアプローチに繋がる。つまり受け答えとして、「いいえ」というのは打ち切りの意味を持つのだ。それはその否定された内容に向けてだけでなく、その会話や議論そのものへの否定の感情をアピールすることになってしまう。
もし、自分の意見を言いたいのだとしても、「いいえ」と言うよりは「はい」と言って相手の言葉を受け止める必要がある。そうしなければ、いざ自分の意見を言ってみようとしても、その会話や議論の雰囲気は「いいえ」の言葉によってケチがつけられている状態になっているのだ。そんな汚れた土俵で発せられる意見には、どうしても聞き入れ難く、受け入れ難い雰囲気が伴うものだ。
そのため、「いいえ」に代表される否定の言葉は、自分の意見を表明するイントロとしては全く不適格なのだ。それは音の外れた入場曲のようなもので、それが聞こえてくるだけで周囲の人々は眉根をしかめ、嫌な気持ちになり、顔を背けたくなる。そんな状態で、まともにその意見が扱われるはずもない。また、そんな意見が採用されたところで、それはまともな、正しい形で受け入れられたとは、とても言えない。
誰かの話を聞いた後に、「そうだね、でも……」と話しはじめることの重要性は、あらゆるところで説かれている。その意味は、「はい」が会話や議論を前向きに行おうとする意思表明になる、ということである。そして反対に、「いいえ」は議論を打ち切って、ただ自分の言葉を発したいというアピールになってしまうということなのだ。
だから私達は、会話や議論を建設的に、そして実りある者にするためには「はい」から始めた方がいい。それでも、感情的になって上手くコントロール出来ないこともあるだろう。「いいえ」が口をついて出てしまうこともある。けれどできるだけの意識でもって、私達は「はい」ということを忘れてはならない。
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