ストーリーにおける「死霊」の2パターン

 それというのが現実にどのように思われているかは別にして、死霊は創作ストーリーにおいてしばしば登場する人気者である。ジャンルで考えても、それがいないものはないのではないかというくらい、霊は扱われる。そして時代や国を考えても、古今東西、死霊はあらゆるストーリーに出てきては、あらゆることをして、生きている登場人物達と関わることになる。

 とはいえ、死霊とストーリーとの関係というのは多様ではあるが複雑ではないものだ。つまり死霊は物語の中で基本的には2つのパターンとしてしか描かれることはない。時代や地域やテーマ性などをいくらでもこえてくる死霊ではあるが、その結末に注目すると、それはとてもシンプルに理解できるのである。

 即ち、死霊はその死の理由が「明らかになる」か「不明なままである」かのどちらかだということである。これは単に、ストーリー的にそうであるか否かでしかなく、それによってジャンルなどがわけられるわけではない。
 けれど、たとえば、死の理由が明らかにならない時は大抵の場合ホラージャンルである。反対に明らかになる場合はホラージャンルでない場合が多い。つまり死霊の過去がわかるかわからないかで、ストーリーというのはパターンがわかれるということである。
 なぜなら死霊とは、そもそも怖いイメージを持っている存在だからである。それは最初に、生者にあだなす者として登場する。敵として、あるいは危険を及ぼしかねないものとして。
 しかしもし、その過去が明らかになるのなら、死霊は人間だったということがはっきりするのだ。つまりそれは1人の登場人物である。よく漫画などで、登場時はホラータッチだった死霊が、その成仏に際して生前の姿を取り戻して描かれるようなことがある。それはまさに、死霊の死の理由が明らかになった結果、ストーリーのホラー要素が軽減されたということなのだ。

 そして、もし死の理由即ち過去が明らかにならないのなら、それはもちろん死霊のままである。だからそれは怖い。怖い現象であるだけだ。登場人物達の敵で、危険な存在。当然にホラーストーリーでしかない。死霊が死霊のまま、なんの解決にもならずバッドエンドを迎える。そんなストーリーがたくさんある。

 そういうわけで、死霊とは私達の見聞きしてきたストーリーにことごとく存在できる人気者であるが、実はそのパターンは2つに絞られる。それをわける基準は、その死の理由が「明らかになる」か「明らかにならないか」である。なぜなら明らかになることは怖くなくて、明らかにならないことは怖いからだ。
 そのホラーテイストという点において、ストーリーの中で扱われる死霊は雰囲気を変える。だから死霊とは単に怖い存在なのではなく、これだけ様々なジャンル、時代、地域のストーリーに存在し得るのである。

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