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(読書感想文)川上未映子『黄色い家』

・あらすじ 十七歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解し……。人はなぜ犯罪を犯すのか。世界が注目する作家が初めて挑む、圧巻のクライム・サスペンス。 ・感想 川上未映子さんの新刊。600頁もある長篇だが、没入感凄すぎて2日で読み終えてしまった。そしてしばらく回復不能なくらいメンタルをえぐられた。 本来は生真面目で自分の損得より

    • 大切な言葉たち

      『嫌なことが巡ってくる率は決して、変わんない。自分では決められない。だから他のことはきっぱりと、むちゃくちゃ明るくしたほうがいい。』 キッチン/吉本ばなな 『私は、貧乏という試練は甘んじて受け入れるが、貧乏くさいのはお断りなのだ。』 ぼくは勉強ができない/山田詠美 『夜にはっきり感じた孤独は忘れられません。孤独は、人生にはつきものです。誰かといても癒されるものではありません。はっきりと意識してはだめです。ふわふわと周りを漂っているときは、息をひそめて吸うのを避けるのです。

      • 人生弱小ヒューマン

        満員電車でワンピースの裾がドアに挟まり、"こちら側"が開くまで電車から降りられない人生 2人1組の相手は永遠に先生、の人生 ばぁばが「お友達と食べてね」とくれたお菓子を一人で食べる人生 Twitterでカップルラブラブツイートをしているひとたちを片っ端からブロックすることが日課の人生 自販機でお茶を買ったのに、お釣りに気を取られてお茶を取り忘れる人生 コンビニで買ったばかりのビニール傘を盗まれる人生 電車の座席で両隣ありえんほど脚を開く男性に挟まれ、一生懸命体をす

        • (読書感想文)原田ひ香 『DRY』

          ・あらすじ 北沢藍は職場の上司と不倫して、二人の子供を置いて家を出た。十年ぶりに実家に戻ると、男にだらしない母と、お金にがめつい祖母がうら寂しく暮らしていた。隣に住む幼馴染の馬場美代子は家族を見送り、今は祖父をひとりで看ている。介護に尽くす彼女は、孝行娘とあがめられているが、介護が終わったその先はどうやって生きていくのだろうか。実は彼女の暮らす家には、世間を震撼させるおぞましい秘密が隠されていた。注目の作家初のクライムノベル。 ・感想 女性の貧困問題がテーマとあるから社

        (読書感想文)川上未映子『黄色い家』

          (映画鑑賞記録)ハン・ジェリム監督『非常宣言』

          ・あらすじ 娘とハワイへ向かう飛行機恐怖症のジェイ・ヒョク(イ・ビョンホン)は、空港で執拗にふたりにつきまとう謎の若い男(イム・シワン)が、同じ便に搭乗したことを知り不安がよぎる。KI501便はハワイに向け飛び立つが、離陸後間もなくして、1人の乗客男性が死亡。直後に、次々と乗客が原因不明で死亡し、KI501便は恐怖とパニックの渦に包まれていく。一方、地上では、妻とのハワイ旅行をキャンセルしたベテラン刑事のク・イノ(ソン・ガンホ)が警察署にいた。飛行機へのウイルス・テロの犯行予

          (映画鑑賞記録)ハン・ジェリム監督『非常宣言』

          ひとりでも大丈夫だけど、誰かに大事にされたい

          一人で暮らしているお家の中でベッドや机の角に小指をぶつけて一人静かに悶え苦しんでいるとき、人生について考えてしまう 人前で派手にすっ転んだ時も同じく人生とは、と考えてしまう たとえば誰かと一緒にいる時に小指をぶつけたら 「いた〜い!ぶつけちゃった〜!えへへへへ」 みたいに痛いという感情を共有できるから、物理的な小指の痛みはあったとしても、精神的なダメージは一瞬で軽減することができる だがしかし、ひとりの時に小指をぶつけたりすっ転んだりしたときは、ひとり大人しく無表情

          ひとりでも大丈夫だけど、誰かに大事にされたい

          (映画鑑賞記録) 三宅唱監督『ケイコ 目を澄ませて』

          ・あらすじ 嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出すーー。 ・感想 岸井ゆきの主演、監督は『きみの鳥はうたえ

          (映画鑑賞記録) 三宅唱監督『ケイコ 目を澄ませて』

          2022年のベスト5(映画編)

          観る側のセンスが問われるような、結論を委ねてくるような映画はニガテ 分かりやすく人が沢山死んだり、復讐しまくる映画だ〜いすき!な映画ヲタクによる2022年ベスト5 ちなみに2022年、映画館で観た映画は68作品でした 1位 「RRR」 S・S・ラージャマウリ監督 ポスターからして絶対に私は好きでは無いタイプの映画だったのに、なんとなくで観たらベストワンに躍り出てしまったナートゥ。 完全にふたりはプリキュア☆なんだよなぁ(観た人には伝わると信じている)

          2022年のベスト5(映画編)

          (映画鑑賞記録)好きに勝るものなしでギョざいます/沖田修一監督『さかなのこ』

          ・あらすじ お魚が大好きな小学生"ミー坊"は、寝ても覚めてもお魚のことばかり。お魚を、毎日見つめて、毎日描いて、毎日食べて。他の子供と少し違うことを心配する父親とは対照的に、母親はそんなミー坊を温かく見守り、心配するよりもむしろその背中を押し続けるのだった。高校生になり相変わらずお魚に夢中のミー坊は、町の不良ともなぜか仲良し、まるで何かの主人公のようにいつの間にか中心にいる。やがて一人暮らしを始めたミー坊は、思いがけない出会いや再会の中で、たくさんの人に愛されながら、ミー坊だ

          (映画鑑賞記録)好きに勝るものなしでギョざいます/沖田修一監督『さかなのこ』

          (読書感想文)同情さえ平等ではない/高瀬隼子 著『おいしいごはんが食べられますように』

          ・あらすじ 「二谷さん、わたしと一緒に、芹川さんにいじわるしませんか」 心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。 職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芹川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。 ・感想 芥川賞受賞作品は苦手な場合が多く普段あまり進んで手に取らないが、タイトルと帯に惹かれて購入。食事と人間関係の密接な関係が描かれていてとてもおもしろかった。常に食い意地をはって生き

          (読書感想文)同情さえ平等ではない/高瀬隼子 著『おいしいごはんが食べられますように』

          (読書感想文)じぶんの幸福をみつめる/江國香織 著『間宮兄弟』

          ・あらすじ 兄・明信、35歳、酒造メーカー勤務。弟・徹信、32歳、学校職員。2人暮らし。読書家、母親思いで、マイペースで人生を楽しむ兄弟だが、おたくっぽいと女性にはもてない。一念発起で恋人をつくろうと、徹信の同僚・依子と、ビデオ屋の店員・直美を誘って家でカレー・パーティーを開く。不倫の恋に悩む依子は兄弟には興味なし。明信は直美をデートに誘うが断られる。その後徹信は、明信の同僚・賢太の妻・沙織に心惹かれるが冷たくふられる。しかし、直美の妹・夕美は徹信に興味を持つ。そして、兄弟の

          (読書感想文)じぶんの幸福をみつめる/江國香織 著『間宮兄弟』

          (読書記録)8月に読んだ本

          1.教室がひとりになるまで/浅倉秋成 2.ママの仕事はデリヘル嬢/長谷川華 3.生命式/村田沙耶香 4.殺人鬼がもう一人/若竹七海 5.殺人出産/村田沙耶香 6.じっと手を見る/窪美澄 7.とんこつQ&A/今村夏子 8.夜に星を放つ/窪美澄 9.野良猫を尊敬した日/穂村弘 10.トリップ/角田光代 11.ふたり狂い/真梨幸子 12.鞠子はすてきな役立たず/山崎ナオコーラ 13.鬱屈精神科医、占いにすがる/春日武彦 14.今、出来る、精一杯。/根本宗子

          (読書記録)8月に読んだ本

          (読書感想文)風俗版・孤独のグルメ/爪切男 著『きょうも延長ナリ』

          ・あらすじ 毎日なんとなく退屈で、なんとなく満たされない。そんな迷える40男はきょうも風俗店に通う。狭いホテルの一室で風俗嬢と二人きり。一緒にかくれんぼをしたり、サッカーを観戦したり、ときにはコンプレックスを抱える女性を励ましたり。"Hなこと"をするだけでは終わらない、ちょっとおかしな風俗回遊記。「風俗も人生も、楽しみ方はひとつじゃない」 『死にたい夜にかぎって』著者・爪切男が贈る風俗店での"恋愛ごっこ"エッセイ。 ・感想 風俗体験記も書き手によっては文学になり得てしま

          (読書感想文)風俗版・孤独のグルメ/爪切男 著『きょうも延長ナリ』

          (読書感想文)日常の延長線上にある恐怖/芹沢央 著『許されようとは思いません』

          ・あらすじ 「これでお前も一人前だな」入社三年目の夏、常に最下位だった営業成績を大きく上げた修哉。上司にも褒められ、誇らしい気持ちに。だが売上伝票を見返して全身が怖張る。本来の注文の11倍もの誤受注をしていたー。躍進中の子役とその祖母、凄惨な運命を作品に刻む画家、姉の逮捕に混乱する主婦、祖母の納骨のために寒村を訪れた青年。人の心に潜む闇を巧緻なミステリーに昇華させた5編。 ・感想 些細なことから歯車が狂い、取り返しのつかない悪いほうへとどんどん転がってゆく…という5つの

          (読書感想文)日常の延長線上にある恐怖/芹沢央 著『許されようとは思いません』

          (映画鑑賞記録)殺し一瞬、後処理一生/阪元裕吾監督『グリーンバレット』初日舞台挨拶付き上映

          ・あらすじ プロの殺し屋を目指す山田ふみか、今井美香、神里はるか、東雲唯、鹿目梨沙、沖田響の6人は、京都最強の殺し屋・国岡がインストラクターを務める訓練合宿に参加することに。だが個性炸裂する女子6人は早くも破綻をきたし、国岡でも全くコントロールができない。ストレスがピークに達した時、ある事故が暴発。それは"フォックスハンター"という凶暴かつ最悪な殺し屋集団を合宿所へ向かわせる結果に。果たして国岡は、新人女子6人と共に生き残ることができるのか!? ・感想 デビューから全て

          (映画鑑賞記録)殺し一瞬、後処理一生/阪元裕吾監督『グリーンバレット』初日舞台挨拶付き上映

          (読書感想文)寂しさを食べて生きる/根本宗子 著『今、出来る、精一杯。』

          ・あらすじ 東京都三鷹市のスーパーマーケット「ママズキッチン」で働く人々は皆どこかヘン。しかももっとおかしいのは毎日この店を訪れ「お弁当をタダでくれ」を叫ぶ車椅子に座る女だった。言葉を聞き入れてもらえない少女、自分の意見を捨てた女、完璧に見えるバイトリーダーに、他人の人生を壊してしまった男…。 「黙っていれば、自分の意見を持たなければ、嫌な思いもしませんから」 ーーバックヤードで繰り広げられる言葉の応酬と傷付け合い。めんどうな12人の人間が曝け出した感情の先に希望は灯るのか。

          (読書感想文)寂しさを食べて生きる/根本宗子 著『今、出来る、精一杯。』