いい歳だから楽しみたい
少し白髪が出てきた5歳くらい年下の友人と話していると、気になってしまう。
10年ほど前。
私は白髪が目立たなかった当時だ。
びんの辺りや、表面の髪の毛めくるとそれなりにあった。でも耳にかけずに髪の毛をすとんとおろしていると、ほとんど目立たない。
「かせみちゃんは白髪どうする? そのままにしている人は重ねる年齢を受けいれてるんだって」と言う。
とっさに首をブンブン横に振ってしまった。「私は目立ってきたら、しばらくは染めて隠してたい」。
私は自然に年齢を重ねることを受けいれていないのかなあ。
何度も思い出しては「わかんないなあ」と思う。わかんないなあと思うのに、その言葉をまた思い出してしまう。
***
祖母が生前、足が悪くなって転んでも杖をつきたがらなかった。
義母は早いうちからオシャレな杖をついていて、その話をしてもフンと鼻で笑う。
「杖ついたらおばあさんみたいだからなんだって」祖母に聞いた母が言う。
「……。」
でももうおばあさんだよ。
母に言うと「そうなのよ。おばあちゃん、もう充分おばあさんだよ。危ないから杖使った方がいいよって言うのに」と笑う。
杖についてだけなく、髪も祖母は「黒く染めてないとおばあさんみたいだから」と黒々させていた。
おばあさん「みたい」ってなんだろう。
私は更年期症状が重たくなるにつれて、10年前に白髪が気になった友人よりもっと白髪が多くなった。長い間マニキュアでやり過ごしていたけど、どうしたものかなあと考えていた。
ここしばらくの感染症のせいで美容院に行くのを極力減らしていた私は、マニキュアが落ちても放置していた。
美容院でつけるマニキュアは、1か月もすればだいぶ落ちて、生え際とも区別がある。人と会う時に、その差が気になるとカバーするけど、その場しのぎ。カバーせずにバッタリ別の場所で会って相手が何と思おうが気にならない。
想像していたより平気な自分がいる。
これで良いやとも思うけど、もう少し楽しめないものなのだろうか。
2年ほど前のまだ白髪が目立たないころ、耳の回りの髪の毛に赤を入れた。良い気分転換になったからもっと楽しみたいなあと思っていたけど、どんな色をどんな風に入れようかとか迷っている間に白髪は増えていく。
そしてつい最近。
縦に何本もハイライトが入り、茶色とグレーと元の髪の色がグラデーションになっている写真に惹かれた。
たくさん写真が上がっているところを見ると流行っているようだ。みんながみんなこうなっちゃうのもどうなのかしら。おススメしない美容師さんもおられるみたい。髪の毛がいたむとか伸びてくると根元のギラつきが気になるとか。それなのに高いとか。
ウーン。
迷うけど惹かれる色だなあ。
美容師さんにその写真を見せた。
「おお良いと思います!」
15年ほどお世話になっている方。「お客さんといっしょに年を取っている」と笑う。まだ40過ぎじゃないのよと思うけど、でも私が20代だったら「おじさん」と思うんだろうな。
あちこち細かく髪の毛で束を作り、色をつけると立体感が出る。
「次以降は気になる所に色をつけたり、手入れしたりなので、かわせみさんだけの髪色になっていきますね。白髪が増えていくのも自然に見えてくると思いますよ」
かわせみさんだけの色。
「私だけの」なんて、心がふわふわ浮いてくるではないか。
15年も通っていると客としての私が喜ぶ言い方をご存知なのだろうか。
帰宅後、改めて鏡をのぞきこむ。
近くで見ると耳際や生え際など白髪はそのまま。
でも全体を見ると茶色とグレーが混じったようなハイライトが入っていてなじんでいる。
できれば少しずつグレーを増やしていって、そのうちハイライトもやめるだろう。今のところなのでまた気持ちは変わるかもしれないけど。
そして。事前に調べて知ったハイライトをおススメしない理由についても振り返ってみている。
値段に関しては私のところは、安めのマニキュアとほぼ変えないでいてくれた。
髪の毛へのダメージや伸びてきた部分の見え方については……。
気になったら、その時に考えれば良いや。
年齢を重ねてきているのだから、先々を考えて臆病になってきたことってたくさんあるのだ。人生この先、楽しめる時間が今までの時間より短くなっているんだもの。服とか髪とか少しくらい楽しんだって良いじゃないか。
年齢を受けいれているのか受けいれていないのか、やっぱりよくわからないけど、少なくとも今は白髪を生かしたいみたいだ。おばさんみたいだって良い。おばさんだし。
周りからの見た目とか流行りとかダサいとかより、自分が楽しい方が良い!
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。